大地真央、圧倒的迫力の女王演技「クイーン・エリザベス」開幕   春風ひとみ、一路真輝らも大活躍 | 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス

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大地真央、圧倒的迫力の女王演技!「クイーン・エリザベス」開幕

   春風ひとみ、一路真輝、瀬奈じゅん、水夏希、壮一帆らOGが大活躍!

 

5月5日から東京・日生劇場で始まった大地真央主演の「クイーン・エリザベス〜輝ける王冠と秘められし恋〜」(宮田慶子演出)はじめ今月はタカラジェンヌOGの活躍が目立っている。主な舞台を紹介しよう。

 

 

 

★クイーン・エリザベス〜輝ける王冠と秘められし愛〜

26日まで東京・日生劇場

 

元月組のというよりいまや日本を代表する女優の一人、大地真央がまた新たな境地を切り開いた。「クイーン・エリザベス」は、16世紀イギリスに君臨したエリザベス女王の物語。翻訳劇やミュージカルで一時代を築いたこれまでの大地の集大成であるばかりでなく、この物語が翻訳劇でなくよく練られたオリジナル(斎藤雅文脚本)であることにも感動を禁じ得ない。エリザベスの後継者選びのくだりでは現在の日本の政治状況が鏡のように映し出され、エリザベスの苦悩が我々自身の問題として重くのしかかってくるあたりは見事な作劇だった。

 

ミュージカル「レディ・べス」(小池修一郎作、演出)と同じ女王エリザべス一世の半生を描いた物語で、ミュージカルが戴冠式までの少女期を描いていたのに対し、今回はほぼ一生を追う。冒頭は牢獄のなか、死刑を目前にしたエリザベス(大地)が首切り役人に罵倒される牢獄の場面から始まる。意表を突いた幕開きだと思ったら、これがエリザベスの悪夢であることがわかり、それから始まる舞台全体がこの悪夢でおおわれていることが徐々にわかってくる。

 

舞台は主に女王の寝室か執務室。戴冠式などのスペクタクルなシーンはさらっと台詞だけで流す緊密な会話劇で、王位をめぐるスコットランド女王メアリー・スチュアートとの確執の末、イングランドの女王として戴冠、国と結婚して自身は結婚しないと宣言して周囲を慌てさせるもスペインの無敵艦隊を破り、女王として君臨するあたりまでが第一幕。第二幕は側近だったロバート・ダドリー(レスター公)が亡くなり、息子のロバート・デバル(エセックス伯)に後を託そうとするが暴走の末に裏切られ、エリザベスの女性として、女王としての苦悩を描いていく。

 

女性であることで誤解や偏見を受けながら凛々しく高潔にぶれずに生き抜いた女王の姿を大地が圧倒的な華やかさで体現、見事な女王ぶりだった。共演者も的確でレスター公の長野博、エセックス伯の高木雄也のジャニーズ勢が好演、国務長官としてエリザベスを支えるウィリアム・スミス役の西岡徳馬、エリザベスの付き人べス役の樹里咲穂の2人がしっかりとわきを支え、充実した仕上がり。宮田慶子の丁寧な演出が光った。

 

 

 

★細雪

27日まで東京・明治座

 

当初、4姉妹全員がタカラジェンヌOGということで発表されたが結局、長女、鶴子が浅野ゆう子、次女、幸子が一路真輝、三女、雪子が瀬奈じゅん、四女、妙子が水夏希という座組で実現した谷崎潤一郎原作によるヒット舞台の再演。数多くのタカラジェンヌが出演してきた名舞台で、娘役出身の女優が参加することが多かったが、大和悠河、壮一帆が四女、妙子を演じたころから男役出身スターが出演するようになり、今回出演した3人はすべて元男役トップスター。

 

長女、鶴子役の浅野が、男前な演技で妹役3人を仕切るという役割設定のため、男役出身の3人が思いのほかしとやかに見え、とはいえ男役を経験した3人のそれぞれの押し出しのある芯のある芝居力はさすがで、これまでにない華やかな舞台となった。次女、幸子の一路は、四人姉妹の緩衝材的な役どころを、抑え気味ながらも芦屋夫人らしい品格をにじませながら的確に演じて好演。瀬奈は、優柔不断で何を考えているかわからない三女、雪子を、現役時代の凛々しい男役を知っているものにとっては、信じられないようなはんなりさで表現。水が演じた四女、妙子は、男役出身者には一番しっくりくる行動的な役で、水ものびのびと演じていた。

 

3人のまとめ役の浅野の女優としての懐の深さが際立った舞台ではあったが、4人が晴れ着姿で登場する華やかなラストシーンの裏にやがて来る戦争の足音が胸に大きく響き、満開の桜のようなはかない平和の美しさに心がしみた。

 

 

 

★一人ミュージカル 壁の中の妖精〜生きているってこんなに素晴らしい〜

12日まで東京芸術劇場シアターウエスト

 

元月組の娘役スター、春風ひとみがライフワークとしている一人ミュージカルの伝説的名作「壁の中の妖精」(福田善之作、演出)が9日から12日までたった4回の上演回数ながら9年ぶりに再演された。1993年の初演だからもう25年以上たっているのだが、初めて見たときの衝撃は昨日のように憶えている。

 

在団当時から並みの娘役ではない別格的な実力があり「ミー&マイガール」初演のマリア侯爵夫人とバウホールでの主演公演「サウンド・オブ・ミュージック」のマリアと、2人のマリア役の卓抜した演技は脳裏に刻み付けられている。谷崎潤一郎原作「春琴抄」を舞台化した月組大劇場公演「愛限りなく」(内海重典脚本、演出)ではトップスター、大地真央の相手役を務めている。

 

そんな春風の退団後のさまざまな作品群のなかでも代表作がこの「壁の中の妖精」だ。

舞台は第二次大戦中から戦後のスペインの片田舎。大戦後もスペインでは右派のフランコ将軍の独裁が続き、その圧政下、30年もの長きにわたって自宅の「壁」の中に隠れて生きた元共和国派(左派)の男と、その妻と娘をめぐる物語で「事実をもとにしたストーリー」を福田善之が一人ミュージカルとして脚本化した。

 

 春風演じるマリアという少女が、卵の行商にでかけた母が留守の夜、どこからか聞こえてくる歌声に耳をすますところから物語は始まる。マリアはその声に「妖精?」と語りかける。やがて、それはフランコ軍による銃殺から逃れるためにひそかに隠れている父マノーロだということがわかる。春風は、娘のマリア役を中心に父親のマノーロ、その妻フリアーナ、そして村人や、マリアの夫シルベストル、さらにはマリアの長女まで子供、老人問わずさまざまな役を一瞬のうちにその歌声まで演じ分け、ダンスも踊るという離れ業を見せる。春風の演技力の確かさもさることながら、いつの日か自由を取り戻したいという信念の強さ、舞台全体に生きることの喜びがあふれていて、ひと時も目を離せなかった。演じ分けのあまりの巧みさに何人も出ているような錯覚に襲われ、終演後、たった一人で舞台あいさつする春風に、本当に一人芝居だったのだと改めて認識したほど素晴らしい舞台だった。

 

初日の客席には大勢のタカラジェンヌOGや演劇関係者がつめかけ、春風の名演に惜しみない拍手を送っていた。

 

 

 

★壮一帆&京フィル プレジャーコンサートin春秋座

5月11日京都芸術劇場春秋座

 

元雪組のトップスター、壮一帆がオーケストラをバックにコンサートを開いた。春秋座毎年恒例のコンサートで、これまで安蘭けい、涼風真世、一路真輝と続いてきた。壮本人も舞台上のあいさつで「歌をなりわいにはしているものの、これまでの皆さんはお上手な方ばかりで、私で満足していただけるか不安」というとおり、実際のところ歌で勝負というスターではなかったと思うが、そんなざっくばらんなところが壮の素晴らしいところ。退団4年、男役の声から徐々に生来の女性の声に矯正している最中というが、よく伸びる堂々たる歌声と華やかなステージングで、19人編成の生オーケストラの前で気持ちよく歌う壮を見ていると、聞いている方も心身ともに解放感で幸せな気持ちになった。

 

一部は「風と共に去りぬ」のスカーレットを思わせる純白のわっかドレスで登場。選曲はアニメ「SEKAI NO OWARI」から「炎と森のカーニバル」で軽快にスタート。テレビ小説「マッサン」から「麦の唄」、映画「ローズ」から「ローズ」と続けミュージカルからは「ノートルダムの鐘」の「僕の願い」と「エビータ」の「アルゼンチンよ、泣かないで」を絶唱した。休憩後の二部はシックな黒のタイトなパンツに着替え、お待ちかねの宝塚メドレー。「セ・マニフィーク」「夜霧のモンマルトル」「駆けろペガサスの如く」「心のひとオスカル」を一気に披露。

最後は「オール・バイ・マイ・セルフ」をしっとりと歌いこみ、カーテンコールではオーケストラコンサートにふさわしく「第九」から「希望の唄」を歌ってコンサートを締めくくった。

 

オーケストラをバックに歌うのは「宝塚時代以来」とかで「やはり生のオーケストラで歌うのは気持ちがいいですね」と歌う喜びにあふれた壮の底抜けに明るい笑顔が印象的な素敵なコンサートだった。

 

 

©宝塚歌劇支局プラス5月12日記 薮下哲司

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