2025年4月26日(土)18時開演 NHKホール

 

■ 第2036回定期Cプログラム<1日目> ■

マーラー/交響曲第3番ニ短調

 

指揮:ファビオ・ルイージ

メゾソプラノ:オレシア・ペトロヴァ

女性合唱:東京オペラシンガーズ

児童合唱:NHK東京児童合唱団

演奏:NHK交響楽団

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 ルイージとNHK交響楽団によるマーラー第2段です。一昨年の第8番に第3番と大曲が続きます。

 ルイージは好物を先に食べる人なのでしょうね。指揮者は早く評価してもらうために確かに早めに大曲をやるのかもしれません。低評価だと企画が挫折する可能性があり、勝負できるときに勝負するというのが常套手段なのでしょうか。

 日本フィルトマーラーを演奏を始めたウォンは第5番→第3番→第9番→第2番→第5番(2回目)→第6番と続けています。

 ルイージについては、既にルイージ・ファンが多くいるので、何をやっても肯定的なのでしょうね。

 

 今回のマーラーは特別で、この後5月上旬にBプロで交響曲第4番を演奏し、それをもってオランダのマーラー音楽祭を皮切にドイツ、オーストリア、チェコで演奏します。日本のオーケストラがヨーロッパの名門オーケストラに対抗してどれだけの評価を得られるかということにもなります。第3番は第7番と演奏の難易度(実演でのミスが多い比率)が高い楽曲です。

 第1楽章で頑張りすぎると、大体第3楽章、第6楽章でへたって大事なところでトランペット、ホルンが惨めな音を出してしまいます。

 

 この日の演奏は、冒頭から息の長い音を出します。表現力があり、ホルンの音のすばらしさが目立ちました。

 コンマスは二人体制でメインには長原さんが座り隣に郷古王子が座っていました。

 木管はいつもながら鉄板ですね。N響の木管の音はいつ聴いてもほれぼれします。音の連なりがとても自然で各個人の音も表現力があります。マーラーの3番は音を押し切る場面が多いのですが、そのはざまにパート同士の美しいつながりがいたるところにあり、自然に音を出すのがとても困難な曲です。当然のように奏でているこのオーケストラはやはり素晴らしいです。

 弦も卓越しています。

 絹のような音ではなく、厚味のあるドイツ的な重心の低さが素地になり深みのある音を出します。この日もチェロの音の集団にビオラ、コントラバスが明確な意志を示しながら音をうねらせます。

 

 第1楽章中後半に展開される行進曲の途中「チャン・チャン・チャ・チャ・チャン」(楽譜が手元にないので箇所はわかりません)とギア・アップするあの部分。鳥肌が立ちました。マーラー楽曲の中でもその後展開されるメイン部分を提供してくれるためのスイッチとして聴衆に提供する5音です。

 トランペットの表現力も音の変化に呼応した緩急が絶妙でした。

 楽章の最終部分は追い込むのではなく、余裕を持った終わり方でした。ルイージは煽るようなやり方はしていませんでした。

 米国で同曲を聴いた時、第1楽章終了時に拍手が起こっていましたね。欧州でもあるみたいですけど。

 第1楽章で一番感動したのは、、個人的にはタンバリン奏者の演奏姿のかっこよさです。演奏前から何度も音出しを丁寧に練習していましたが、あんなに美しい姿のたたき方を見たのは初めてです。テクニックがずば抜けていました。

 

 第2楽章前に合唱(女性、少年・少女)が入ります。いそいそと入る姿が整然として素晴らしかったです。

 この楽章も木管が素晴らしかったです。このまま一気に押し切ってくれることを心の底から願っていました。

 

 第3楽章でポストホルン。やはり難しいですね。この楽章から金管が崩れ落ちていきました。はじめはしょうがないでしょと思っていたのですが、だんだん「マジですか」になっていきます。

 

 第4楽章は独唱が入ります。オレシア・ペトロヴァが歌います。オランダにも同行予定です。第8番でも歌っていましたが、ルイージのお気に入りなんですね。第8番ではアルトのパートを歌ってらっしゃいました。

 微妙でしたね。声量がありすぎ、冒頭から大きい歌なんです。もっと静かに深みがあっても良かったのではないでしょうか。NHKホールの容量の大きさからそうしたのかもしれませんが、音響はいまいちですが、案外音は飛ぶんですよね、このホール。

 個人的にはこの人の歌を尊重しますが、すべては肯定できませんでした。

 悲しいのはトランペットです。もう悲しいとしかいいようがないです。あんなに表現力があってとても上手なのに。日曜日演奏はたぶん、たぶん修正するのでしょうけど、この日は大事なところで音がはずれました。それ以上でも以下でもありません。

 

 第5楽章ってかわいらしい始まりなのですが、中間部はとても結構かっこいいですよね。音の流れが元気で、合唱は美しく、エクセレントでした。

 なお、個人的には第3楽章、第4楽章、第5楽章、第6楽章は切れ目なく演奏してもらいたいと思っています。

 第3楽章終わったところで、あの静かな音がつながって出るのがすごく好きです。

 第4楽章が終わったところで、この日観客から「ゴホゴホ」咳が入ったのも興ざめでした。ルイージはほんの少しですが、合間を入れました。

 そして第5楽章終わりの第6楽章前まで・・・・

 ここはさすがにそのまま音を入れてもらいたかったです。

 

 最終第6楽章は、朗々と流れますが、案外あっさり流しました。ルイージの解釈は第2番もそうなのですが、冒頭は起伏を抑え、内向的、また、室内楽的音を志向します。思いをぶちまけるのではなく、思いを内在させ少しずつ表に向けていきます。

 曲そのものはもともと透明感がありますが、線をあまり太くせずにいました。

 しかし、後半はしっとりと弦をうねります。

 トランペットに加え、ホルンまでやっちゃいます。マジですか・・・・ 

 ダムが決壊したように連鎖的に起きていきました。

 こういうことはあるにはあるのですけどね。

 かつて演奏したパーヴォの時(サントリーホール)はこうじゃなかったと記憶しています。

 

 極端に音のテンポを落とさず、あくまでも自然体の音を展開しました。

 第3番の模範がどの指揮者かはわかりませんが、テンシュテットやバーンスタインはとことんまでテンポを落としました。

 現在は、どうかわかりませんが、かつてはテンシュテット盤が最も演奏時間が長かった(106分:1時間46分)です。ロンドン・フィルのものが正規のスタジオ録音ですが、いろんなライブ盤も混在していましたが、どれもゆったりした演奏です。

 僕がこの曲を聴き続けたのは1980年代までのバイブルであるバーンスタイン=NYPの旧盤でした。中高生の時、京都にいましたが、実演で聴けるチャンスはゼロでした。

 

 この日の演奏は、有機的な音の連なりは最高でしたが、この日は金管が乾杯、いや完敗でした。トロンボーンは頑張り続けていましたが・・・・

 これでは、ヨーロッパへ行くのは心配ではないでしょうか。1000本ノック(納得する、あるいは絶対的に演奏確信ができるまで吹きなおす)が必要です。最高の技術はお持ちなのですから、御自分を信じとことんまで精神力を練り上げていただきたいです。

 

 一昨年(10月)演奏した日本フィルの金管は2日間とももっとアグッレシブルな演奏にもかかわらず「完璧!!!!」でした。

 エールを送ります。N響、金管がんばれ。今日の演奏はシッカリやってください。

 

 

 なお、演奏時間は18:07に始まり19:45に終わりました。全体で98分ですが、楽章間があったのでおおよそ96分程度の演奏だったでしょう。録音マイクとテレビカメラはありましたが、放映はヨーロッパのものを使用するようですね。

 

 

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