10月24日(金)19時開演 NHKホール
10月25日(土)14時開演 NHKホール
第2047回 定期公演Cプログラム1日目、2日目
ブラームス/ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 op.83
ブラームス/交響曲第3番ヘ長調op.90
ピアノ:レイフ・オヴェ・アンスネス
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット(カヴァー:下野竜也)
演奏:NHK交響楽団
<アンコール>2日とも
ショパン/24の前奏曲_第8番嬰ヘ短調op.28-8
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近年10月は「ブロムシュテットさんの月」として僕のカレンダーは定着しています。大体この時期に翌年度のNHK交響楽団の定期公演のプログラムが発表され、昨年もども公演に行こうかと考えた結果、メンデルスゾーンの賛歌とブラームスのコンサートを組み合わせて行こうと考えました。
これにウィーン国立歌劇場の来日公演が加わり、メンデルスゾーンをあきらめ、「ばらの騎士」とブラームスに2回行くことにしました。
ブロムシュテットさんは、昨年もブラームスの4番を演奏してくれましたが、案外N響とブラームスを演奏しているわけではありません。得意にされているのですが、レアものです。
毎回日本においでいただくことを懇願していますが、マエストロも「N響ならびに日本の観客が大好きだ」とおしゃってくれているのでとてもうれしいです。楽団員の皆さん(事務局も含め)も本当にマエストロを大事にしていただいているおかげで
演奏会が成立しているのだと思います。関係者の皆様には大変に感謝申し上げます。ありがとうございます。
今、ブロムシュテットさんが指揮されているオーケストラは限定されています。ベルリン・フィルやバイエルン放送soなどで、それらに並んで東洋の果てのN響にわざわざ指揮しにおいでいただくことは感謝しかありません。
この2日間ですが、再び本当に素晴らしい体験でした。ブラームスの3番を2回も実演で聴かせていただきました。
今回の演奏会はブラームスのピアノ協奏曲第2番と交響曲第3番ですが、ピアノ協奏曲が大曲の方の2番だったというのも驚きでした。ピアニストはアンスネスさんがつとめられました。2011年にラフマニノフのピアノ協奏曲を演奏した時もブロムシュテットさんが指揮されており、海外でも競演されているのかもしれませんが、マエストロの関係性は高いのでしょうね。
ブロムシュテットさんは昨年まではコンサートマスターの手を引かれて舞台中央までこられていましたが、今年は手押し型補助車を使用され出てこられました。
体がまるまっていて痛々しいですが、眼光はきちんとされており気迫にみなぎっていました。
1曲目のピアノ協奏曲はピアノも厳格でしたが、オーケストラも正確な音出しをしていました。冒頭のホルンとピアノのつながりに背筋がぞくぞくしました。2日ともホルンの冒頭が全く委縮せず、朗々と流してくれたおかげで曲全体の構造が厳格に進んでくれました。
アンスネスさんのピアノは遊びがなく、オーケストラと一体化して演奏されていました。ピアノ協奏曲ではなく、交響曲のピアノ部分を司どっていました。それは独自性がないというよりも、指揮者に寄り添い、不明確な音楽にしないタッチでした。
ブラームスのピアノ協奏曲は構造が大きいため、曲自体がそのようにできているのではないかとも思います。
カラヤンの録音がなどはまさにその典型で、ピアニストが個性を出しすぎないことで音楽は有機的につながっていくことがあります。
聴衆の一部にはそれを否定的に考える方もいらっしゃるかもしれませんが、僕は大河のようなブラームスのコンチェルトが大好きです。
それは第2楽章に意図が関係していると思います。オーボエのソロがありますが、ブラームス以外の作曲家であれば、たぶん同じ旋律をピアノが奏でるのですが、この旋律をピアノが使用することはありません。最後もオーボエが復唱します。ブラームスの旋律は楽器の特性に合わせて旋律を作っていると僕は思っていて、「餅屋は餅屋」として音楽づくりをしていると思います。
最後まで引き締まった、しかし硬質過ぎない中庸な美しい演奏でした。
アンコールはショパンでした。ブラームスではなかったです。
最後はブラームスの第3番です。とても難しい曲ですよね。第4楽章はブラームスの中でも屈指の名旋律ですが、今回は屈指の名演を展開していました。マエストロは1曲目は譜面を広げ、丁寧に譜面を見ながら指揮をされていましたが、この交響曲では譜面台に青いスコアを置きながら、全く開かず演奏を続けました。
さらにその指揮ぶりで感心させられたのは始終手が肩よりも上で指揮を続けられていたことです。曲に没頭し、さらに埋没せず、若々しい演奏をされていました。その指揮ぶりに曖昧さはなく、また指揮の遅れもなく曲は全く淀みがなく流れました。楽章間の休みもなく、演奏中満席の会場から咳すら与えられませんでした。聴衆もマエストロに追随し、音楽を追っかけていたのだと思います。演奏していない演奏者は常に目をこらし、マエストロの動きを追っているのがわかりました。
これほど集中力のある会場を僕は経験したことがありません。それは2日とも続いていました。
2日目はともかく、放送される初日の最後にフライングブラボーがあったら嫌だなと思っていましたが、普段クズ客が多いNHKホールも今回は節度ある行動をとってくれました。それもとてもうれしかったです。コンサートマスターは川崎洋介さんが対応されていましたが第4楽章はずっと中腰で演奏されていました。コンサート前もみずからホールに姿を現し、御自分の音をチェックされていましたが、コンマスの心意気がよく伝わりました。
これほどの演奏会はなかなか体験できないでしょうね。僕も近年ここまで感じたのはそれこそ昨年、ブラームスの4番で経験して以来です。来年ももし、来日されれば同じ経験になるのでしょうね。
特筆されることがもう一つ。カーテンコールです。超満員だったのですが、演奏会後90%の聴衆が居残り、マエストロ登場の拍手を行っていたことです。さらにそのカーテンコールは2日とも2回にわたって行われました。テレビで放映されるでしょうけど、現場の凄さは決して映像ではわからないでしょうね。
N響の歴史の中にこの日の観客と演奏者は居合わすことができた(予想はできましたが)のでしょうね。「ブロムシュテットさんのあの演奏会にいました」と将来言える演奏会だったと思います。再度オーケストラの皆さんにはお礼を申し上げたいです。
今回の演奏をしていただき誠にありがとうございました。このような演奏は何度も聞けるものではないです。
特にホルン首席の今井さんは本当に巧みでした。ありがとうございました。
