尾高忠明指揮日本フィルの定期公演を、サントリーホールにて。曲目は

オネゲル:夏の牧歌

ラヴェル:マ・メール・ロワ

ウォルトン:ベルシャザールの饗宴

(バリトン:三原剛、晋友会合唱団)


なんというセンスのいい選曲だろう!しかし、P席を合唱でつぶしても、客の入りはまあまあ。今日はNHKホールでN響A定期、すみだトリフォニーで新日本フィル定期があったから、客が分散してしまったのだろうか。


ウィリアム・ウォルトン(1902~1983)は多くの名曲を書いているにもかかわらず、演奏される機会が少ないのは残念。戴冠式行進曲「王冠」「宝玉と王の杖」、セル&クリーヴランドのために書かれた「パルティータ」、2つの交響曲、そして本日の「ベルシャザールの饗宴」!

カラヤンの伝記本か何かで読んだのだが、カラヤンは実はウォルトンと親交があって、特にこの「ベルシャザールの饗宴」を高く評価していたそうだ。その割には録音が一切ないのが不思議だが…


実際、この曲は大変な名曲である。私はラトル/バーミンガム市響のCDを持っているが、とにかくこの曲はかっこいいし、演奏効果抜群で、一度は実演を聴きたかったのである。

歌詞は旧約聖書のバビロン崩壊の話で、バビロン王ベルシャザールが繰り広げる酒池肉林の饗宴と、王が殺されてバビロンが二分され、ユダヤ人が歓喜する様を描いている。

今日の演奏、尾高さんの指揮ぶりがとても鮮やかで、緊迫感に満ちた音楽を作っていた。客が少ないのは、本当にもったいない!

合唱は繊細さよりも、人数も多いこともありパワフルな量感に溢れている。左右の客席に配置されたバンダの金管が心地よく響く。この作曲家独特のシンコペーションのリズムがあったり、金管の鋭いタンギングがあったりで、おそらく演奏は困難であろうと思うが、日本フィルのダイナミックな演奏は実に見事。


さて、前半のフランスもの、こちらも日本フィルの弱音の美しさが光る名演だった。オネゲルの「夏の牧歌」を聴くと、本当に夏のヨーロッパの山岳地帯の乾いたさわやかな空気を思い出してしまう。


演奏時間は短く、8時24分には音が鳴り終わる。日本のオケの定期演奏会としてはかなり短いが、…同じ感動なら演奏時間は短いほうがいいかな。それに、ベルシャザールのような演奏頻度が低く、難しい曲をやってくれたのだから何の不満もない。

明日土曜日2時から同じプロで演奏されます。絶対オススメです。