NHK「3.11後を生きる君たちへ~東浩紀 梅原猛に会いにいく」視聴の印象 | 作家・土居豊の批評 その他の文章

NHK「3.11後を生きる君たちへ~東浩紀 梅原猛に会いにいく」視聴の印象

NHK「3.11後を生きる君たちへ~東浩紀 梅原猛に会いにいく」視聴の印象


番組は、東京の郊外生まれの東氏が、京都在住の梅原氏の感覚について、やっぱり違うんだろうなあ、と印象をもらしつつ哲学の道をあるくところが前ふりとして映される。
関西の生まれ育ちの自分にとっては、東山山麓や哲学の道などは、なじんだ風景や環境なのに、やはり東京の人には新鮮にうつるのか、と改めて面白く感じた。
さて、次に、対談の概要をまとめてみた。


※以下、放送された対談要旨

↓ここから


梅原氏
「デカルトから発した自然破壊の文明への批判。原発事故の原点には西洋哲学がある。
自然との共生に未来を見出す。草木国土悉皆成仏という仏教の考え方。
具体例として、宮沢賢治の世界は、木がものを言う。童話「いちょうの実」
君が代にも、「ちいさな石よ、こけのむすまで長生きしてほしい」という、石も生きている、という感覚がある。
草木国土悉皆成仏のこめられた歌。」


東氏
「いまの若者の感覚は、無生物への愛、キャラ愛があり、ロボット産業などにも、草木国土悉皆成仏が生きている。
ものに魂が宿る感覚は、日本文化に生き続けている。」


梅原氏
「永劫回帰の考え方(注→しかし梅原氏のそれはニーチェ的ではなく、きわめて佛教的、アミニズム的である。)を学ぶ。イヨマンテの例や、輪廻転生の例。
自然への畏敬が必要。」


東氏
「現代社会は実存主義的、個人主義。それに対して、思想の力点を個人の実存ではなく世代のつながりに移そうという梅原思想は強いメッセージだ。」


梅原氏
「エジプトの太陽神信仰、自然崇拝に、農業国としての共通点、佛教との共通点を見出す。そのエジプト文明の思想は、ギリシャ文明で破壊された。」


東氏
「今回の震災や津波のように、怒る自然との共生とは? 怒る自然をコントロールしようという西洋思想に対しては?」


梅原氏
「神道は、自然に捧げものをすることで、恐ろしい自然を鎮める。自然の恐ろしさと、恵み、という両面を忘れてはいけない。
いつも覚悟する、という生き方。
ハイデッガーなど、西洋哲学は人間中心主義から抜け出せない。
具体例として、世阿弥「白楽天」をみるとよくわかる。白楽天が日本人に漢詩のすばらしさを語ると、住吉明神は日本の和歌について、人間だけでなく自然も歌うすばらしさを語る。」


東氏
「いま、日本人のはたすべき役割とは?」


梅原氏
「日本人が科学文明から受けたマイナスが、原爆と福島。西洋文明のマイナス面を受けた側として教訓を語ること。東洋の文明を取り入れたら ?と提案していくこと。」



↑ここまで


この対談は、かなりカットされていたようで、かなり要点をはずしているのかもしれない。
しかしある場面で、力強く語る梅原氏の前のテーブルを、虫がとことこと歩いていくが、氏は全く気にせず語り続ける、というシーンがあった。
たまたま撮影されただけで、意図された場面ではない。だが、まさに、ここに、梅原氏の自然との共生という思想が、企まずして体現されていると感じた。

※参考
3.11後を生きる君たちへ~東浩紀 梅原猛に会いにいく
http://nhkworldpremium.com/program/detail.aspx?d=20120328030000&ssl=false&c=26