9月はクラシック5公演を目と耳にしました。とても良い公演をたくさん聴くことができました。
9月9日(金)19:00サントリーホール
東京都so_大野和士
ドヴォルジャーク/交響曲第5番
ヤナーチェク/グラゴル・ミサ曲
9月10日(土)14:00トリフォニーホール
新日本po_マルクス・シュテンツ
ベルリオーズ/序曲「ローマの謝肉祭」
ラヴェル/ラ・メール・ロア
ベートーヴェン/交響曲第3番
9月10日(土)18:00NHKホール
NHKso_ファビオ・ルイージ
ヴェルディ「レクイエム」
9月17日(土)14:00NHKホール
NHKso_ファビオ・ルイージ
R・シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」
R・シュトラウス/オーボエ協奏曲
R・シュトラウス/楽劇「ばらの騎士」組曲
9月17日(土)18:00サントリーホール
東京so_アジス・ショハキモフ
ドビュッシー/管弦楽のための映像から「イベリア」
トマジ/トランペット協奏曲
プロコフィエフ/交響曲第5番
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やはり大きかったのはルイージさんがNHK交響楽団の常任指揮者になったことです。
パーヴォさんについても現時点で辞めてもらいたかったとは思っていません。このマエストロは新型コロナ感染症もあり聴きたかった公演がいくつもありました。来年4月の公演決定したアルプス交響曲もまさにそのひとつで、これは是非録音に残してもらいたいと思います。もちろんチケットが確保が大事ではあります。
さて、ルイージについては就任記念としていきなり、ヴェルディの大曲とR・シュトラウスとマエストロの十八番(おはこ)で始まりました。
レクイエムについては言葉にならないぐらい素晴らしい出来でした。指揮者として最も円熟してきている時期にこの演奏は自分の聴いてきた演奏の中でも指折りのものを聴かせてもらった印象です。
このコンサートの場に居られたことを本当に感激しました。いろいろな演奏に接して、「感動できることがあるだろうか」と思っていましたが、音楽構成の端正さ、緻密さ、そして劇的な音の動きに幸せな気持ちになれました。
リヒャルトについてもN響の特性をうまく引き出し、最高の音楽仕上げていました。ここで再認識したのはN響って本当に良いオーケストラなだということも今さらながら観じました。アシュケナージ時代の「暗黒のN響」を体験しただけに今のN響の演奏はいつも新たな体験をさせてもらっています。
この中で、楽しみにしていた公演は都響のグラゴル・ミサでした。僕はヤナーチェクが好きで、シンフォニエッタに当たることも楽しみにしていますし、オペラの「利口な女ぎつね物語」の公演はいつも心待ちにしています。新国立劇場は一向にこの演目をやってくれないので不満に思っています。
大野さんの演奏は手堅く、演奏の早さも中庸で、ぱっと聴くと凡庸な演奏に聞こえますが、音楽構成は非常に緻密に仕上がっています。オーケストラギリギリまで詰めるのは小泉さんや秋山さんや尾高さんで、皆海外のオーケストラで常任や音楽監督をされていました。大野さんも現在もバルセロナ交響楽団の音楽監督をされていますが、実はもう一押し必要なのかなあとも思っています。
結局、ベルリン・フィルやウィーン・フィルを常連で指揮する人たちはスター性もあるのですが、観客を「その指揮者に引き込む音楽」が必要なのでしょうね。
ペトレンコの演奏をほとんど聴いていないのでどうなのか知りませんが、近年ではネルソンス、マケラの音作りは、間違いなく別次元のなにかがあります。佐渡さんがベルリン・フィルの再演がないこともなにがしか要因があるのは間違いないと思います。
ウィーントーンキュンストラーoの音楽監督にはなれても次のステップにいけない壁はきっと存在するのでしょうね。
これら2つのオーケストラが全てではないでしょうけど、やはり日本人の指揮者がこれらのオーケストラに定期的に招かれ、さらにそこでの経験が日本のオーケストラにフィードバックされることは日本の聴衆にとっても喜ばしいことだと思います。
米国ビッグ5以外に僕がヨーロッパで大好きなオーケストラのベルリン・フィル、ドレスデン国立歌劇場o、チェコ・フィルのブラームスやR・シュトラウス、チャイコフスキーの音は今でも日本のオーケストラで聴けない音色が敢然と存在しています。
これらのオーケストラの定期会員になれるものならなりたいです。物理的に不可能なんですけどね。
新日本フィルの演奏会はベートーヴェンが凄まじかったです。常任交代時にはベトの3,5,7番といった定番の名曲をこのオーケストラはよくやりますが、基本的にオーケストラがキリキリした音を立て(上記の小泉さんや秋山さんがよく出す音)、煽った演奏をやることが多いです。先の音楽監督の上岡が就任したときも「英雄」を演奏していましたが、新日本poはこの曲をいつも追い込んでいきます。そこまで追い込むかというぐらいです。
僕の理想はカラヤン_ベルリン・フィルの60年代に演奏したグラモフォンのもので、品格のあるものが好みです。5番も7番も同様で胃もたれしないベートーヴェンが個人的な趣味です。精神性に欠けると言われるかもしれませんが、フルトヴェングラーの教えを受けたいわけではないので健やかなベートーヴェンをいつも聴きたいと思っています。
東京交響楽団はショハキモフの指揮でしたが、容姿は大学の学生オケを指揮するようなあんちゃんの風貌でした。
ノットさんを迎え、オーソドックスなクラシックの真髄を表現するようになりました。大友直人さんも中庸な演奏をされてきましたが、どこか心地よい音が強調され映画音楽的な仕上がりになることもありましたが、ノットさんはヤンソンスさんを彷彿させるおおらかな音楽の仕上がりを我々に提供してくれます。
ショハキモフはプロコフィエフの解釈は淡々としたものでもうちょっと作り込んでくれてもと思いました。この5番について自分がバイブルにしていたのはバーンスタイン指揮のイスラエルpoのもので3楽章がウルウルくる演奏です(本当はウィーンフィルを演奏したライブが最高!)。
ショハキモフについては読売日響でも指揮したようですが、僕にとってはそんなに印象が残る感じではなかったです。
ウズベキスタンの指揮者ですが、ストラヴィンスキーかハチャトゥーリアンあたりをしっかり指揮してくれるようなら再演していただいてもいいかなという感じです。