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(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

円城塔さんの文字渦に触発されて

中島敦さんの文字禍を読んだ。

 

読んでみたら

初めてではなくて前にいちど読んでいた

 

掌編。

 

円城塔さんの文字渦は長編あるいは短編の集合で

猛烈に遊びまくっていたが

中島敦さんの文字禍は掌編でありながら

中島敦作品らしく気持ちのいいリズミカルな展開で

こちらも負けじと遊びまくっていた。

 

文字の精霊。

 

文字の魂。

 

人の肉体が魂がなければただの物質であるように

文字を構成する線も魂がなければただの線である。

 

文字の精霊に害されて人の能力は衰える。

 

そしてその害を暴こうとする者には

文字の精霊による復讐が行われる。

 

荒唐無稽ではあるが

文字を愛するがゆえの滑稽譚として

すごく微笑ましくおもしろおかしく読ませてもらえる作品だった。

 

円城塔さんがインスパイアされる気持ちもわかる。

 

中島敦作品の疾走感にもひさしぶりに触れられて爽快!

 

 

 

 

--文字禍--

中島敦

中島敦さんの文字禍は

禍々しいの禍

だけど

円城塔さんの文字渦は

うずの渦。

 

そこんところお間違えなく。

 

中島敦さんは

山月記とか名人伝とか

好きな作家なんだけど

文字禍

はまだ読んだことがない。

 

掌編なのであとで読んでみよう。

 

この

文字渦

禍々しくもあり渦でもある。

 

おもしろくておもしろくて仕方がなかった

と言えたらかっこいいだろうなとは思うけど

きっとおもしろいんだろうしその気配が充満している

と感じるところまではいけても

そこはやはり円城塔さんの作品なので

実に難解。

 

文字をめぐる物語。

 

奇想天外。

 

始皇帝の頃の中国から

在原業平の頃の日本から

生命の原初の頃から

現代そして超未来まで

縦横無尽に紡がれる。

 

全体に張り巡らされている仕掛けを掌握できたら

めちゃくちゃ楽しいだろうな。

 

いったい円城塔さんの頭のなかはどういうつくりになっているんだろう。

 

12の短編なのか1つの作品なのかも判じがたい。

 

目次の1つ目が文字渦となっているけど

全体をまとめて文字渦と題してもまさにそのとおりだと思う。

 

都市の中にミニチュアの巨大な都市をつくる使命を帯びた俑。

 

テキストファイルの中を冒険する「緑字」。

 

文字と文字を闘わせる「闘字」。

筆の軌道までを文字とし

さらには世界で起きるすべてのことを運筆と捉え

その運筆の軌道を文字とみなす。

すごい発想。

 

境部さんのところはすごく不思議で魅力的。

この作品を実写化することは不可能だろうけど

もしされるならぜひとも境部さんは満島ひかりさんでお願いしたい。

 

「誤字」のところはもう作者がおもしろがって意地になって悪戯をしているみたいだった。

PCで出力される「しんにょう」が

「辻」とか二点しんにょうになっている謎(これも二点しんにょう)の

一端を垣間見たような気もするけど

これも作者の創作かもしれませんので鵜呑みにはできません。

それから「ルビ」の暴走。

もはや「ルビ」か「本文」かわからない。

どうでもいいけどこういう場合の原稿料はどうやって算定するのだろう?

 

「天書」の文字パズル。

それからインベーダーゲームもすごかった。

 

「金字」のアミダ・ドライブはわかるような気もするけど

もう吹っ飛んでいた。

 

円城塔さんの作品の真のファンのひとからは叱られそうだけど

とにかく最後まで読んだことに満足。

 

 

 

 

--文字渦--

円城塔

地球にちりばめられて

の続きになります。

 

今作の主な舞台はデンマークのコペンハーゲン。

 

地球にちりばめられて

の登場人物たちがコペンハーゲンを目指し

そこで不思議なやりとりが交わされる。

 

まずムンンが語る。

 

ぼくはこのムンンがとても気に入った。

 

思考やことばがとても詩的。

 

やさしさ。

 

同僚のヴィタとのやりとりも愛らしくておもしろい。

 

やることが多くて忙しいと思いこんで生活していると

ついついテンプレートみたいな型にはめ込まれてしまうけど

ほんとうはこんなふうにゆっくりとコミュニケーションを楽しみたいのかも

って思えるくらいこのムンンが語っている章は好きだった。

 

SUSANOOはなぜかムンンにツクヨミって呼びかけるけど

ムンンっていうのはムーンに近い発音なのかな。

 

医師のベルマーはいけ好かないことばかり言って苦手なタイプだけど

こういうひとっている。

 

そんなベルマーが語っているから

もしかしたらいけ好かないこんなタイプのひとも

こんなことを考えているのかもな

って思うと憎めない。

 

ナヌークはいつも何かから逃げている。

 

ヒッチハイクの旅行って怖そうだな。

 

ここでナヌークが運ばされるあるものがあんなことになるとは。

 

ノラはなんだかまじめすぎて可哀想だと思えてしまうけど

アカッシュとの関係がなんとなくいい方向に導いてくれるようで良かった。

 

オートバイに乗る前と乗った後のノラの変化ぶりといったら。

 

アカッシュはニュートラルに思えるけど

そこはやっぱりアカッシュなりにいろいろと思うところがある。

 

クヌートへの思いとノラへの思いやり。

 

インガって新しい登場人物だと思いながら読んでいたけど

やっぱり彼女にも苦悩があった。

 

簡単にはいかないね。

 

終盤の

クヌート

Hiruko

Susanoo

ムンン

が語るところは

そこに至るまでも含めて

ていねいに個人の視点をリレーして積み重ねていった末に

三段飛ばしで階段を駆け上がっていくような異次元の展開で

この部分の好みはわかれるかもしれないけどぼくは好き。

 

そしてこのことばをめぐる旅はあらたな舞台へ。

 

技巧を凝らした構成と描写に

これはすごいと唸らせられ

しかもわくわくしながら夢中で読めた。

 

多和田葉子さんの書く文章と描く世界に魅了されている。

 

 

 

 

--星に仄めかされて--

多和田葉子