最近テレビや新聞でよく見る「狂犬病」。どんな病気かご存知ですか?


狂犬病は、狂犬病ウイルスによる感染症で、すべての哺乳類に感染しうるそうです。ですから犬だけでなく、他の動物から感染することもあります。感染した動物に咬まれると、唾液とともにウイルスが伝染します。


咬傷から侵入した狂犬病ウイルスは、神経を通って脳に到達し発病しますが、その感染の速さは日に数ミリから数十ミリと言われています。したがって、頭に近い傷ほど潜伏期間は短く2週間程度ですが、足のように頭から遠い部位をかまれた場合には、数か月以上(症例によっては1年以上)かかって発症することもあります。


前駆期には風邪に似た症状のほか、咬み傷の部位にかゆみ・熱感などがみられます。急性期には不安感、恐水症状(水などを飲み込む時にのどの筋肉が痙攣し、強い痛みを感じるため、水を極端に恐れるようになる症状)、興奮性、麻痺、精神錯乱などの神経症状が現れ、その2日から7日後に昏睡期に至り、呼吸障害によって死亡します。


発病後の有効な治療法は存在しません。発症した場合の死亡率は、限りなく100%に近いようです。(今回の京都の方も、昨日亡くなられました。)

ワクチン接種による予防は可能なため、日本では飼い犬の登録と飼い犬へのワクチン接種が義務化されています。日本での狂犬病の発生は、今回の例の前は1970年(昭和45年)、ネパールで犬に咬まれた後に発症した症例のようです。日本国内で咬まれて発症した症例は、1956年(昭和31年)が最後です。


咬傷を受けたら、まず傷口を石鹸水でよく洗い、消毒液やエタノールでよく消毒することが大事です。狂犬病ウイルスは弱いウイルスなので、これで大半は死滅します。受傷の状況から、狂犬病の発症の恐れがあるようなケース(狂犬病ワクチン接種がはっきりしない犬や、外国から入ってきた動物に咬まれた場合など)は、ワクチン接種を開始します。これは潜伏期間内に必要回数の接種を受けなければならず、すぐに病院を受診する必要があります。


いずれにして大事なことは、動物に咬まれた時には、可能なら直ちに洗浄し、できるだけ早く病院にかかることでしょう。


世界中で日本以外に狂犬病が発生していない国・地域は非常に少なく(イギリス、台湾、オーストラリアなど、ほとんどが島国)、海外から感染した動物が(正規の手続きを経ずに)ペットとして持ち込まれる可能性は常にあるようですから、注意が必要です。


 流行地域はアジア、南米、アフリカで、発生国への渡航前のワクチン接種(自己負担)、及び発病前(海外で感染の疑いがある動物に咬まれて帰国した際など)の治療として抗ウイルス抗体の投与(こちらは健康保険の適応です)により発症阻止が図られます。海外に長期滞在する場合は予めワクチン接種を行い、海外旅行へ行った際には日本国内と同じ感覚で現地の動物に手を出さないようにすることが重要です。