高齢者への虐待、身体拘束についてうるさく言われている昨今ですが、過去にどうも納得がいかない事象があったので紹介する。

ある認知症の女性利用者が入浴していた時のこと。その人はお風呂が好きで、どちらかと言うと長湯をする人だった。

ある日、いつものように入浴していたその方はいつもよりも長湯をしていた。顔面が紅潮していた為、職員がそろそろお風呂から出るように促しをしたのだが、まだ出たくないようで、しばらく本人と職員の間で押し問答があったようだ。

自発的に出ることを拒み続けた為に、職員はどうしようもなく、私にどうすれば良いかの助けを求めてきた。
すぐさまお風呂場に行くと、顔面紅潮、頭はボーっとして、受け応えもうつろな様子。
「完全にのぼせてるやん…」そう思った私はすぐに本人にやんわりとお風呂を出るよう促したが拒否気味。このままではいけないと思い、浴槽のお湯を抜き窓を開けた。

なんとか浴槽から出てもらい、すぐに元の状態に戻ったが、問題はこの後である。

このことを知った当時の私の上司が、状況説明を求めてきた。私は事の一部始終を説明すると、
なんと、「お湯を抜くことは虐待だ!」と言うのだ。
はぁ?どこが?そう思った私は、なぜ虐待に当たるのかの説明を求めたが、ちんぷんかんぷんな説明で全く内容が入ってこない。

まぁこの上司、現場の経験がない人なので、適当にスルーしたが、どうしても納得がいかなかった私は、後日認知症の専門医である主治医に見解をうかがった。

答えはもちろん、虐待には当たらないとのこと。
むしろ、生命の危険を回避する為に当然の行為だと。そりゃそやわな、って話しです。

こんな現場を知らない人が、認知症ケアについて色んな場所で講義をしているようだ。

虐待はしてはいけない、身体拘束はしてはいけない。そんなこと当たり前の話しだが、頭でっかちの理屈人間は、国の施策や方向性を真正面から受けすぎ、信念も理念もないまま(当事者はあると思っているが)、現場の感覚と乖離したことをのうのうと我が物顔でひけらかしているのです。

「虐待は人の尊厳を損ねる卑劣な行為だ!その人の立場になり、どうやってその人らしい余生を過ごして頂けるか、それを考え支援するのが我々専門職の仕事だ。パーソンセンタードケア、その人を中心にしたケアを実践し、尊厳ある生活を支援する」

どの口が言うとんねん!そんなことどこの教科書にもバイブル本にも書いてあるわ!って話しです。

確かに基本は大切です。初任者には理想を持ってもらうことも必要でしょう。
実際に新しく職員を雇用した時には虐待、身体拘束の研修を行うことが指導されています。

でも講義などで伝える側は、基本事項に加え、虐待とグレーゾーンの境界あたりの解釈を、考えてもらうような取り組みが必要だと思います。
ただ教科書に書いてあるようなことを声高に宣言されても、読めばわかる!て話しになりますからね。そのグレーゾーンを伝えるためには、やっぱり実践、実績がないと響きませんよね。

みなさんいかがですか?