2014年8月5日朝、衝撃的なニュースが
伝えられました。
理化学研究所(理研)の小保方晴子・研究
ユニットリーダーの直属の上司で、
STAP細胞の論文の共同執筆者である、
笹井芳樹副センター長が、
5日午前8時40分ごろ、理研発生・再生
科学総合研究センター(神戸市、CDB)
に隣接する先端医療センター内で自殺しま
した。享年52歳。
ご冥福をお祈りいたします。
これからお伝えするのは、笹井さんや小保方
さん、理研、さらに関係者を誹謗中傷する
ことではなく、
『日経ビジネス』取材班が、取材を通じて、
事実に基づいて執筆した記事から、
ポイントとなる個所を抜粋した部分と、
私の感想と考えです。
この点を予めお了解ください。
当初、このブログ記事を書くべきかどうか、
逡巡しました。
公開情報だけでしか知らない私が、
この重要なテーマを書いていいのか、
と考えたからです。
しかし、ある本のこの一節を読んで、
それは杞憂であると考え直しました。
(『野蛮人のテーブルマナー 「諜報的(インテリジェンス)生活」
軍事情報以外に関しては、インテリジェンス
(「文字と文字の間の隠された意味を読む」)
機関が必要とする情報の95~98%を公開情報
で入手することができると言われているが、
筆者の経験からしても、それは事実である。
外務省で、「秘(無期限)」や「極秘」の
判子が押されている秘密情報とほぼ同様の
情報を公開情報の中から見つけ出すことが
できる。このようなインテリジェンスの技法
を業界用語で「オシント(OSINT)」
という。「オシント」とは、「オープン・
ソース・インテリジェンス(Open Source
Intelligence)」の略語だ。
の技術』 佐藤優 講談社 2009年1月28日 P.22)
『日経ビジネス』は、取材班が自ら現地取材
し、事実に基づき記事を執筆しています。
憶測記事を書かないという点で、
他の週刊誌とは一線を画しています。
『日経ビジネス』は2014年6月30日号から
2014年7月28日号まで5週連続で、
「シリーズ検証」のテーマの一つとして、
「STAP細胞、失墜の連鎖」と題する
記事を掲載しました。
1回毎の記事は1ページに収まる量ですが、
5回分ですから、かなりの分量になります。
そのため、このブログでも5回に分けて、
お伝えします。
私の考えも書きますので、1回分のブログ記事
はかなりの量になります。
その点はご了承ください。
『日経ビジネス』の元記事を先に掲載し、
その後に私の感想や考え方を書くことにします。
では、始めます。
STAP細胞、失墜の連鎖 ① 暗転
(『日経ビジネス』2014.06.30号 P.024 以下同様)
(早稲田大学理工学部 応用化学科教授の)
常田聡のモットーは「教えない教育」。
学生の自主性を重んじ、自由に研究させた。
彼女は修士課程に進むと、
医学部を持たない早大が生命科学研究で
長年連携してきた、東京女子医科大学の
門を叩いた。
それから8年後の今年1月。小保方晴子は、
科学界に彗星のように登場した。
動物の体の細胞に刺激を与えると初期化し、
あらゆる細胞に分化するSTAP細胞を発表。
「リケジョの星」と、賞賛を浴びた。
(上掲誌 P.024)
だが、事態は暗転する。所属する理化学研究所
は4月、科学誌「ネイチャー」への掲載論文に
捏造と改竄があったと断定。
大発見は、華々しい発表から2カ月で無に帰した。
(上掲誌 P.024)
理研理事長の野依良治は、小保方を「未熟な研究者」
と切り捨てる。
(上掲誌 P.024)
早大と女子医大が共同で設置し、小保方が所属
していた「TWIns(ツインズ)」は、
医工融合の研究拠点として名が通る。
専門分野が畑違いの早大教員の間には、工学技術
を使った再生医療研究をリードする女子医大教授
の岡野光夫や大和雅之が率いるTWInsの学生を、
特別視する風潮があったという。
(上掲誌 P.024)
同じ空間にいるが、よその人間。その事情は、
女子医大にも共通していた。
「TWInsは早大の学生を『お客さん』扱い
していた」(関係者)。
さらに、小保方は博士課程に進学した2008年に
ハーバード大学教授のチャールズ・バカンティ
のもとに渡り、女子医大の教員の目からも離れる。
(上掲誌 P.024)
「ハーバードの方の実験ノートを見せてください
とは言えなかった」。STAP細胞の論文共著者
である山梨大学教授の若山照彦は、6月16日の会見
でこう悔いた。女子医大では早大の人、
ハーバードでは女子医大の人、
理研ではハーバードの人――。
(敬称略)
<私の感想と考え>
STAPの由来は、
英科学誌「ネイチャー」を見ますと、
「stimulus-triggered acquisition of
pluripotency (STAP)」となっています。
これにcell(細胞)を付加して、
STAP CellsでSTAP細胞と
なります。
小保方さんが早稲田大学に在籍しながら、
東京女子医科大学へ通学していたことを、
不思議に思っていました。
この記事を読んで、その疑問が氷解しました。
さらに、「動物の体の細胞に刺激を与えると
初期化」するという考え方は、論文の共同
執筆者である、ハーバード大学のバカンティ
教授のアイディアと言われています。
この点を理研は明らかにしませんでした。
早大でも、東京女子医大でも、ハーバード大でも、
そして理研でも小保方さんは「お客さん」扱い
だったのです。
その点が、責任の所在が曖昧になった遠因に
なっていると思います。
「研究者たちの権威に対する遠慮と、指導者
としての責任転嫁の連鎖は、粗削りな若手
研究者をやがて科学界の中心へと導いていった」
ということになったのです。
理研の野依良治氏は、ノーベル化学賞受賞者です。
野依さんが名古屋大学教授時代のエピソードが、
『理系白書 この国を静かに支える人たち』
(毎日新聞科学環境部 講談社文庫
2006年6月15日第1刷発行 オリジナルは
2003年6月刊)の中に書かれています。
当時から、手抜きを許さなかったのです。
(上掲書 P.54)
野依研の厳しさは有名だ。あるOBは
振り返る。「なにしろ厳しい人です。
妥協を許さない。完璧な実験データ
がとれるまで論文はノー。博士になる
のに五、六年かかる例はざらです」。
(上掲書 P.56)
田中さん(野依研で博士号取得を当時
目指していた大学院生)を支えている
のは、野依教授のこんな言葉だ。
「一番いいもの(物質)をめざしなさい。
世界中の化学者が乗り換えるような
ものでなければ」。
詳細は、下記のブログをご覧ください。
STAP細胞の作製に関するマスコミの対応について
この一連の騒動により、英科学誌「ネイチャー」
への掲載論文は撤回されました。
私はこのようになる可能性が高くなった時点で、
PDFに保存しました。
参考までに下記のPDFをご覧ください。
もちろん、英文ですし専門用語だらけですので、
理解することは極めて難しいことですが、
参考資料として考えていただければ、
よろしいかと思います。
この論文の共同執筆者に東京女子医大の大和雅之
教授の名前があります。さらに2名のバカンティ氏
も掲載されています。
Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells
into pluripotency
第2回へ続きます。
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