カルテに記載する病名は肩関節周囲炎ですが、患者さんに説明するときの名前は五十肩または四十肩です。
五十肩と四十肩の間には、実は全く差はありません。どっちの名前を使うかは、患者さんの年齢をカルテで調べてから。見た目で判断して四十代の方に五十肩というと反感を買う事があるので、注意しています。
この病名は、骨折や脱臼、靭帯や腱の損傷など明らかな異常がないのに、肩の痛みや運動障害を訴える場合につけられます。肩の中の加齢変化に使いすぎなどの外的要因が加わって起こるようです。
前半は炎症が強く痛みの強い時期で、肩だけでなく上腕部(肩よりも少し肘寄り)に痛みを感じる人も多いようです。後半になると痛みは徐々に減ってきますが、関節が硬くこわばり肩関節の運動制限が目立つようになります。最終的には痛みが出るまえの状態に戻ることが多い予後の良い疾患ですが、途中は夜間の痛みと睡眠障害を伴う事も多い、厄介で辛い病気です。痛みは数ヶ月から、人によっては数年間続きます。
痛みが強い間の注意点は、まず患部の保温を心がけること。夏でもエアコンが効いているところで袖のない服(タンクトップやランニング)を着た状態でいると、肩の温度が下がってしまい、痛みが増強するようです。半そでのTシャツに変えるだけでも肩の温度は大分上がるそうですよ。
また、仰向けで寝ていると腕の重みが後ろに向かって(おなか側から背中側へ)かかることが夜間の痛みを増強することが多く、痛いほうの肩から腕の下に枕(折ったバスタオルでも可)を敷いて肩から腕が後ろに下がらないようにすると、夜間の痛みが減少する人もいます。
もうひとつ、肩の痛みが続くためにあまり腕を動かさなくなり、肩を守る筋肉が減ってしまうことは五十肩症状の悪循環のひとつです。無理をして痛い運動をするのは逆効果ですが、強い痛みを生じない範囲での運動は筋力低下を防いでくれます。具体的な運動の方法は時期によって異なりますので、整形外科で実際に相談されたほうがいいでしょう。
中年以降の肩の痛みを訴える人の多くは五十肩ですが、中には腱板損傷や首からの神経痛の場合もあります。特に腕が上がらなくなるなど運動障害や腕から手のしびれや筋力低下を生じた場合には、念のため整形外科を受診してみてください。また、五十肩だったとしても痛みをじっと我慢しておく必要はありません。整形外科で痛みを和らげる治療を受けたり、上手に付き合うコツを教われば、少しは楽に過ごせますよ。
私もちょうど40歳なので、四十肩に気をつけなくては。