真風涼帆がダ・ヴィンチに!宙組公演「異人たちのルネサンス」開幕 | 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス

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真風涼帆がダ・ヴィンチに!宙組公演「異人たちのルネサンス」開幕

 

真風涼帆率いる宙組による「-本朝妖綺譚-白鷺の城」(大野拓史作、演出)とミュージカル・プレイ「異人たちのルネサンス」-ダ・ヴィンチが描いた記憶-(田淵大輔作、演出)が5日、宝塚大劇場で開幕した。愛希れいかのサヨナラに加えて美弥るりかの休演もあって最後まで賑やかだった月組公演「エリザベート」に続く宙組公演は、宝塚ならではの華やかな日本物レビューと中世イタリアを舞台にダ・ヴィンチの「モナ・リザ」誕生にまつわる秘話を描いた愛と青春のロマン。2本ともオリジナルの新作で、ちょっぴり静けさを取り戻した感のある落ち着いた公演となった。

 

「白鷺―」は、日本物には定評のある大野氏の新作だが、本人にとって初めてのレビュー。宝塚の日本物には、大野氏の言にもあるようにおおざっぱに分けて四季絵巻風のバラエティショーとストーリー性を重視した舞踊詩風ショーの二種類があるが、この「白鷺―」はその両方を組み合わせた欲張りで贅沢な和ものショー。

 

時は江戸時代、陰陽師の友景(真風)が、明覚(寿つかさ)と無三四(桜木みなと)とともに白鷺城に巣食う化け物退治のため城門に立ったところ一羽の白鷺が飛び立ち、それに導かれるように友景の夢の世界が繰り広げられる。平安時代や古代中国などのきらびやかな世界が展開する中、陰陽師の先祖、安倍晴明の母親、葛の葉(松本悠里)が狐の化身だったことが解き明かされ、鳥羽上皇の寵姫・玉藻前(星風まどか)と安倍晴明との関係が浮き上がる。そして友景と玉藻前の年月を超えた数奇な運命が展開する。

 

なんとも壮大で幻想的なストーリーだが、予備知識なしで見ると、何が何だか分からないのが残念。ただ、舞台面はどの場面も、華やかで豪華絢爛。日本物ショーは初めての宙組とあって、下級生たちの化粧や所作などで「なんともはや」なところは見受けられるものの、そのへんは目をつぶれば久々に宝塚の豪華な日本物が堪能できる。

 

友景に扮した真風は、星組時代に経験しているとあって化粧映えが抜群、切れ長の瞳に白塗りの化粧がよく似合い、どの場面もため息が出るほど美しい。葛の葉には宝塚の至宝、松本悠里が久々に本公演に登場。夫の保名役の愛月ひかると並んでも何の違和感ない若々しさは驚異的。都合、3場面ほどの見せ場があるが、しなやかな動きとともに、舞台に出るだけで安心感が漂う大きな存在感はさすがだ。

 

一方「異人―」は、15世紀イタリアのフィレンツェを舞台に、当時、絶大な権力を持っていたメディチ家のロレンツォ(芹香斗亜)とローマ教皇(寿つかさ)という2つの対立する権力のはざまで、双方からその才能を見込まれた天才画家レオナルド・ダ・ヴィンチの愛と苦悩をえがいた作品。ダ・ヴィンチの絵画を再現したかのような凝った舞台装置と衣装、まるで動く絵画といった雰囲気の舞台は、宝塚の舞台とは思えない重厚なもので、見事な再現率。しかし、写実にこだわったことからカーニヴァルの場面以外は全体的に舞台面の照明が暗いのが欠点。

 

内容的には、ダ・ヴィンチと幼馴染のカテリーナ(星風まどか)という女性との報われない愛を基本軸に描いているのだが、ダ・ヴィンチのカテリーナに対する思いを描く回想シーンのインパクトが思いのほか弱いため、再会後から後半の悲劇性が盛り上がらず、ダ・ヴィンチがカテリーナをモデルに描いたのが「モナ・リザ」であることが最後に明かされるところで、描かれた微笑の意味がいまいち迫ってこないものがあった。同じ宙組のオリジナルの佳作「シェークスピア」に比べてみるとよくわかるのだが、主人公の夢が宝塚愛にだぶった「シェークスピア」のような宝塚的な味付けというか、落とし込みがやや弱い感じがした。

 

ロレンツォと対立するグイド司教(愛月ひかる)とパッツィ(凛城きら)の2人のキャラクターがかなり強烈で、この横軸のサイドストーリーが思いのほかインパクトが強く、二人が好演していることもあって、本筋がかすんだともいえる。

 

真風は、「白鷺―」とは打って変わった金髪のかっこいい青年という雰囲気で登場。頭脳明晰というよりは優しい兄貴といった感じで、天才にありがちなとっつきにくさは極力避けた役作り。それは正解だったと思う。やや不安定なところも見受けられるが、独特のハスキーな歌声が魅力的だ。

 

相手役の星風まどかは、ダ・ヴィンチはおろかロレンツォ、その弟ジュリアーノ(桜木みなと)からも慕われる美女カテリーナ。大人の女性としての魅力が必要な役だが、豪華なドレスがことのほかよく似合い、なかなかの好演だった。

 

ロレンツォの芹香は、フィレンツェで一番の権力者という大物ぶりを貫録たっぷりに表現。存在自体に大物ぶりが漂ってきた。その弟ジュリアーノの桜木も屈折した役どころを印象的に好演した。

 

この物語を陰で操るグイド司教役の愛月は、オープニングから板付きで登場、実質主役のようなカギを握る人物を、怪しげに存在感たっぷりに演じこんだ。「神々の土地」のラスプーチンといい、この役といい、悪の香りがよく似合う。

 

澄輝さやと、蒼羽りく、和希そら、留依蒔世、瑠風輝といった中堅から若手男役スターたちはダ・ヴィンチが働く工房のメンバー役。このあたりを生かせる役がないのももったいない限り、なかでは娘役の天彩峰里が演じた少年サライがおいしい役だった。

 

後ものなので、最後にフィナーレがあり、カーニヴァルのピエロの衣装でのロケットや、黒いタイトスカートに大胆なスリットが入った娘役ダンサーのなかで真風が一人踊る場面が新鮮。初日のデュエットダンスは怪我のため大事をとって星風のかわりに夢白あやが真風と踊るというハプニングがあったものの、夢白が見事に代役を務めて大きな拍手をあびていたのが印象的だった。

 

©宝塚歌劇支局プラス10月6日記 薮下哲司

 

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