新国立競技場の建築が、オリンピックに向けて着々と進んでいるようです。先日6月13日には、組織委員会が新国立競技場建設において国産木材の使用を優先させることを決定した、と報じられました。
 かねてより私は、「循環型社会形成のための木材利用推進議員連盟」の会長として、国産木材の使用を推進しておりましたが、ここでもう一度、国産木材使用のメリットについてご説明しておきたいと思います。
 
 まずよく言われるのは、日本の木材利用の技術力や、木の伝統・文化といった日本らしさをアピールできるという点です。今回の建築は、国を代表する競技場になるわけですから、こうした「日本的な部分」というのは確かに大事な点ではあります。
 ただし、昨今の厳しい財政事情をふまえると、単に「伝統」「日本らしさ」というだけでは、建築費を増やすことに多くの人の同意が得られないかもしれません。

 
 そこで今回は、国産木材を推す他の理由について、ご説明しようと思います。


 まず私が注目しているのは、木材の使用が環境に良い効果を生むという点です。しばしば木材使用により環境破壊が進むと思われがちですが、実は森林環境を保つためには、むしろ適度な伐採と植樹を行い、樹木を適切に整備・管理していく必要があります。国産木材の使用には、海外産木材に押されて適切な森林管理ができていない国内林業を後押しし、日本の森林の整備・保全につなげよう、という目的があるのです。
 また木材の使用には、CO2削減効果もあります。というのも、木材には、二酸化炭素を固定する機能があるからです。たとえば、一施設あたりにスギ1万m3を使用したとすると、約6200tの二酸化炭素を固定できるとも言われております。木材使用はCO2削減につながり、ひいては温暖化抑制に寄与するのです。

 もちろん国産木材の使用を求めるのは、こうした環境的理由だけではありません。地域木材が利用されることにより地域に雇用を生み山村の活性化につながる、という経済的理由もあります。また、高い断熱性や吸湿機能を有する木材を使用することで選手や観光客に快適な空間を提供できる、という建築機能面での理由もあります。
 このように、国産木材の使用にはさまざまなメリットがあります。一方、しばしば懸念される耐久性・耐火性についていえば、近年は木材加工技術の進歩により、木材の耐火性・耐久性は格段に向上しています。近年我が国は、住宅建設等への直交集成板(CLT)の使用を後押ししておりますが、そうした動きも、木材加工技術の発展あってのものです。


 組織委員会は今回、こうした種々の利点と予算とを勘案した上で、国産木材を優先するという決定を下されたのだと思います。もちろん私はその決定に大いに賛同するものです。
 新国立競技場は、世界のスポーツ界にとっては、今後数十年我が国の顔となる競技場です。文化的イメージのみならず、環境面でも機能面でも、未来に誇れる競技場をつくってほしいと思います。