2024年12月23日(月)19時開演 サントリーホール

バッハ/トッカータとフーガヘ長調BWV 540*

ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調op.125「合唱つき」

オルガン中田恵子*

ソプラノ:ヘンリエッテ・ボンデ・ハンセン

メゾ・ソプラノ:藤村実穂子

テノール:ステュアート・スケルトン

バスバリトン:トマス・トマソン

指揮:ファビオ・ルイージ

演奏:NHK交響楽団

合唱:新国立劇場合唱団

 

 昨年はノットの第九を聴きましたが、今年は悩んだ末ルイージの第九に行くこととしました。

 ノットは次のシーズンで東京交響楽団を去ることとなっています。

それまで音楽監督を行っていたスダーンも嫌いではなかったのですが、とても地味でほとんど派手な曲は取り上げられず、いぶし銀の演奏が続けられていました。

 本来ならルイージもノットも両方聴けば良いのかもしれませんが、11月はかなり家のことを犠牲にしてしまったので、年末ぐらいは世帯主らしい存在であろうと思い1つだけにしました。

但し、折角なのでNHKホールではなく閉塞感がなく、また音飛びにいびつさのないサントリーホールに向かうこととしました。

月~木は仕事を優先し「絶対」にホールに向かわなかったのですが、今回だけは月曜日の演奏会に行きました。

 

 ルイージは一昨年来のN響との関係を開始以来多くの名演を立て続けに残してくれています。

 先のリストのファウスト交響曲も端正ではありましたが、非常に熱量のある音楽を展開してくれました。

 長くルイージの演奏を聴かせてもらっていますが、意外にもベートーヴェンの演奏は初めてではないでしょうか。

さて9番の演奏ですが、第1楽章の始まりとともに感じたのが早いテンポで押し上げる感じです。「ため」がないという感じでアクセントなく音楽が展開していきます。

 音楽はきれいになっているのですが、個人的はもう少し武骨な感じがあっても良いのではないかと思いました。頭に浮かんだのはトスカニーニの演奏です。颯爽とスポーツカーのように無駄のない動きというか迷いのない演奏でした。

以前から僕がよく聴くCDはクリュイタンスがベルリンフィルと録音したものです。カラヤンでもフルトヴェングラーでもアバドでもありません。品格でいえば屈指のものだと思っています。先に記載した武骨さはありません。

 常にこの演奏を尺度に聴いているので演奏会では自分の先入観をニュートラルにして聴きます。

 

 ルイージの音楽ですが、端正でどこまでも美しい演奏です。品があるという言い方ではなく「美しい演奏」です。模範的というのでしょうか。ルイージのバランス感覚を有した演奏です。ルイージは今までにどれぐらいこの9番を演奏したのでしょうかね。音楽のできは素晴らしく、全く不満はないのですが、なぜか満足できない自分がいるのです。音が流れすぎているというのが僕の感覚です。N響は本当にたくさんの優れた指揮者と同曲を取り組んでいるのでどんな色も出せると思うのですが、精神論云々でなくこの9番を聴いて心が動かなかったのです。2024年はルイージの指揮でブルックナーの8番も聴いたし、リストのファウスト交響曲も聴いたのですが、それほどの感動がなかったのです。

 この感覚はジュリーニがウィーン・フィルとの定期公演でブルックナーの交響曲第7番、第8番、第9番を録音した海賊盤があるのですが、それを聴いた時と同じ感覚を覚えました。

トスカニーニに連なるイタリアの指揮者が僕は好きなのですが、たまに波長がまるで合わないタイミングがあります。

 

 今回はまさにそうです。ルイージ、N響ということで、今回はNHKホールでなくサントリーホールで最高のベートーヴェンを期待したのですが多少空回りでした。

 ルイージで感じた2回目の出来事(失望)です。

 1回目はR・シュトラウスの「英雄の生涯」を聴いた時です。ドレスデン国立歌劇場oとの演奏があまりに素晴らしく、N響の演奏会も期待したのですが、まるで感覚が異なって以来です。

 こういう日もあるのかなと帰り際自分を慰めました・・・

 

 トッカータとフーガヘ長調BWV 540が冒頭に演奏されましたが、照明を落としたこともあり、不覚なことにウトウトしてしまいました。BWV540はなかなか聞くことのない楽曲です。バッハではたまにやらかしてしまいます・・・

 

 以上2024年の最終の演奏会でした。

 

 その後はNHKFMでしっかりバイロイト音楽祭を聴かせていただきました。