先週末はポケモンGOでメガガブリアスがレイドに登場し、土日でちょっぴり(10体余り)確保を頑張りました。

 一方、ウィーン・フィルの来日公演が始まり、名古屋を皮切りに大阪、東京公演に移りました。

 今回のウィーン・フィルのアジアツアー(東アジア)は11月1日から台湾で3公演、韓国で2公演、そして日本では7公演が消化されます。11月19日まで12公演ですからなかなかの仕事ぶりですね。

 

 東京公演は満席となっており、さすがウィーン・フィルといった感想です。ウィーン国立歌劇場という伏魔殿に崩れていった指揮者はたくさんいます。

 近くでは、マゼール、小澤征爾、メストもやり込められています。ジョルダンもあっけなく音楽監督の座を降りましたね。結果論ですが、ここでの仕打ちのせいで小澤さんは帯状疱疹に食道がん、メストもがんになったと言ってしまうと怒られるでしょうか。

 ウィーンのきつい仕打ちは有名で、いろんな話を聞いたら嫌な気持ちになります。

 

 メストの退席で今回の公演はソヒエフの代役になりました。たとえ、代役とはいえ、一人で半月も同じオーケストラと公演できることは大変に指揮者冥利に尽きると思います。

 日本の指揮者ではウィーンフィルの数少ない定期どころかウィーン国立歌劇場に招かれる指揮者が一人もいません。一人もです。

 スポーツ界では大谷翔平、バスケット、バレー、サッカーでも日本人選手がその中心部に近づきつつありますが、指揮者の世界では残念ながらさっぱりです。

 日本人でウィーンフィルに最も関わりがある人はヴィオラ奏者ティロ・フェヒナーさんの妻になった中谷美紀さん、元ウィーンフィルのコンサートマスターであるライナー・キュッヒルさんの妻であるキュッヒル真知子さんですね。

 残念ながら悲しい事実です。

 現存する指揮者でウィーン・フィルでタクトを手にする指揮者は全くイメージが付きません。小澤征爾さんは本当に稀有な存在だったのでしょうね。

 ソヒエフ公演後、アダム・フィッシャー、ティーレマン(ニューイヤーも)、フィリップ・ジョーダン、ラハフ・シャニ(現在若干34歳)が指揮し、2月22日にはメストの復帰とさらに米国公演が予定されています。その後もメータ(復帰できるでしょうか)、ベルリン・フィルのシェフであるペトレンコ、ムーティ、ブロムシュテット、ネルソンスと続き*ロレンツォ・ヴィオッティ(9月に東京交響楽団で2つの英雄を指揮;聴きましたよ!!)が6月の公演を任され今シーズンを閉じることとなりそうです。

 ウィーン・フィルを指揮できる指揮者は特別な存在ですね。

<*参考>

9月の演奏会を聴いて_新日本po/NHKso/東京so | めぐみさんが帰ってくるまで頑張らなくちゃ (ameblo.jp)

 

 現在の日本の指揮者はウィーンだけでなく、米国のビッグ5(シカゴ、ボストン、クリーヴランド、ニューヨーク、フィラデルフィア)+α(ロスアンジェルスpo、サンフランシスコso、最近は騒がれませんがセントルイスso等)に手が届きませんし、ドイツもベルリン・フィルどころかバイエルン放送so、ドレスデン国立歌劇場、ベルリン国立歌劇場の影すら踏めません。その他コンセルトヘボウoはもちろんのこと、フランス国立管弦楽団やパリ管弦楽団にも招かれませんね。

 意外にもロンドンのビッグ5オーケストラ(ロンドンso、BBCso、フィルハーモニアo、ロンドンpo、ロイヤルpo)に「へー出てたの?」というのはありますが、音楽構成技術がある方がおいでになるのは確かですが、指揮技術以外の何かが不足しているようです。インテリジェンス、コミュニケーション(言語)、スター性、カリスマ性だけでなく、真の音楽構成技術だと僕は思っています。人種差別?能力があれば克服できますよ。 

 スイス・ロマンド管弦楽団、ウィーン交響楽団、チューリッヒ・トーンハレ管弦樂団あたりまでは指揮できるのですけどね。

 小林研一郎さんがチェコ・フィルを振っていたことは大金星なことです。チェコ・フィルの弦っていいですよねえ。

 小泉和裕さんであれば、音楽性においてはメジャーオーケストラの指揮を今でも十分に通用すると思います。

 世界の中心となるオーケストラへの登場はノーベル賞を獲得するより困難な状況になっています。

 そのことをいつも残念に思いながら、日本のコンサート・ホールに通い詰めています。11月12日の演奏は以下のとおりです。

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11月12日(日) 14:00開演 サントリーホール

R・シュトラウス/交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」op.30
ブラームス/交響曲第1番ハ短調 op.68

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 本当に良いプログラムです。チケット争奪戦を必ず勝ち抜こうという気構えで確保しました。

 ただ、僕の前にメストは現れませんでした。

 しかし、この曲をウィーン・フィルがソヒエフの解釈に沿うなんてこともあり得ないと思いました。

 

 公演は、「ウィーン・フィル節(ぶし)」に満ちていました。

 バイエルン放送交響楽団(指揮:故マリス・ヤンソンス)のベートヴェンを聴いたとき、あまりに普通でビックリしましたが、今回の演奏は度肝を抜かれました。

 この日のコンサートマスターはライナー・ホーネックさんでした。

 海外オーケストラがよくあることですが、日本ではコンマスがオーケストラがそろってから指揮者が出る前に登場することがほとんどですが、この日は他の楽員の先頭を切るようにステージに入り、どっかりと席に座っていました。

 先般10月のマーラー第3番の演奏会で日本フィルのコンマスがオーケストラも合唱団も全て登場し、会場が静まり返ってからこれ見よがしに出てきたときはハッキリ言って引きました(客に気を遣わせるし、時間の無駄!!)。偉いのでしょうけど・・・、「あんた何様ですか??????」という気持ちになりました。日本のオーケストラ界においてルーティンになってますが、こういう権威主義的なやり方はもうやめませんか?会場に挨拶とお辞儀がしたいなら、団員が揃うまで拍手の間、立っていればいいのですよ。

 N響もゲスト・コンサートマスターであった(ある?)ライナー・キュッヒル氏が登場したときは、他の楽員と一緒にステージに上がりましたが、僕はその姿の方が望ましいと思います。

 

 しかし、ホーネックは会場の拍手への応対もちらりと目を配る程度で、一瞥もせず、すくっと立ち上がり、チューニングに入りました。日本のオーケストラは団員全員が観客に一礼してから座りますが、「おれらはウィーン・フィル様御一行だぞ。文句あるか?ゴラァ」感がいっぱいでした。

 失礼しました。

 そしてチューニング。オーボエ奏者を指ささず、いきなりゴラァ氏がスクッと立ち上がり「ラーーーー(A音)」を鳴らします。「俺の『ラ』が絶対の「ラ」」なのですよね。もちろん2曲目の冒頭も同様でした。失礼しました。ウィーンの伏魔殿はきっとこういう人たちで構成されているのでしょうね。

 

 かつて、ライナー・キュッヒルさんが言っていました。

「大変なことに、年末ニューイヤーに来る指揮者にウィーンの音を教えなきゃいけないんですよ・・・・」

2001年の年末のことです。2002年の指揮者はというと・・・・

 

 

小澤征爾さんでした。

 

 ウィンナーワルツの3拍子を指揮者が理解しないとウィーンフィルでワルツを振らせてもらえないようです。しょうがないのでラヴェルの「ラ・ヴァルス」でも指揮しないといけないのでしょうか。

 これだけため口を吐きながら、いまだにストラヴィンスキーの「春の祭典」は苦手曲のようです。

 マゼールに鍛えられ、小澤征爾に指導を受けたようですが。

 

 ウィーン・フィルのコンサートマスターは別次元の人間のようです。

 

 さて、演奏はというと1曲目「ツァラトゥストラはかく語りき」でいきなり早5音めでトランペット内で音が乱れました。その後もチョコチョコやっちゃいました。だから米国のオケよりも技術は・・・・なんですよ。

 しかし・・・・・、しかし、音楽は凄かったです。息が長いフレーズで途切れなく、立体的な!!厚みのある演奏をします。コントラバスはゴリゴリ鳴らします。ホルンは空気をまるで読まないように1音ずつ刻み、通常、日本のオーケストラはブレンドされる音ではなく各音(ホルンならホルンのトップ、セカンドレベル)が独立して聞こえます。それは弦楽器でも同様で、あの独特のザラザラ感(良い意味での)のある音を出していました。

 音圧があるので音に深み(立体感)が生じます。これがウィーン・フィルの音なんだと思い出しました。

 モーツァルトのウィーンフィルの弦の演奏は透明感があり、一点からしか音がしないのでまるで異なります。

 ちなみに同曲は、台湾、韓国だけでなく名古屋、大阪でも演奏していないのでお披露目になります。つまり、ソヒエフの調味料がほとんどない演奏だったのでしょうね。ラッキー!!

 

 僕の愛する「R・シュトラウス」は本当にすごい演奏でした。世界のどのオーケストラもこのような演奏のやり方はしないですよ。

 しかしながら、この音には本当に感激でした。オーケストラがいかに頑固で傲慢であろうと「いいものはいい」と舌を巻くものでした。

 かつてベルリン・フィル(小澤)とドレスデン国立歌劇場o(ルイージ)で「英雄の生涯」を聴いた時も心の底から感動しましたが、それに匹敵するものでした。

 

 そしてブラームス。これは別に書かなくても良いでしょう。ウィーン・フィルのブラ-ムス。ブラームス自身はハンブルグの出身なのでブラームスとウィーン・フィルは赤の他人のはずですが、ブラームスがウィーンフィルの「友人であり崇拝者」と言ったらしいのです。困ったことにウィーンフィルのホームページに書いてあるのですよ。

伝統 - ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (wienerphilharmoniker.at)

 

 ゴラァ氏は二曲ともソロで大活躍でした。必死に弾いているように見えないのに音はとても素晴らしいです。

 日本のオーケストラは素晴らしいとこれまでも書いてきていますが、やはり大きな壁が存在します。そしてこの壁を動かす指揮者でないとウィーン・フィルは振らせてもらえないということをこの日も再認識しました。

 

 さて、最後にソヒエフさんですが、本当に大変でしたね。

 この二曲の解釈についてソヒエフが関与していたかははなはだ疑問です。このオーケストラは何度か指揮しているので、新人ではないですが、この日のプログラムにソヒエフの匂いの痕跡をどれだけ残せたでしょうか。

 いずれ、同曲をN響、あるいは自分の手兵オーケストラの演奏を日本で実演したときに僕は自分自身に答え合わせをしたいと思います。

 N響の演奏の時にはわからなかった(NHKホールは観客席から遠いので)ですが、結構「うなる人」なのですね。

 この日の演奏会は録音マイク(パートマイクもしっかりあり)がぶら下がったり、固定されていたのでどこかで放送されるのかもしれません(CD録音ではないと思います)。

 かなり顔の表情を変えて指揮していました。

 

 演奏会後、ソヒエフはしきりにゴラァ氏を持ち上げていました。さらにオーケストラへの気遣いも大変でした。「雇われママがオーナーにこびへつらうがごとく」、各奏者を最大限持ち上げていました。

 そしてアンコール曲。

 J・シュトラウスⅡ世/ワルツ「春の声」、「トリッチ・トラッチ・ポルカ」の2曲。

 2曲目開始時にはゴラァ氏に「お伺い」を立てていました。

 

 

 何度もオーケストラを持ち上げたのですが、オーケストラはソヒエフを全く持ち上げてくれませんでした。

 ソヒエフもソヒエフで指揮台でお辞儀することなく、いつもオーケストラと同じ舞台上で聴衆に頭を下げていました。

 「『俺たち(ウィーン・フィル様)の音楽』で指揮棒振らせてやったんだ」というものでしょうか。とにかく至る所に横柄さを垣間見れる素敵なオーケストラでした(今回のツアーでウィーン・フィルがソヒエフにドイツ音楽を教えたということでしょうか)。

 日本のオーケストラは皆、心優しく指揮者を一人で立たせてくれますよね。

 

 

 今週、終わってまたソヒエフを招くことになるのでしょうか。

 「人間社会の一端」という根源的なものを見させてもらいました。

 

 来年もウィーンフィルを聴きに行きます(多分)。今年ベルリン・フィルが来日公演で演奏するブラームスの4番や「英雄の生涯」をプログラムに入れて欲しいです。