不在

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不在 不在
1,620円
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★★★★

 

彩瀬 まるさんの最新長編

主人公は斑木(まだらぎ)アスカのペンネームを持つ漫画家
本当の名は錦野明日香、31歳

仕事も成功し、5歳年下の俳優、冬馬と同棲し、一見なんの不自由もない生活を送っている様に見える。

だが長らく疎遠だった父が亡くなり、遺産として大きな洋館が残され、その屋敷の整理をして行くうちに過去から現在までの様々な出来事に想いが巡り、今の生活が少しづつ崩れて行く様が不穏な空気感の中で描かれている。

父親に対して燻っていた感情が、屋敷の整理と言う行動を通して表面化した時、明日香の内に秘めていた思いが冬馬に対して爆発してしまう。
明日香の言う「愛」とは冬馬にとってはただの執着で忠誠でしかない。
明日香の発する言動からいかに愛情に餓えていたかが感じられヒリヒリする。

淡々と静謐な雰囲気で描かれているが、人と人の関わり方、人間のエゴイズムなどが表現されていて深みがあった。
ざらざらとしているけれど、ラストには気づきもあり読後感は良かった。

 

 

★★★★

 

R-18文学賞大賞・読者賞ダブル受賞作品

「夜を跳びこえて」「かなしい春を埋めに」「空のあの子」
「さよなら苺畑」「黒い鳥飛んだ」
5話収録の連作短編集

各話がリンクし合っていてそれぞれの物語に深みを出している。

抑圧する父親と娘の智佳
過去の出来事がきっかけで男性に対し拒否反応を表す優亜

本作では父と娘、夫と妻、男と女など
その関係性に苦悩と挫折をしながら希望への道を模索し続ける登場人物達の心理描写が丁寧に描かれている。

特に印象深いのは「さよなら苺畑」
外から見ただけでは解りえない人の内に秘めた苦しみと優しさが胸に沁みて来る。

生きて行く上で哀しく苦しい事は限りなく訪れるけれど
その先の一筋の光をかいま見れる様な瑞々しい短編集

 

さしすせその女たち さしすせその女たち
1,512円
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★★★★

 

「さしすせその女たち」「あいうえおかの夫」の2篇収録

仕事と子育ての両立に悩みながらも毎日を懸命に生きる女性の話と言うのは既に出尽くしている感がありますが、家事に育児に慌ただしく動く妻の日常生活がとてもリアルに描かれています。

今は亡き私の父は仕事も子育ても家事も「分担」と言う意識がなく、手が空いている方がやれば良いと言った自然体な人で、しょうがなくと言うよりは、家族の為に無償の愛で進んでそれらをしてくれていた記憶しかない。

なので仕事が忙しいを理由に何もしない主人公の多香実の夫、秀介には自分のツレアイを見ているようで 終始イライラさせられた。
最低限の約束の風呂掃除くらいしなさいよ!と。

作中に登場するポジティブなさしすせそに対してネガティブなさしすせそには笑えました。

我が家的に言えば
さ、さらば
し、しょうもない
す、すっとこどっこいで
せ、センスのない
そ、外面亭主
と言ったところでしょうか(笑)

世の夫達には妻から熟年離婚を言われない為にも、本著で女性の気持ちを知る事で物ではなく日々の行動で表現して欲しいものだ。

余談ですが64ページ6行目
「子どもができたらから」は「子どもができたから」の間違いだと思います。