昼寝のBGM | 作家・土居豊の批評 その他の文章

昼寝のBGM

夕刻、すっかりへたばって、ぐっすり眠った。小一時間ほど寝て、目覚めたが、そのままうつらうつらしていた。
布団が敷いてあるのは二階の西の端で、網戸にしていると外の音が、枕元に集まってくる。
近くの空港から飛び立つジャンボ機の鋭いエンジン音。獣か怪鳥の叫び声に聞こえる。
なぜだか大勢の犬たちの盛んな吠え声が、折り重なるように耳に届く。いったい、どこで犬たちは集まっているのか。コンパでもあるのか。
自動車が一分おきぐらいに家の前の道を走り過ぎる音。車種まで、音で判別できそうなぐらい、様々なエンジンの響きが聞こえる。
子供たちが、大声で何かどなりあっている。
ウォーキングのおばさんのコンビが、げらげら笑って歩いていく。
ヘリコプターか、プロペラ機のローター音。
近くの大きな道路を疾走していく救急車かガスの緊急車両のサイレンの叫喚。
ふと目覚めたまま、音の渦の中心にじっと寝転がっていて、そのままいつしか次の夢が始まっている。
目蓋の向こうにまぶしいのは、西日の射し込みだ。
もうすぐ、夕飯が出来たことを知らせに、息子が階段をのっしのっし上がってくるに違いない。
5月3日