これは一つの物語が閃いて、走り書きした記録です。
この【“空”について】
という話を改めて読んでいたら冒頭だけイメージが浮かんだので、消えない内に書き残そうとして書きながら展開していった物語です。
なのでめちゃくちゃ雑ですが、お付き合い頂けたら嬉しいです。
ではこちらを見た上で進んでみてください^ ^
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【5億円の作品。材料費は220円。】
物事を自由に意味づけることができることを知ったたけしは、あることを思いつきました。
「じゃあ、ぼくがこのリングノートの1枚をちぎって、そこにボールペンで○と書いたものは5億円の価値があると信じればそうなるのか。」
そこで、実際にリングノートの1枚をちぎって○と書いた。
「これが5億円か。さて、どうやって買い手を見つけようかな。」
「そうだ。”どんな大金持ちでも絶対に買えない作品”と言って売り出そうか。その言葉に反応するのは大金持ちだけだろう。それ以外の人はただただ馬鹿にするんだろうな。『こんなものが5億円なんて』ってね。」
さらにイマジネーションは広がった。
「次に、何人かが手を挙げる。その中から10時間以内に現金で払える人だけに絞るんだ。そこで2人が残る。その2人と僕で話し合って、どちらの手に渡るか決めよう。」
「その二人はきっとこんな二人だ。一人は”どんな大金持ちでも絶対に買えないモノ”という言葉に無意識のうちにムキになり『自分に変えないものなどこの世の中にない』という強い信念に突き動かされて来た人。」
「もう一人は、ただただ興味本位。『これを書いた人物がどんな人間なのか。これを買ったらどうなってしまうのか。あいつにこれを買った話をしたらどんな顔をするだろう。妻はどんな反応をするだろう。どこに飾ろうかな。もし手に入れたらこれまでの人生の中で最も価値ある買い物か、最も価値のない買い物か、どちらかだろうな。これを買った私は何を感じるのだろう。』と、こんな具合だな。」
この二人とどんな話をしようかな。
そうだ、こんな話はどうだろう。
「実は、どちらにこの作品をお譲りするかはもう決めているんです。お譲りする方は、この作品を手にすることでとても幸せになります。なぜならその方は、自分の幸せとはなんなのかよくご存知だからです。」
そこで二人は顔を見合わせる。
💫
たけしは続けた。
「この作品は5億円です。でも、それを証明することができるのは私とあなた方二人、合わせて3人しかこの世界に居ません。つまり、この作品を5億円で買ったということは他の人は知り得ません。いくらあなた方が主張しても、他の人には一切信じてもらえません。誰に誇ることも、自慢することも、できないのです。」
二人は黙った。
しばらくして、一人が口を開いた。
「誰にも信じてもらえないなら、俺はこの話は降りる。」
もう一人が答えるように言った。
「じゃあ私が買います。」
「・・・。」
たけしは答えた
「では。5億円、受け取りますね。」
たけしは5億円が入った2つのキャリーケースを受け取った。
お金を払った人は、とても幸せそうだ。
話を降りた男が口を開いた。
「なんでそんなに嬉しそうな顔してるんだ。」
「そもそも、誰かにこれが5億円なんて信じてもらう必要なんて私にはないんです。それでも私は喜んでこれを人に見せると思うよ。」
「それが5億円と信じる人なんていないのにか?」
「そう。私の中にだけ、その事実があればいい。私は決めているんですよ。私が選んだことは、それがなんであっても、私を幸せにするということをね。」
「・・・・・。」
こうして3人は別れた。
たけしは、5億円の入ったキャリーケース2つを手に帰路についた。
この5億円をどう使うかはもう決めていた。
でもそれはここでは秘密にしておこう。
あなたなら、どう使う?
おわり
〜後日談〜
それから半年後、所有者の元にひとりの来客があった。
そう、あの時、話を降りた男だ。
どうしてももう一度、あの作品を見たいというのだ。
男は作品の前まで行くと、しばらく立ちすくんでいた。
額装されたその作品を見ながら、震える声で、ぽつりぽつりと話し始めた。
「俺は、、、自分が、すごい男だと、思ってた。・・・・あれから考えさせられたよ。俺はどこに向かっていたのかって。別にこの話を降りたからって損したわけでも、なんでも無いのにな。随分、、、、、これまで勘違いをしていたのかもしれない。」
男は目を見開いたまま、涙をためていた。
「そうですか。」
そう言って、おもむろに立ち上がり、その作品を男に手渡した。
「あげます。」
「・・・。」
「だから、あげますよ。」
ちぎられたリングノートに、ボールペンで、ただ「○」と書かれたその作品を男に手渡した。
男は、堪えきれず、声をかすかに漏らしながら泣いた。
男は「○」というなんの変哲もないその作品に、これまでの人生を肯定されたような、そんな気がした。
“元“所有者は、にこりとしながらその男に言った。
「この時の為に、私が買ったのかもしれませんね。やっぱり、最高の買い物になりました。あなたのおかげですね。」
終わり
※これはフィクションです
読んでくれてありがとうございました😌
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竹嶋大貴