株式会社経世論研究所 講演・執筆依頼等、お仕事のご依頼はこちらから
三橋貴明のツイッターはこちら
人気ブログランキングに参加しています。
チャンネルAJER
 
令和の政策ピボットの賛同者数が2万人を突破いたしました。
また、メルマガ「令和ピボットニュース」が始まりました。皆様、是非とも、メルマガ登録を!
 
今期は二回目の試みとして、全国各地で開催します。一月は東京で、ゲスト講師は竹村公太郎先生。二月は京都で、ゲスト講師は藤井聡先生、五月は東京で中野剛志先生、十一月は福岡で施光恒先生です。
 
三橋TV第180回【日本の正しい建国史を将来に繋いでいくために】
 
 藤井聡先生が、「新」経世済民新聞のコラム、
「【藤井聡】なぜ、安倍晋三氏は憲政史上最長総理となったのか?~安倍晋三「器」論から考える空虚な結論~」
 で、「政策」と「政治」の違いについて解説して下さいました。
 
●政“策”的原理:政治を通して公益を拡大することを目的とする
●政“治”的原理:政治権力を維持し続けることを自己目的とする
 
 安倍政権は、特に「政治的原理」が強い、というより「政治的原理」しかない政権でした(まだ続いているけど)。
 つまりは、権力維持が目的という話ですが、統計に関する向き合い方に、それが如実に出ている。

 例えば、「悪い指標」という結果が出たとします。「国民を豊かにする」という政策的原理が働く政権であれば、むしろ「悪い指標」こそ率先して発表するはずです。その上で、
「○○という結果が出たが、原因は▲▲であるため、◇□という対策を打ち、×☆までに改善します」
 と、やるわけです。

 実は、企業のコンサルも同じでして、最初に財務諸表の分析から始めるのは、良い点、悪い点を含む「状況」を把握するためです。指標やデータは、むしろ「悪い点」を正確に見つけ出し、改善する上で有用とも言えます。何しろ、「悪い点」が見えないのでは、改善の機会は訪れません。

 ところが、安倍政権の場合は結果が出なかったことを受け、統計の定義変更、サンプル変更で「良く見せる」ことで権力維持を図る。各種の統計詐欺には、政治的原理以外に目的は何もない。

 個人的に「典型的」と思ったのは、昨年2月、通常国会で共産党の志位委員長が、14年4月消費増税後、消費が減っていることを指摘したのに対し、安倍総理が、
「国内総生産(GDP)ベースでみた消費基調は持ち直している」
 と、答弁。志位委員長が、GDPの「民間最終消費支出」には、実際には支払われていない帰属家賃が含まれていることを指摘し、
「これは実際の消費がされていない、まったく架空の消費だ。これを除くと3兆円減っているのが事実だ。帰属家賃を相変わらず含めたフェイク答弁だ」
 と突っ込んだシーンです。それに対し、総理は反論できませんでしたが、理由はもちろん志位委員長の指摘が「事実」であるためです。

 総理が本気で「国民を豊かにする政策」を政治の目的としているならば、自ら、
「架空支出である帰属家賃を除くとGDPベースでも確かに消費が3兆円減っている。よって、○○を推進します」
 と、消費税減税、デフレ脱却の政策の議論を始めなければならないはずなのです。とはいえ、安倍政権の目的は政策実現ではなく政治的権力維持であるため、ひたすら誤魔かす。国民の統計に関する無知に付け込もうとする

 社会資本整備総合交付金(特別会計)を公共事業の一般会計に突っ込み
「公共事業を増やしている」
 と、強弁し、賃金統計のサンプルを変更し、「サンプル変更前」と「変更後」を比較して、賃金水準の上昇をアピールし、14年3月に景気動向指数が「景気の山」をつけたにも関わらず、14年4月以降の落ち込みを封印し、「いざなぎ超えの好景気」と自画自賛し、そしてGDPの基準を変更し、約30兆円GDPを「増やした」にも関わらず、目標値の600兆円は据え置き

 改めて羅列すると、「腐っている」以外に感想がありません。
 
【歴史音声コンテンツ 経世史論】
http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/
※2月15日まで、竹村公太郎先生の「日本文明の誕生~神話から歴史へ~」がご視聴頂けます。
 
『アベノミクス指標に“仕掛け” GDP算出方法変更、不都合な試算拒む
 安倍晋三首相は「経済最優先」を掲げることで底堅い支持を集めてきた。政権が発足した2012年12月からの景気回復は「戦後最長に及んだ可能性が高い」(内閣府)とされ、国内総生産(GDP)の伸びもその「成果」に数えられる。ただ、アピールに使われる数字の裏側に目を凝らせば、数字を大きく見せる“仕掛け”も見え隠れする。アベノミクスの成果は本物なのか-。
 「名目GDPが1割以上成長し、過去最高となった」。首相はアベノミクスの成果をこう強調する。
 経済の成長や景気を表すGDP。首相は15年、景気実感に近いとされる名目値を20年ごろに600兆円に引き上げる目標を掲げ、達成可能と明言した。
 15年度当時の名目GDPは500兆円程度にとどまっていたが、その後に数値が急伸。直近の19年7~9月期は559兆円に達している。
 ただ、この伸びは額面通りには受け取れない。うち30兆円程度は16年12月に算出方法を変えた影響によるものだからだ。国際基準に合わせたり、基準年を05年から11年に変えたりした結果、企業の研究開発費などが加わって全体を押し上げた。実際、新基準の15年度は532兆円となった。
 内閣府はこうした経緯を公表しており「基準変更は国際基準に合わせる目的で、数字を押し上げる意図はない」と説明するが、政府目標は「600兆円」のままだ。実績の“かさ上げ”で目標が達成しやすくなっており、エコノミストからは「目標を上方修正すべきだ」といった批判の声も相次ぐ。(後略)』
 
 安倍政権の統計詐欺については、西日本新聞が良い記事を書きます。サンプル変更による賃金統計の詐欺を最初に報じたのも、確か西日本新聞。

 西日本新聞の記事の通り、安倍政権はGDP統計基準を93SNAから08SNAに変更しました。変更自体は、別に国際基準に合わせただけだから、構いません。

 ところが、信じがたいことに安倍政権は基準変更でGDPが約30兆円(厳密には14年度に28.6兆円)増加したにも関わらず、GDP目標値600兆円は据え置いたままなのです。
 頭おかしいでしょ?

 ちなみに、両SNAの乖離(28.6兆円)が15年度以降も続いたと仮定した、日本のGDPの試算は以下。
 
【日本の名目GDPの推移、2008SNAと1993SNA(十億円)】

http://mtdata.jp/data_67.html#2GDP
※2015年度以降の1993SNAの数値は、14年度の乖離(28.6兆円)が継続したケースの試算値
 
 恐ろしい話ですが、93SNAで見ると、2018年度のGDP(519.8兆円)は、未だに我が国のデフレ元年「1997年度」の数値(521.3兆円)に届いていません
 名目GDPが21年前を下回るという、驚愕すべき状況なのです。

 政権が「政策」に真摯であるならば、
「21年前のGDPを下回っている。デフレ脱却のために○○」
 と、やらなければならないのですが、実際には統計基準を変更し、目標値(600兆円)に近づけ、「成果」として誇っているわけです。

 西日本新聞の記事は、以下の「政府関係者」の自嘲の語りで締められています。
「アベノミクスの肝は数字をどう見せるか。この繰り返しだ」
 まさにその通りとしか言いようがありません。

 そして、我々国民が経済関連の統計、データについて正しい知識を持たない限り、安倍政権が終わったとしても、統計詐欺に騙され続けることになるでしょう。
 いい加減にしましょう。騙されないためには、正しい知識を身に着ける。他に方法はないのです。
 
「正しい知識を身に着け、政治を正常化しよう!」に、ご賛同下さる方は、
↓このリンクをクリックを!
本ブログへのリンクは以下のバナーをお使いください。