記事入力 : 2014/10/29 08:08
【社説】「空白の7時間」騒動を生んだ大統領府の責任

 韓国大統領府(青瓦台)は27日、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が旅客船「セウォル号」沈没事故当日の4月16日に、事故発生の一報を受けた午前10時ごろから中央災害対策本部を訪れた午後5時ごろまでの7時間に7回にわたり事故に関する指示を出していたことを明らかにした。大統領府が同日、国会の国政監査を前に与党セヌリ党の金在原(キム・ジェウォン)議員に提出した資料で公開した。金議員は「およそ30分単位で報告を受け、1時間に1回以上は直接指示を下していた」と述べた。大統領府は今年8月、朴大統領が事故当日に21回報告を受けたことを公表し、その時刻と内容を分単位で説明したが、指示の内容を公開したのは今回が初めてだ。
 大統領府が公開した朴大統領の「指示内容」は、徹底した捜索と救助の要請や、状況を尋ねて確認するといったものだ。これまで朴大統領の「7時間」の動静を説明するよう要求してきた野党議員らは、大統領のこれらの指示が適切だったのかをめぐり、またも長時間の攻撃を繰り広げた。朴大統領が最初に報告を受けたときは、すでに大統領が状況を変えられるタイミングを過ぎていた。国会はこのような本質から外れたささいな内容をめぐって6カ月も騒ぎ続けているのだ。
 これまで韓国社会でも「朴大統領の7時間」をめぐり、数々の憶測やうわさ、口にするのもはばかられるようなデマが飛び交った。インターネットでは朴大統領の人格を攻撃するおびただしい量の書き込みが出回り、これが国政に影響を与えるレベルに達しているとの指摘も出た。朴大統領が先月、自ら「大統領への冒涜(ぼうとく)が度を過ぎている」と述べ、検察がこの発言を受けてソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)を監視する方針を打ち出したのも、国政への影響という部分に起因している可能性が高い。
 本来であれば取るに足らないささいな問題を、ここまで大きくした責任は大統領府にある。7月の国会で「事故当日、朴大統領はどこにいたのか」と野党議員が質問した際、金淇春(キム・ギチュン)秘書室長が「分からない」と答弁したことからこの騒動が始まった。金室長は「大統領は大統領府にいた」というおかしな言葉も飛び出した。大統領府側はその後、朴大統領が執務室と官邸におり、SPと秘書官が終日随行していたと説明したが、そのときには事態はすでに複雑化していた。
 歴代の大統領が、ある特定の時刻に大統領府内のどの場所にいたのかを追及されたケースは過去に一度もない。金室長も恐らくそう思っていたはずだ。金室長は「分からない」と述べたことについて「正確な場所を申し上げるのは難しいという意味だった」と釈明した。だがセウォル号事故の渦中に、大統領秘書室長が自分の発した「分からない」という一言によってどれだけ騒動が大きくなるのかを見通す能力がないのであれば、これは深刻なことだ。大統領府は大統領の当日の指示を今ごろになって公開した。大統領の指示内容が形式的なレベルだということを気にしてこれまで公開しなかったのかは定かではないが、こうしたおかしな対応がつまらぬ疑念を生み、最終的に大きな被害をもたらすという事実に大統領府は依然として気付いていないようだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版