人の3倍努力したら、何が起こるのか?
大学受験の5日前、私は病院のベッドの上で絶望の思いでいた。医者から勉強しすぎのノイローゼと診断された。全身痙攣の発作が起こり病院に担ぎ込まれた翌日のことだった。ドクターストップがかかり受験を断念せざるをえない状況だった。
しかし、私は諦めきれず受験前日に退院してこっそり受験会場に向かった。
第一志望の大学ではなかった。しかし、奇跡的に合格した。浪人して第一志望の大学に行きたいと思ったが、こんな経緯で合格して考えてしまった。結局、その大学に進んだ。そんな大学でも留年して親に経済的な負担をかけてしまった。本当に不肖の息子だと思う。
大学を卒業して就職しても、社長とそりが合わず転職をくりかえす息子を父はどう思っていたのだろう。私は人生を打開したく、ある交換教師プログラムの試験を受けてアメリカの中学校で教師をするチャンスを得た。「このチャンスを逃したら人生が終わる」と思い、アメリカで必死に英語の勉強をした。
帰国して、英検1級に合格して自分の塾を開業した。バブルの時期だったので順風満帆だった。結婚して娘が生まれ、この世の春だった。しかし、仕事に打ち込んでいたら妻が「私と仕事とどちらが大切なのよ!」と家を出ていってしまった。また、親の助けを借りて娘たちを養育せざるをえなかった。本当に不肖の息子だと思う。
三重県一の進学校に進んだ時に、自分の才能の無さを思い知らされることになった。どんなに頑張っても自分の上に何十人に成績が良い子たちがいた。でも、人生を諦めるわけにはいかない。「人の三倍やれば、あの子たちに追いつけるかもしれない」と信じた。
それで、英検1級に合格した時は他にも通訳ガイドの国家試験、国連英検A級、ビジネス英検A級、観光英検1級も受けて合格した。その後も、数学講師に転身するためオリジナルだけ2周すればいいものを、1対1、チェック&リピート、赤本もそれぞれ2周した。センター試験を10回、京大二次試験を7回受けた。Z会は8年、京大模試は10回受けた。
それくらいやらないと、優秀な生徒の指導ができなかった。私は凡人なのだ。
孫が生まれた。ふり返ると、人生の一大事と思った受験も結婚も大したことはない。人間は一人で生まれ、一人で死んでいく。凡人だから亡くなっても誰も気づかない。1年もすれば忘れ去られる。生まれた。生きた。死んだ。それだけのものだ。
今日の朝ごはん、味噌汁、ごはん、玉子焼きが美味しかったらそれでいい。