少し熱があるというので様子を見に。
今日は母はほとんど眠ってた。
しばらくの間、少し話して。
でももう僕のことは分からず、
子供がいることは覚えてないと。
「そうかぁ覚えてないかぁ」と笑ってみると、
可笑しそうに
一緒に笑って。
それでも今は充分。
眠ってる姿を見ていたら
なんとなく手の写真を撮りたくなって。
手が似てる
とても綺麗にしていただいてる手。
この手はどれだけの事をしてきたんだろう。
通信兵として戦争に赴いた小学六年生のある日に終戦となり、
訳が分からず自宅に帰ってドアノブを開けた手。
ピアノを弾き、大好きな音楽の譜面をめくり、
好きな文を書き、たくさんの人と笑い
若き父と手を繋いだ手。
僕も小さい時にはこの手に抱かれ、たくさん世話になったんだなぁ。
意外だったのは、今89歳になった母の手はとても若々しい。
この手を見ると、
まだまだ当分元気にいられそうで。