青柳碧人『むかしむかしあるところに、死体がありました。』
こんなミステリー読んだことありますか?異色の〇〇ミステリー
「むかしむかしあるところに・・・」と始まる、誰もが一度は読んだり聞いたことがある日本の童話。
一寸法師、花咲かじいさん、つるの恩返し、浦島太郎、桃太郎と誰もが知る有名な童話。
そんな童話がミステリーになるなんて、誰が想像したでしょうか?
しかも、短編集なのでミステリー初心者でも気軽に読めて、面白いんです。
ちなみに、ミステリー初心者の私も楽しく読めましたが、作者の思う壺になった気がします。
手のひらでコロコロ転がされた、そんな読後感でした。
この童話ミステリーの見どころは2つ。
1つ目は、ミステリーの種類が盛りだくさん。
第1話目で、童話の特徴をフルに活かしたトリックで、おぉこんな感じで来るのねと思っていたら、裏切られますよ。
2話目は思い込みや視点で一気に崩す。
3話目では読み方のトリックに誰もが絶句するはず。
4話目は密室トリック。
5話目は『そして誰もいなくなった』のような展開で切なさすら感じさせる終わり方。
それぞれ昔話にあったトリックが展開されるので、たくさんのミステリーが盛りだくさんになっています。
見どころ2つ目は、童話の『陰陽』が活かされている。
特に、『陰』の部分が強く提示されていて、読者に何かしら考えさせる部分があるのです。
個人的には、3話目と5話目が印象に残りました。
人の業や欲がよく表されていて、読んでいて悲しくさえなってくる。
主人公はほんとに善の人間なのか。
悪役はほんとに悪なのか。
被害者の部分はないだろうか?加害者の部分はないだろうか?
見方を変えるだけで、ガラッと印象が変わることに驚愕しました。
この構成力のレベルが高いのに、さらっと読める。
読書初心者や、ミステリー初心者必見の一冊です。