プラハ国立劇場の『アイーダ』(浦澄彬の批評アーカイブ14) | 作家・土居豊の批評 その他の文章

プラハ国立劇場の『アイーダ』(浦澄彬の批評アーカイブ14)

オペラの夜  (2001.11.4)
神戸でオペラ「アイーダ」を観た。プラハ国立歌劇場の公演である。
ここの歌劇場は、昔、ベートーベンの
第9シンフォニーを歌いに行った懐かしい場所だ。
今回の公演メンバーをみると、数年でずいぶん人が入れ
替わっている。チェコも民主化されて以来、激しい国際競争にさらされているから、伝統のオペラも様変わり
するのは時代の流れというものであろう。
 
日本でオペラを楽しめるのは、何といっても東京だろう。バブルの頃のような派手さはないとはいえ、それ
でも毎年、海外の有名劇場の引っ越し公演が引きもきらず続く。新国立劇場の公演も充実してきている。

関西にいると、やはり東京ほどはオペラを楽しめない。
 
しかし、神戸の国際会館はなかなかいい。公演が終わって、外に出ても、まだ夜はこれから、という気分で
いられる。神戸の持つよそゆきの気分が、オペラの非日常の雰囲気を高めてくれる。
 
大阪のフェスティバルホールもいいのだが、どうしても会場がオペラ向きではない。客席から舞台が遠すぎ
るのである。
オペラ専門に出来たびわ湖ホールは、会場そのものは申し分ないが、いかんせん立地が悪
い。大津では、公演が終わった後は、急いで帰るしかない。
 
ウイーンでオペラを観た後、暮れなずむケルントナー通リをぶらついたことを思い出す。
ロンドンの劇場で
ミュージカルを観た後も、やはりそうだった。
ヨーロッパの街の劇場は、そこへ行くことそのものが娯楽であ
り、終わった後の食事やお酒も含めて、大人の楽しみなのである。
 
日本の劇場が、もっと大人の場所になってほしい。バブルの繁栄を、今から思えば、そういう文化の成熟
に使っておくべきだったのである。あのあだ花のような数年間、我々は何ともったいないお金の使い方をした
ことだろうか。
 
そうはいっても、オペラは楽しい。この上ない贅沢な娯楽である。
願わくば、もっと安い席を作れるように、
スポンサーがついてほしい。立ち見の楽しさを、みんな知らないに違いない。