2025年2月2日(日)14時開演 新国立劇場
ツェムリンスキー/歌劇「フィレンツェの悲劇」
プッチーニ/歌劇「ジャンニ・スキッキ」
指 揮:沼尻竜典
演 奏:東京交響楽団
演 出:粟國 淳
美 術:横田あつみ
<フィレンツェの悲劇>
イード・バルディ:デヴィッド・ポメロイ
シモーネ:トーマス・ヨハネス・マイヤー
ビアンカ:ナンシー・ヴァイスバッハ
<ジャンニ・スキッキ>
ジャンニ・スキッキ:ピエトロ・スパニョーリ
ラウレッタ:砂田愛梨
ツィータ:与田朝子
リヌッチョ:村上公太
ゲラルド:髙畠伸吾(2・4)、青地英幸
ネッラ:角南有紀(2・4)、針生美智子
ゲラルディーノ:網永悠里
ベット・ディ・シーニャ:志村文彦
シモーネ:河野鉄平
マルコ:小林啓倫(2・4)、吉川健一
チェスカ:中島郁子
スピネッロッチョ先生:畠山 茂
アマンティオ・ディ・ニコーラオ:清水宏樹
ピネッリーノ:大久保惇史
グッチョ:水野 優
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今回のオペラのつながりはともにフィレンツェつながりです。通常「ジャンニ・スキッキ」は「外套」と「修道女アンジェリカ」で組まれるのですが、新国立劇場はこの2つのオペラで組みます。
前回は2019年に実演しました。5年ぶりの再演です。前回も沼尻さんが指揮をされていました。
まずはツェムリンスキー「フィレンツェの悲劇」
ツェムリンスキーの音楽はあまり演奏されませんが、この作曲家の生暖かい響きがとても好きです。1923年に作曲された抒情交響曲がとても好きで、マゼールがベルリン・フィルで録音したものを今も愛聴しています。ギーレン盤もあるのですが、ウィーン放送交響楽団の演奏なのか録音なのかわかりませんが音の重なりに若干難点があるように感じます。
沼尻さんも東京交響楽団も客観的なしかし説得力のある音を引き出していました。
60分弱の音楽ですが3人の歌手で歌い切ります。クリムトの絵に出てくるような感覚があります。退廃的でけだるい、そしてその中にドロドロとした愛憎が展開されます。
バルディを演じるデヴィッド・ポメロイからはあまり嫉妬心が感じられなかったです。言葉の展開が突拍子もなく、本来の流れではシモーネとビアンカの関係をもっと疑う節で展開されるはずが、表面的にはまるで無頓着な感じを受けました。
演出に負うところが大きいと思いますが、この演出ではシモーネとビアンカずっと密着する視覚的な要素で進められています。
この物語の結末をにおわせる部分として、バルディが「この日のできごとを将来ビアンカと二人で語りつぐだろう」とシモーネに言明するとこところです。
バルディは血を流しますが、あっという間に逆転し、シモーネを絞殺します。
その後は死体を川にでも流してしまうのでしょうね。
ここでひとつわからないのは、作品内で通貨の単位がクローネなのです。フィレンツェの悲劇とするならリラなのですが、フィンランドの通貨なのです。原作はオスカー・ワイルド(アイルランド人)の戯曲からの物語です。ワイルドというとやはり「幸福な王子」が有名です。この物語をアンデルセンと思っていらっしゃる方が多いのですがワイルドの作品なのです。
「フィレンツェの悲劇」も題材はともかく「大人の童話」という見方はあるかもしれません。心の通じていなかった夫婦の心が通い合うというものです。
いきなり逢引きか始まるのはこの時代にできたホフマン・スタールの「ばらの騎士」同様です。モーツァルトのオペラの陽気な浮気ではなく、不道徳だけでなく退廃的で肉欲的な要素を感じさせるものです。
最後にビアンカの言葉で許されるのですが、これはビアンカの本心なのか命乞いの苦し紛れの言葉なのかはよくわかりません。
「あなたがこんなに強かったなんて」
楽しく音楽を聴くオペラではないです。
そして、プッチーニ「ジャンニ・スキッキ」
プッチーニの三部作の台本はどれもパッとしないものです。そして今回、このオペラと同時に披露される「フィレンチェの悲劇」は三部作の「外套」と似通っています。最後は180度異なる展開ではあるのですが。
ジャンニ・スキッキは普通の舞台でやると吉本新喜劇ばりの物語で、一番の悪(者)に財産を根こそぎもっていかれるという教訓物?の内容です。
「私のお父さん」がなければまるで上演される機会のないオペラです。
今回は歌手陣たちが役者としてもうまく立ち回った楽しい舞台でした。
数年に1回観劇するのは良いものでした。ありがとうございます。
