宙組ホープ、瑠風輝バウ初主演「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」開幕 | 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス

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宙組ホープ、瑠風輝バウ初主演「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」開幕

 

宙組のホープ、瑠風輝(るかぜ・ひかる)の初主演となるバウ・ロマンス「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」(木村信司脚本、演出)が5日、宝塚バウホールで開幕した。「華麗なるギャツビー」のF・スコット・フィッツジェラルド原作の短編を舞台化したもので、瑠風扮する大学一のナイスガイ、ジョンが夏休みに学友に誘われて訪れた豪邸で起きたとんでもない出来事を描いたミュージカルコメディ。瑠風が優等生カレッジボーイをさわやかに演じているが、作品としては木村氏らしい一風変わった作品に仕上がった。

 

ジョン(瑠風)は、大学一の人気者。学生演劇祭でも主役を務め、華やかに歌い踊った。舞台はこの公演の場面から始まる。ジョンの親友で、公演の出資者でもあるパーシー(鷹翔千空)はそんなジョンに、夏休みを自分の故郷に遊びに来るように誘う。パーシーに連れられて訪れたパーシーの実家は、巨大なダイヤモンドの原石の中に建てられたという贅をこらした黄金の楽園のような豪邸だった。

 

一種ファンタジーのようだが、フィッツジェラルドらしい文明批判もぴりりと利かした風刺コメディといった趣。ただ、豪邸の装置や小道具がチープで、作品本来の豪華な雰囲気がでないことおびただしく、なんだかB級のSF映画を見ているよう。ただし、そのなんともいえないB級感覚がお好きな人はけっこうはまる要素があるかも。

 

瑠風は、優等生タイプの大学生役ということで、そのままの個性で演じられるはまり役。すらりとした体型が舞台に映え、持ち前の歌唱の実力もふんだんに聞かせてくれる。これ以上ない申し分のない役どころではあるが、役がそれほど深く書かれていないせいもあるがややあっさりとしすぎて物足りなくもない。男役としての発展途上のなかでは、こういう毒にも薬にもならない優しい青年役を経験しておいた方がいいのはわかるが、この時期だからこそもう少しエキセントリックな難しい役を見たかった気もする。とはいえ、このまま真っ白な状態で大きく育ってほしい。

 

親友のパーシー役を演じた鷹翔は、このところ新人公演の主役でめきめき頭角を現している。面影が龍真咲似で、ついつい比較してしまうが、芝居も歌もずいぶんとしっかりしていて、今回も、ジョンにあこがれて、結果的にはジョンを自宅に軟禁してしまう、ストーカー的な青年を、狂気じみた風情ではなく切なくクールに演じた。

 

夢白あや演じるヒロインのキスミンはパーシーの妹という設定。ジョンが部屋を間違えたことから二人が出会う。このあたりの描写があっさりしすぎているのが物足りない原因かも。瑠風と夢白自体は「神々の土地」「異人たちのルネサンス」新人公演で二度共演しているので息はあっていて、歌唱もずいぶんなめらか。容姿は申し分なく、背丈的にもぴったりなので、後半は熱く盛り上がった。宙組でのこの二人のコンビは楽しみな存在になりそうだ。

 

ほかには悠真倫と美風舞良がパーシーの両親を、一見、作品の世界観を代表する時代錯誤的なキャラクターを作りこんで演じ、さすがベテランの域。

 

若手では豪邸の中に捕えらえている飛行士たちに若翔りつ、希峰かなた、愛海ひかるら若手男役陣がずらり。研3の亜音有星(あのん・ゆうせい)が、目立つ役を与えられ、その美貌がひときわ目立った。

 

休憩、フィナーレを含めて2時間10分。ずいぶんコンパクトな舞台だった。

 

 

©宝塚歌劇支局プラス9月7日記 薮下哲司