湊かなえ『ブロードキャスト』
湊かなえの新しい側面が…!爽やかな青春小説?!

 

 

湊かなえさんといえば、どんなイメージがあるでしょうか?


私はやはり「イヤミスの女王」というイメージが強く、


・心にズーンと圧し掛かるような重苦しい
・見て見ぬふりをしていたものを突きつけられた不快感


を感じるような小説を書く方をという印象でした。


けれども、この『ブロードキャスト』を読んで、そんな今までの印象はなんだったの?と疑うくらいの衝撃を受けました。

 


たしかに、他の青春小説と比べ、部活に対するモチベーションの違い、負けることへの逃げ道を作る、風の噂を真実と思い決めつけて勝手に苦しむという学生時代ならではのあるあるを容赦なく書いて、ぶった斬る部分があります。


放送部での3年生vs2年生は、正直いたたまれなくなりました。


ここら辺を、誤魔化さずに書くのは湊かなえさんならではと感じました。


でも、私が特に印象に残ったのは
「学生時代という人生の一片を舞台とした作品で、学生時代の今を大事にすることはもちろん価値ある選択だけど、これから続く人生を鑑みて未来を見越した選択をすることも価値があるんだよ」
ということです。


これは、圭祐が中3で最後の大会を迎えた時、戦友である山岸君が選抜落ちした話です。


圭祐や山岸君は、当時納得できず、圭祐は高校になってもモヤモヤしていた部分であったんですが、物語の後半にある事実を知ります。


それは、大人たちが山岸君の長い未来を考えて大会に出さない選択をしたこと。


中3の時の山岸君なら無理して出るであろうから、あえて大人が「山岸君の未来」を選んだ。


高校生になった山岸君や圭祐がその事実を知った時、高校生になった今はそれに後悔はなく、感謝しているということ。


でも、中3の時だったら納得していなかったと思うという言葉を聞いて、『今」と「未来」どちらを選ぶかって難しいよなと思いました。


圭祐自身もこの事実を知った後、ある選択をします。


学生時代は常に選択と失敗、選択と成功を繰り返していく時だったんだろうなと思い返してみると、思います。


選択をして、それが正解になる様に必死に努力していく、そんな一瞬一瞬が青春なのだろうととても爽やかな気持ちになりました。