観光地の竹島で棉と織物と観光に関わる仕事をやりながら

たまの休日を過ごす。

ここは天竜川の中流域で標高は500メートルに満たない低山帯だが

山は深く観光地とはとても言えないが

大自然の真っ只中である。

そんな山や谷には無人の村落もある

沢の水音と風の音の中で私は持ち歩く楽器を奏でる

 ♪ うさぎ追いしかの山 ♪

 

私が山に楽器を持って歩くようになったのは

もう50年以上昔のことになる

霧ヶ峰高原の強清水キャンプ場での早朝のこと

隣のテントの青年がテント前にシートを敷き

茶道具をとり出して抹茶をたてた。

それを終えると青年はフルートを奏でた

何も遮る物のない高原にフルートの音が流れた

私は神聖な出来事に感動して聞き入っていた。

トレッキング中に廃村が現れると楽器の音を奏でる

(奏でるというと聞こえはいいが ポロンポロん)

そこに数百年の時代に人は住み命を守り家庭の団欒があった

人間の声がして 歌声もあった 

そんな時代がたった30年で村も山も変わった

それが正しいのかは私にはわからないが

今日も私の楽器は 埴生の宿 の曲となって流れた