真央「ねえ、まほろ。最近、夜中にエレベーターに乗るのがちょっと怖くてさ……。」
まほろ「おいおい、なんか変な体験でもしたのか?」
真央「うん……。ちょっと聞いてくれる?」
🔹 23時59分のエレベーター
その日、私は残業で遅くなってしまい、会社を出たのは夜の11時半を過ぎたころだった。
オフィスビルはすっかり静まり返り、ビルの明かりもほとんど消えている。
「やっと帰れる……」
そう思いながら、私はエレベーターのボタンを押した。
待つこと数秒、チーン……と控えめな音とともにエレベーターが到着する。
扉が開くと、誰もいない。
「まあ、こんな時間だし当然か……。」
私は何気なく乗り込んで“1階”のボタンを押す。
扉がゆっくりと閉まり、エレベーターは静かに下降を始めた。
──その瞬間、**「ピッ」**という小さな電子音が鳴った。
「……?」
見れば、誰も押していないはずの“6階”のボタンが赤く光っている。
……いや、私、このビルの6階に知り合いなんていないし。
「押し間違えた……わけないよね。」
背筋に冷たいものが走る。
チーン……。
エレベーターは6階に到着し、ゆっくりと扉が開いた。
🔹 誰もいないはずのフロア
開いたエレベーターの扉の向こう、6階のオフィスフロアは真っ暗だった。
何の気配もない。
──なのに、妙に生暖かい風が流れ込んでくる。
私は思わず身を引いたが、その瞬間……。
「……あ……」
かすかに聞こえた声。
誰かいるのか? そう思って目を凝らすが、薄暗い廊下には誰の姿もない。
そのとき、ふと気づいた。
エレベーターの鏡に、私以外の影が映っている。
──黒い髪の、後ろを向いた女性が。
「……降りますか?」
私は思わず、そう呟いた。
すると、その影はゆっくりと振り向き、鏡の中でこちらを見た。
──そこには、顔がなかった。
🔹 終電間際のビルでは……
まほろ「……ふぅん。」
真央「え、リアクション薄っ!? 怖くなかった?」
まほろ「まあ、よくあるパターンの怪異だな。でもさ、その後は?」
真央「……気づいたら、エレベーターは1階に着いてて。もう扉も開いてた。でも、あの鏡の中の女が……本当に……。」
──それ以来、私は深夜のエレベーターには絶対に一人で乗らないことにしている。
まほろ「……まあ、あれだ。エレベーターの“余計なボタン”が勝手に押されたら、乗るのはやめとけ。」
真央「え、それって?」
まほろ「大体、変なものが呼んでるからな……。」
あなたは、深夜のエレベーターに一人で乗ったことがありますか?
もし、降りる予定のない階で扉が開いたら……気をつけて。