


渋谷のユーロスペース1で、「のんちゃんのり弁」を観ました。
ユーロスペースは、渋谷東急本店からちょっと街なかに入ったところ、気をつけないとホテル街や歓楽街に迷い込みます。
すいません。最初に謝っておきますが、この映画、前日まで「のんちゃんののり弁」だと思っていました。
主人公がのんちゃんで、のり弁しか作れないのんちゃんが岸部一徳さんに弟子入りして、おいしいお弁当を作る映画だと思っていました。「タンポポ」みたいな。
スバル座以外でやっている映画館を探そうとして、タイトル名を入れても出てこない。おかしいな、有名じゃないのかなと思っていたら、なぞが解けました。
作家志望といいながら、親元に引きこもって、グータラな生活を送っている夫範朋(岡田義徳)に愛想をつかして、離婚状を置いて、娘のんちゃん(佐々木りお)の手を引いて家を飛び出す、永井小巻(小西真奈美)さんは31歳。
生活には不自由していなかったようですが、後先を考えず飛び出し、実家の母親フミヨ(倍賞美津子)の元に転がります。でも、年金と着付け教室で何とか生活しているフミヨさんにとっては、迷惑な話。だいたいが親の心配をよそに結婚したんじゃないか!
働いて、お金を入れるから、といったものの、資格なし、子供の送り迎えをするから、午前中だけ、などという話では、面接担当のほうが怒り出してしまいます。
のんちゃんが通うことになった幼稚園には、かつての同級生でバツイチの先輩である玉川麗華(山口紗弥加)が先生として働いていましたが、彼女は水商売を薦めます。
実家の下町ですから、小巻さんを知っている人もいろいろ、そんな中に彼女の初恋の相手、川口建夫(村上淳)さんがいました。彼は、写真屋を継ぎ、頑張っているのですがいまだ独身、同居する祖母からは「早くひ孫の顔が見たい」といわれているとか。
バレンタインに間に合わず、右手の手袋しか渡していなかった小巻さんは、建夫さんから左手を待っているといわれ、ちょっと心ときめきますが、まだ離婚しているわけでなく、夫は離婚を承知せず、付きまとう有様。
一度は、水商売を断った小巻さんですが、職がなく貯金が底をついてきては、背に腹はかえられません。
でも、現実の厳しさに挫折し、自棄酒を飲む小巻さん。そんなところへ、付きまといの夫が寄り添おうとしますが、「人の弱みに付け込むな!」と蹴飛ばします。
小巻さんの唯一のとりえは、のりちゃんのために作ってあげる「のり弁」。見た目はただののり弁ですが、ちょっと違う。ちゃんと解説してくれます。
新しい幼稚園で、このお弁当のおかげで、のんちゃん人気者です。サービス精神旺盛な(後先考えず)小巻さんは先生方の分も作ってあげちゃいます。
建夫さんの配達に付き合って、最後にたどり着いた小料理屋「ととや」で、主人戸谷(岸部一徳)さんの出した「サバの味噌煮」に心打たれた小巻さんは、すかさず「弟子入り」したいと言い出します(後先考えず)。「ラーメンガール」を髣髴させます。
ところで、「町で岸部一徳に会うと幸せになる」という有名な話(?!)がありますが、この出会いが小巻さんを変えます。
おいしい「サバの味噌煮」を目指して、小巻さんは研究に励みます(後先考えず)。
おかげで、「サバの味噌煮」漬けになってしまう家族。幼稚園に、バイト仲間に振る舞い感想を聞きます(後先を考えず)。
自信作を持って、「ととや」を訪れた小巻さんは、戸谷さんからアドバイスを聞くと、ますます「弟子入り」を望み、ただ働きでいい!と押し切ります(後先考えず)。
小巻さんのお弁当をもらっていた先生方が「こんなおいしいもの、ただというわけには」と、麗華さんが集めた小銭を持ってきました。受け取った小巻さんは固まってしまいます。そして、「お弁当屋をやる!」と宣言します(後先考えず)。
「ととや」の主人にその決意を語る小巻さん。一生懸命さに心動かされた戸谷さんは、「ととや」を午前中使っていいと言ってくれます。
でも、「好意に甘えられない」とその申し出を断る小巻さん(後先考えず)。
戸谷さんは、「おいしいものにはお金を受け取るものだ」と言い、これまでただ働きしていた分のお金を渡します。ありがとう、と受け取る小巻さん。
建夫さんといい雰囲気になっている小巻さん。間の悪いところに帰ってくる彼の父親(上田耕一)。
建夫さんは、「写真屋を廃業するが、そこで一緒にお弁当屋さんをやらないか」と、言ってくれます。
でも、そんなにうまくはいきません。嵐のような騒動が(後先考えず)・・・。
小巻さんは、幸せになれるのでしょうか・・・。
後先を考えない小巻さんに、もう、笑っちゃう作品。
でも、後先を考えない小巻さんに、切なくなってしまう作品。
どんなことあっても泣かない小巻さんが泣いちゃうと、こっちも泣いちゃう作品。
うれしい作品ですね。