正式には「上腕骨外上顆炎(じょうわんこつがいじょうかえん)」といいますが、テニス肘、テニスエルボーとも呼ばれます。
上腕骨外上顆の位置を写真に示します。(モデルは当クリニック主任看護師の渡部さん)
私は中学・高校・大学とずーっとテニスをしてきましたが、テニスエルボーとは無縁でした。それだけではなく、周りでテニスエルボーと思われる人を見たこともありませんでした。なぜでしょうか?
実際に患者さんを見ていると、上腕骨外上顆炎の原因はテニス以外のことが多いようで、主婦業(掃除や料理など)もかなり負担になるようです。はっきりした原因が見当たらないこともあります。男女を比較すると女性に多く、30歳を過ぎてからがほとんどです。単なる使いすぎではなく、加齢変化と負担 (使いすぎ)が合わさって起こるようです。
テニスエルボーの原因になる加齢変化とは・・・
腱の変性です。分かりやすく言うと、歳とともに腱がみずみずしくなくなり、弾力性も悪くなり、すべりにくくなる事です。30歳過ぎでそんなになってしまうのか? と思う方もいらっしゃるでしょうが、お肌の張りと同じように、20代の後半には腱の張りがなくなってきます。
肘から手首の間(前腕)にある筋肉は、主に2つのグループに分けられます。
ひとつは「伸筋群」と呼ばれ、指を伸ばす筋と手を手背(手の甲)側に起こす筋です。これらは上腕骨外上顆に付着し、ここに炎症が起こるのがテニスエルボーです。テニス(特にバックハンド)でラケットを振るときに負担がかかります。テニスエルボーでは、上腕骨外上顆を圧迫すると痛みを起こしますし、手首を手の甲側に起こす動作や、指を伸ばす動作に抵抗を加えると、痛みが誘発されます。
ちなみにもうひとつのグループは「屈筋群」といって、指を曲げる筋と手を手のひら側にたおす筋です。これらは上腕骨内上顆に付着しており、ここに炎症を起こすのが「野球肘」の一種の「上腕骨内上顆炎」です。投球動作で強く負担がかかる部分です。
テニスエルボーの疼痛は、きちんと対処すれば、数ヶ月程度で軽減する場合が多いようです。しばらくの間痛みに対する対処を行っていると、気がつけば楽になっている人がほとんどです。
では、その「痛みに対する対処」とは。
まずは安静(痛い動作をできるだけ避けること)。
次にストレッチ。痛みを起こしやすい仕事・作業・スポーツなどをする前・後や入浴時などに、30秒以上かけて原因となっている筋肉を伸ばします。具体的には、写真のように肘を伸ばした状態で、反対の手で手首を手のひら側に曲げてあげます(手関節を掌屈)。手首の手のひら側の部分に親指を置いて支点にすると、力を加えやすくなります。
けっして反動をつけず、筋が張る感じがするあたりで30秒から1分止めておく様にしてください。ただし、患部の炎症が強い時には、ストレッチにより痛みが増強することもあります。そんな時には無理をせず安静を心がけ、できれば整形外科を受診し、治療の相談をした方が良いでしょう。
保温も大事です。冷えないように心がけ、痛みが強い時には温めて血行をよくすると良いでしょう。
保温用のサポーターもある程度効果的ですし、症状が強ければテニスエルボー用のサポーターもあり、人によってはかなり除痛効果があるようです。
このような日頃の工夫をしても痛みがつらい間は、痛みを和らげる方法として、治療用の機械を用いての物療、湿布や塗り薬のような外用薬、痛みを抑える飲み薬、注射などもあります。心配な時には整形外科で相談すると良いでしょう。