記事入力 : 2014/10/13 11:21
【コラム】産経前支局長起訴、問題をすり替える日本
国家元首に対する日本の態度はダブルスタンダード

 朴槿恵(パク・クンヘ)大統領に対する名誉毀損(きそん)の罪で在宅起訴された産経新聞の加藤達也前ソウル支局長は最近、日本で言論の自由のために争う闘士として注目を集めている。加藤前支局長は産経に掲載された手記で「検事は私が記事で用いた『混迷』『不穏』『レームダック化』などの言葉を取り上げ、その使い方から誹謗(ひぼう)の意図を導き出そうと必死だった」と書いた。
 加藤前支局長は「訴訟を乱発する朴政権に、韓国国内では既に萎縮、迎合しているかのような報道も見られる」とした上で「朴政権はいったいいつまで、メディアへの弾圧的な姿勢を続けるのだろうか」と問い掛けた。
 加藤前支局長はインタビューや衛星中継されたテレビの生放送で「大統領は公人であり、十分に公益性がある記事だった」という趣旨の発言も行った。産経は加藤前支局長が起訴されたことについて「日本メディアに対する弾圧」だとした上で「言論の自由のために戦うという社是に基づき最後まで報道する」と主張した。
 加藤前支局長は本当に言論弾圧の犠牲になったのだろうか。加藤前支局長が起訴されたのは朴大統領に対する批判のせいではない。口にするのも恥ずかしい男女関係の疑惑を指摘したからだ。韓国政府は記事を装った女性大統領に対するセクハラだと判断し、記事の取り消しと謝罪を要求した。しかし、産経は「大統領批判に対する不当な干渉だ」として、かえって高圧的な態度を見せた。検察の取り調べで疑惑は事実無根であることが分かったが、産経は謝罪どころか、紙面で「韓国は言論弾圧国」だとの主張を毎日繰り返している。
 外国特派員に対する長期間の出国禁止と起訴は残念なことだが、産経のこうした報道は大統領だけでなく、韓国国民をも侮辱したものだ。朝日新聞は今年8月、32年前に報じた従軍慰安婦関連のインタビューについて、裏付けとなる証拠がないとして関連記事を取り消した。それを「誤報に対する本当の謝罪がない」と批判したメディアこそ産経だ。
 韓国を言論弾圧国だと主張する産経は、日王(天皇)に対する批判は全く認められないとの立場だ。2012年に李明博(イ・ミョンバク)大統領(当時)がある講演で植民地支配に対する日王の謝罪を要求する発言を行うと、産経は「日本国民の感情を踏みにじる暴言だ」「韓日関係を傷つける無責任な発言だ」と非難した。
 産経だけに裏表があるのではない。ある野党議員が、嫌韓デモを主導する在日特権を許さない市民の会(在特会)の幹部と写真撮影を行った女性閣僚に対し「(在特会関係者と)懇ろだっただろ」とやじを飛ばすと、安倍晋三首相は「聞くに堪えない侮辱的で下品なやじだ」と激怒。菅義偉官房長官は「女性の品格を傷つける誹謗中傷だ」と野党議員を批判した。
 その菅官房長官は加藤前支局長の起訴について「民主国家ではあるまじき行為だ」と韓国を批判した。日本政府までセクハラという事件の本質を言論の自由の問題にすり替えている。万一韓国のメディアが日本の国家元首に対し根拠のない侮辱的な記事を掲載し、言論の自由だと主張するのならば、日本の政府と国民は納得できるだろうか。

東京= 車学峰(チャ・ハクポン)特派員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版