ベルチャ・クァルテットをトッパンホールにて。

 

ベルチャ・クァルテット

コリーナ・ベルチャ(ヴァイオリン)

カン・スヨン(ヴァイオリン)

クシシュトフ・ホジェルスキー(ヴィオラ)

アントワーヌ・レデルラン(チェロ)

 

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第4番 ハ短調 Op.18-4

ブリテン:弦楽四重奏曲第3番 Op.94

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番 変ホ長調 Op.127

(アンコール)

ドビュッシー:弦楽四重奏曲〜アンダンティーノ

 

1994年に英国王立音楽大学にて結成されたベルチャ弦楽四重奏団を5年ぶりに聴く。前回は2019年1月、武蔵野市民文化会館小ホールでベートーヴェンの弦楽四重奏団3曲を聴いたのであった。そのときは、第2ヴァイオリンはカン・スヨンではなくアクセル・シャハーであった。

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12436242953.html

 

今回もブリテンをはさみ、ベートーヴェンが2曲演奏されたのだが、今回私が最も感激したのはブリテンの弦楽四重奏団第3番。この曲、実は今まで知らなかったのだが、ブリテンの最後の作品。アマデウス弦楽四重奏団の委嘱により書かれ、作曲者は初演の2週間前に亡くなったという。第5楽章はヴェネツィアのホテル・ダニエリで書かれ、主部のバス旋律はそこで聴いた教会の鐘の音だそうだ。

私はこの曲を、委嘱者であるアマデウス弦楽四重奏団の演奏で予習したもののなかなか曲が入ってこなかったのだが、ベルチャの実演を聴いてその良さがわかったかもしれない。ブリテンのこの最後の作品、病気を患っていたこともあり、かなり内省的で難解な作品となっていて、これはショスタコーヴィチの後期の弦楽四重奏曲に近い難解さがある。実際、第4楽章のブルレスケはショスタコーヴィチを思わせる諧謔性もある。ベルチャの演奏は、その音色がとても鮮やかで、この内省的な音楽に彩りを与え、生き生きした音楽に仕上げていたと思う。なかでも、創業メンバーである第1ヴァイオリンのコリーナ・ベルチャとヴィオラのクシシュトフ・ホジェルスキーの温かく柔らかい音色は、この四重奏団全体の音色をリードしていて、特に中声部であるヴィオラの存在感が大きい。

そのような音色の特性があるため、1曲目と3曲目のベートーヴェンもかなり柔和な表情で、その語り口はとても穏やかだ。第12番の第2楽章はかなり歌い込んでいてテンポは遅め。個人的にはもう少し速めのテンポが好きではあるが。

アンコールで演奏されたドビュッシー、中声部である第2ヴァイオリンとヴィオラの繊細な音色が素晴らしく、これはぜひ全曲を聴いてみたいところ。こちらもかなりテンポが遅めだった。

そのようなわけで、終演は21時15分を回っていた。

 

総合評価:★★★★☆