石丸幹二×安蘭けい「スカーレット・ピンパーネル」大阪公演開幕&月組シンギングワークショップ | 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス

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石丸幹二×安蘭けい「スカーレット・ピンパーネル」大阪公演開幕&月組シンギングワークショップ

 

安蘭けい主演で2008年に星組で初演されたミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」のオリジナルブロードウェーバージョンによる公演が、石丸幹二のパーシーと安蘭のマルグリット、石井一孝のショーブランという興味津々の配役で実現、東京に続いて10月31日から梅田芸術劇場メインホールでの大阪公演が始まった。今回はこの模様と5組の最後となった月組若手による「バウ・シンギング・ワークショップ」をあわせてお伝えしよう。

 

「スカピン」のオリジナルブロードウェーバージョンは、1998年に開幕、約2年弱ロングランされた。このころは私も頻繁にニューヨークに行ってブロードウェー通いをしていたのだが「ライオンキング」や「プロデューサーズ」などの人気作の開幕と重なって、結局、見逃している。それだけ人気薄であまり評判作ではない印象だった。しかし、小池修一郎氏の宝塚バージョンは、ルイ・シャルル王太子救出劇というンブロードウェーにないプロットを編み出し「ひとかけらの勇気」という新曲を生み出すなど、新しい血を注入して見事な作品に作り替え、大ヒットさせた。そのオリジナル版の上演ということで、いったいどんな舞台になるのか、ちょっと不安だったのだが、新演出版は、「ひとかけらの勇気」のメロディーを使って新たな曲にするなどブロードウェーオリジナルとは全く違ったものに作り上げ、宝塚版ともまた色合いの違った魅力的なミュージカルに仕立て上げた。

 

序曲のあとのオープニングは、安蘭扮するマルグリットがパリの劇場での最後の公演で歌っているところから。客席下手には石丸扮するパーシー、上手には石井扮するショーブランがいる。宝塚版を見ている人には、三人の関係がわかっていて、次の展開が分かるだけに最初からいきなりクライマックスに放り込まれたような感覚になり、物語にぐいぐい引き込まれて行く。ただマルグリットが出演している舞台の衣装と装置が、時代を忠実に反映しているとはいうもののやや古臭くて、宝塚版のあの回り舞台を使った装置がいかに斬新で優れていたかがよく分かる。歌の途中でショーブランが乱入、舞台の中止を宣言するのは宝塚版と同じ。ここでパーシー、ショーブランとマルグリットの関係が要領よく説明される。

 

ストーリー展開はほぼ宝塚版と同じだが、ルイ・シャルル王太子救出劇ではなく、マルグリットの弟アルマンの救出劇がストーリーの芯になっており、マルグリットの召使いマリー(則松亜海)とアルマンの恋模様もない。ここが宝塚版との大きな違いだろうか。パーシー、マルグリット、ショーブランの三角関係も宝塚版のようにロマンティックではなく、ショーブランがマルグリットに一方的に迫ったような描きかただ。ショーブランの脅迫からマルグリットがどうやって逃れるのかがサスペンスにもなっている。熟知している話なのに微妙にスタンスが違うので、結末が分かっていても最後まで引っ張っられた。パーシーや軍団の変装などコメディーの要素も多く、客席は笑いがたえなかった。

 

ラストのミクロンの港町の巨大なギロチン台が生々しいが、そこで繰り広げられるパーシーとショーブランの決闘になんとマルグリットが加勢して二刀流のフェンシングで大活躍するのは安蘭ならでは。新演出版ならではのみどころだ。

 

宝塚版のオリジナル楽曲「ひとかけらの勇気」は別のタイトルで、パーシーとマルグリットによって意味あいや歌詞も違って曲と曲のブリッジのような形で歌われるが、曲の良さは群を抜いており、この曲がなかったオリジナルは何だったのだろうとさえ思わせた。

 

石丸のパーシーは、コミカルでドジな部分とシャキッとする部分の変わり身が見事で硬軟自在の活躍ぶり。歌唱のなめらかさは健在だった。安蘭は、ショーブランの脅迫をパーシーに言えず、苦悩するマルグリットをきめ細やかに演じ、安蘭ならではのリリカルな歌声も耳に心地よかった。ショーブランの石井も一方の正義を熱く演じたが、宝塚版ほど魅力的な人物ではないところが演じるほうも難しいところ。

 

あと「1789」でも重要な役割を果たした革命家ロベスピエールがショーブランの上司として登場。平方元基と佐藤隆紀のダブルキャストで、大阪初日は平方で、二幕冒頭のソロが印象的だった。則松のマリーは、舞台衣装のデザイナーという役がうまく物語に反映されていて面白い役になっていた。宝塚時代よりもずいぶん舞台姿があか抜けた感じがして、これからの活躍が楽しみだ。

 

ということで、宝塚版の「スカーレット・ピンパーネル」がいかにオリジナルを宝塚風にアレンジしているかということがよくわかる舞台でもあり、宝塚ファンは必見の舞台と言っていい。これを見れば来年の星組公演が見たくなること請け合いだ。

 

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さて、5組中最後となった「バウ・シンギング・ワークショップ~月~」(中村一徳構成、演出)が10月30日から11月1日まで宝塚バウホールで開かれた。

 

今回は煌海ルイセ(研9)を長に晴音アキ、春海ゆう、暁千星の4人をメーンにした16人が出演。各自とっておきの二曲ずつ披露した。

 

オープニングは月組公演「ウイズ・ア・ソング・イン・マイ・ハート」から同名主題歌を煌海ら全員が歌い継いでラインアップ。男役は黒の燕尾服、娘役は黄色いドレスというこれまでのパターンを踏襲した。全員の自己紹介の後、トップバッターは「情熱の罠」を歌った輝生かなで。かっこいいスパニッシュの振り付けを交えての歌唱に会場からは早くも手拍子が。つかみは抜群だった。

 

今回は期待のスターという意味では暁が一番で、一幕の終わりは「奇跡~大きな愛のように~」で堂々のトリ。少年っぽさが徐々に抜けてきて、このメンバーではやはり抜きんでた存在だった。二幕では「スカーレット・ピンパーネル」から「鷹のように」をたくましさものぞかせて歌い、思わずショーブランの姿を思い浮かべた。

 

歌のうまさでは男役では一幕で「EL VIENTO」二幕で「誰も寝てはならぬ」を熱唱した周旺真広、娘役では一幕でクラシック、二幕で「You Raise Me Up」を歌った麗泉里が際だった。

 

ほかに「心はいつも」を歌った晴音アキの柔軟さ「春の声」を歌った美園さくらの清涼感が印象的。下級生では二幕で「レント」から「One Song Glory」を歌った天紫珠李の情感のこもった歌声に惹かれた。風間柚乃は「闘牛士」礼華はるは「夕映えの飛鳥」を歌ったが、その美形ぶりが一段と映えていた。大トリは煌海が「愛の旅立ち」を好唱、ラストは「PUCK」から「ラバーズ・グリーン」を全員が歌って締めくくった。

 

全体を通して月組は新人公演主役クラスが暁一人だけというのが寂しく、他の組に比べてかなり地味な印象だったが、誰もが幸せそうな表情をして歌う姿は見ていて気持ちがよかった。

 

これで5組すべてのワークショップが終わったが、どの組も全員が晴れの舞台に真剣に取り組んでいるという姿勢がうかがえて好ましいコンサートだった。とはいえ、次代のスター候補生に歌だけで勝負させるという体験を持たせたことは、これからの舞台に計り知れないプラスになったことだろう。このコンサートを糧にした新たなスター誕生を心待ちにしたい。

 

©宝塚歌劇支局プラス11月2日記 薮下哲司

 

 

 

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詳細・問い合わせは毎日新聞旅行☎06(6346)8800まで。

 

 

 


 

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