もし自分の乗っている船が沈没したらどうすべきか?ということで、ここでは海難事故において生存性を高める方法について紹介します。


滅多にないことですが、頭の片隅に置いておくだけでもいざというとき役に立つかもしれません。知っているのと知らないとでは大きな違いだと思います。


①船長、乗員の指示に従う

とりあえず事故が起きたとき、勝手な行動はしないでください。船長をはじめ、乗員は乗客の安全を第一に対応します。一人の身勝手な行動が全員の命に関わります。


②救命胴衣を着装する

乗員の指示に従って着装してください。近距離フェリーや遊覧船などの小さめの客船であれば座席の下に収納してあることが多いです。救命胴衣の種類はメーカーによって様々です。装着方法はその時に乗員から教示されると思いますが、事故の程度によってはそのような余裕もないこともありえます。救命胴衣の収納場所付近にイラストで図示してあるので、乗船時に一応目を通しておいたほうがいいでしょう。船によっては子供用の救命胴衣も用意してあります。


③海に入るのは最後の手段

船が沈みそうだからといって焦って飛び込むのは控えるべきです。体温低下を避けるため、できるだけ水に浸かる時間を短くすることが肝要です。小型船などで短時間で船体が水没してしまったときは仕方ないですが、比較的大きな船だと沈むまでにある程度時間がかかります。パニックになって収集がつかなくなると助かるものも助かりません。勝手に飛び込んだりしないように。甲板の高さが高い船から飛び込むのも厳禁です。飛び込んだ衝撃で救命胴衣が脱げてしまうこともありますし、先に海に入ってる人の上に落下すれば怪我だけでは済まないこともあります。


④服や靴は脱がない

泳ぎにくなるからといって着衣などを脱がないでください。体温低下を防ぐため、できるだけ直に水が肌に触れないようにするためです。また、靴自体に空気が入り足が浮きやすく(長靴は浮きません)なります。そもそも遭難時に泳ぐことは避けなければなりません。


⑤沈没する船から遠ざかる

船が沈没することが免れなくなり、いよいよ海に入らなければならなくなったら、少し泳いで一旦船から離れてください。沈没するときに船に引き込まれる水流が発生します。小さな船であればあまり影響ありませんが、船が大きくなればなるほどその水流は大きくなります。


⑥泳がない

無駄泳ぎは禁物です。すぐ目の前に陸があるとか膨張式救命いかだや救命艇があるとかで、水中から出られる状況が確実であれば泳いで向かってもいいですが、泳げば泳ぐほど体力を消耗し、冷たい水がどんどん体に触れるため、あっという間に体温が下がってしまいます。さしあたって水中から出られる手段がないときは救命胴衣の浮力に体を預け、できるだけ体を縮こまらせて静かに浮いておくことです。


⑦できるだけ集団を作る

遭難者は単独ではなく極力集団を作るようにしてください。大きな塊になればなるほど目立ち、捜索しやすくなります。いくら救命胴衣が目立つ色をしていても、海の上では単なる点でしかありません。波が高ければ波に隠れて見えなくなります。励まし合いながら気力を保つという意味でも集団のほうが有効です。


⑧船の一部が浮いていれば船に近づく

船体が完全に水没せず、一部でも浮かんでいれば船のそばで救助を待つべきです。船体は人間より遥かに目立ちます。より発見される確率が高くなります。また、浮かんでいる船体の上に上がれるなら上がって救助を待ちます。体を水に浸けないことが低体温症のリスクを軽減します。


以上、何点か項目を挙げましたが、まず第一に体を冷やさず体力の温存に努めることが最も重要です。


ただ、元も子もない話ですが、今回の知床海難事故のように極端に水温が低く、水中から体を上げる術がない場合、助かる見込みはほぼありません。


救命胴衣をきちんと着装していて浮力が担保されていても、低体温症になってしまえばおしまいです。ニュースやワイドショー等で報道されている通り、水温が2〜3℃ですとよくて一時間ぐらいしか持ちません。


水は空気の20倍以上熱を奪いやすいのです。例えば、20℃の気温は裸でもしばらく我慢できますが、水温20℃のプールはかなり冷たく感じます。それだけ急速に体温を奪われているということです。


ですから、できるだけ体を水に浸けないようにしなければなりません。乗船していた船に膨張式救命いかだや救命艇が搭載されていれば、一刻も早くそれに乗り込むべきです。


また、陸地は近くに見えても案外離れていることが多いです。波や潮流でどんどん流されますから、思ってるより長時間泳ぐことになります。さらに、岸付近は離岸流といって、岸にぶつかった波が反転して沖へ向かっていく潮流が発生していることがあります。これにハマると泳いでも泳いでも岸に近付けず、むしろ離れるばかりになってしまいます。(海水浴の事故で多いパターン)


山で遭難した際もよく言われるように、その場から動かず体力の温存に務める、が一番かと思います。


後日、船に搭載されている救命具を紹介します。