薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス

映画・演劇評論家の薮下哲司(元スポーツニッポン特別委員)が宝塚歌劇はもとより映画、演劇など幅広い分野のエンターテイメント情報をお伝えしていきます。


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    新人公演プログラムより

 

宙組期待のホープ、鷹翔千空(たかと・ちあき)が初主演したミュージカル・オリエント「天(そら)は赤い河のほとり」(小柳奈穂子脚本、演出)新人公演(町田菜花担当)が、4月3日、宝塚大劇場で行われた。今回はこの公演の模様をお伝えしよう。

 

鷹翔は2015年「1789」で初舞台を踏んだ101期生。首席卒業の優等生で、175㌢の長身は宝塚の男役としては理想的。舞台度胸も満点で研2の時に「エリザベート」新人公演でルドルフに大抜擢、初の大役とは思えないしっかりとした歌とダンスで感心した覚えがある。次の「王妃の館」ではルイ14世、続く「神々の土地」はフェリックスと真風涼帆が演じた役を新人公演で演じ、いずれも華やかさの中にも地に足に着いた演技で強く印象に残った。100期生の風間柚乃とともに101期生の末恐ろしい大器と書いたのはついこの間だったような気がする。

 

その鷹翔の初めての新人公演主役が真風のトップお披露目公演でめぐってきた。「天―」は篠原千絵原作の長編漫画の舞台化で、全28巻を1時間40分あまりにまとめたダイジェスト版。新人公演も本公演とほぼ同じ展開で、紀元前14世紀のメソポタミア、ヒッタイト王国を舞台に、カイル王子と現代からタイムスリップさせられた女子高生ユーリの波乱万丈のラブストーリーが膨大な登場人物を絡めて展開する。

 

新人公演を見て改めて思うのは、登場人物がとにかく多すぎるということ。名前と関係が一回では覚えられず、しかもストーリーの展開が早いので、カギとなる重要な台詞を聞き逃すと誰が何のために何をしているのかが全く分からない状態になる。細かいことはつきつめず、古代の王子と現代からタイムスリップした少女のラブストーリーを楽しめばいいのだが、ハッピーエンドになっても見た後の気持ちが落ち着かない。そんな印象は今回の新人公演を見ても何も変わらなかった。というのは、芯のストーリーを進めるために、かなり強引な展開が随所にあり、それはないだろうと疑問が渦巻くあたりがこの脚本の最大の弱点。基本的には宝塚らしい面白くていい話なのでいっそのこと1本立ての大作にしてじっくり描けば、ここまで駆け足にはならなかっただろうと思うと悔やまれる。

 

それはさておきカイル王子に扮した鷹翔は、オープニングの登場場面から早くも貫録たっぷり。ウェーブがかかったブロンドの長髪に大きなマントがよく似合い、初主演とは思えない余裕の舞台さばき。最近のトップの新人公演を思い返してみれば珠城りょうの初主演もこんな感じだったなあと懐かしく思い出す。押し出しがあってうまくて文句のつけようがないのだが、半面、新人らしい危なっかしさが感じられない。もう出来上がっている感じがした。初体験というキスシーンも豪快で、男役と言うより実際の男性が力強く抱きしめているというパワーさえ感じさせた。もちろんそれは鷹翔の大きな武器だが、欲を言えば女性が演じる男役の微妙な柔らかいニュアンスもほしい、それが加味されれば鬼に金棒だろう。将来楽しみな逸材だ。

 

相手役のユーリは星組から組替えで宙組に編入されたばかりの天彩峰里(あまいろ・みねり)。本役の星風まどかと同期生で、雰囲気もよく似ていて、すぐにでも代役ができそう。現代の高校生がいきなり古代でここまで奔放に生きられるとは到底思えないが、そんな嘘を感じさせない天衣無縫さが天彩にあり、のびのびとした舞台姿がなんともかわいかった。

 

芹香斗亜が演じたエジプトの武将ラムセスを演じたのは優希しおん。登場シーンからその美貌が際立って客席からの視線を一身に集めた。アイメイクやブロンドのヘアスタイルがことのほかよく似合いビジュアルが洗練されているうえ、芹香直伝と思われるラムセスのやさぐれた不良っぽい雰囲気の王子役がとにかくかっこいい。歌唱が不安定なのがちょっぴりマイナス材料だったが今回の新人公演で一番のうれしい驚きだった。

 

愛月ひかるが演じた黒太子マッティワザは若翔(わかと)りつ。残忍非情な敵国の王子で黒づくめの衣装が何とも不気味。そんな濃い雰囲気をよくたたえた好演。役としては後半、味方になって戦うくだりが新人公演を見ても説明不足ではあるが、若翔の大きな動きは舞台映えがした。

 

すでに主演、ヒロイン経験のある瑠風輝はウルヒ(星条海斗)遥羽ららはネフェルティティ(澄輝さやと)にまわったが、一度センターを経験したあとで演じる脇のポジションというのは、役作りに余裕が生まれるのか、台詞にも情感がこもり、いずれも好演だった。前回の新人公演でヒロインを演じた夢白あやはユーリ付きの世話係リュイ(水音志保)を演じていた。

 

ザナンザ(桜木みなと)の真名瀬みらのさわやかな演技は想定内だが、ティト(愛海ひかる)に起用された研1の亜音有星(あのん・ゆうせい)の初々しい演技も特筆ものだった。本役で演じた愛海はカイルの部下カッシュ(和希そら)だったがその甘いマスクでひときわ目立っていた。

 

カイルの義母でヒッタイト王国の皇妃ナキア(純矢ちとせ)の華妃まいあの芝居ごころのある歌唱、カイルが地下牢で出会うハッティ族の族長タロス(風馬翔)の澄風なぎの達者な演技も公演自体のレベルを上げていたことを忘れてはならない。あと娘役トップ、星風まどかが冒頭、現代のシーンの詠美役(天瀬はつひ)でワンポイント出演、はつらつとしたところを見せていたことも付け加えておきたい。

 

©宝塚歌劇支局プラス4月4日記 薮下哲司

 

 

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