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『消された景気後退①』三橋貴明 AJER2019.2.19
https://youtu.be/TDwjw0xpMmw
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衆議院議員あんどう裕・第一回日本の未来を考えるセミナー
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2019年3月9日(土) 15:00-
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三橋TV第54回【三橋貴明の言論活動の原点】
https://youtu.be/1V8C_S-q7X0
マレーシアにいます。今夜の便で帰国いたします。
さて、元・日銀副総裁の岩田規久男教授。大変、立派なインタビュー記事をロイターに載せていらっしゃいましたので、ご紹介。
何が立派かというと、過去の自説を「正しく変更」されたこと。
ちなみに、わたくしは過去のリフレ派なり、構造改革派なり、緊縮派なりが過去の自説を「正しく変更」された際には、素直に評価します。
「あの時、何言っていたんだ! 間違えていたことを国民に謝罪しろ!」
などとやっていた日には、普通にグローバリズムに負けます。グローバリズムは、国民を分断し、争わせることで自己利益最大化を図るのです。
これは、帝国主義時代の欧米諸国からの伝統です。
ついでに書いておくと、過去に間違っており、正しいことを言い始めた人に、
「お前、前に何言っていたんじゃ、こらっ! 謝罪しろや!」
などとやっていると、正しく転向したい人も二の足を踏んでしまいますよ。
まとも(経世済民という意味で)に転向なされた方は、ただ正しいことを言ってくれればそれでいいです。岩田教授が日銀副総裁時代に下記のような発言をなされなかったことを今更責め立て、謝罪の言葉を引き出したところで、日本の現実は変わりませんよ。
『インタビュー:脱デフレへ財政・金融協調を、増税撤回は不可欠=岩田前日銀副総裁
https://jp.reuters.com/article/interview-boj-iwata-idJPKCN1Q70B3
岩田規久男・前日銀副総裁は、ロイターとのインタビューに応じ、デフレ脱却には、10月に予定されている消費税率引き上げを撤回するとともに、国債発行を財源として若い世代に所得分配する財政拡大が不可欠と訴えた。財政と金融の協調によって財政資金を日銀がファイナンスし、お金が民間に流れ続けることをコミットすることで、デフレマインドの払拭が可能になると語った。インタビューは15日に行った。 (後略)』
長いインタビューなので、岩田教授の発言のポイントをご紹介。
岩田教授は、日本のデフレ脱却のためには低迷を続ける「個人消費」がポイントになるとして、10月に予定されている消費税増税については、
「とんでもない」
と、撤回を求め、増税すると同時に教育無償化をしたところで、
「増税したお金を戻すに過ぎない。若い世代の可処分所得を増やすには、増税ではなく、成長と再分配政策を組み合わせることが不可欠だ」
と、主張されました。
さらには、
「日銀の金融超緩和政策だけではインフレ予想を上げることができず、2%の物価安定目標の達成に失敗する可能性が極めて高い」
「財政と金融が一致協力して、お金を民間に流すことを真剣に考えるべき」
と強調されましたので、過去の自説(コミットメント理論)を完全に撤回されたことになります。
過去の岩田教授の理論については、ここで詳しく解説していますので、ご興味がある方はどうぞ。
【三橋TV第49回【デフレは貨幣現象ではありません】 】
さらには、「資金需要」が乏しい状況では、通常の銀行貸し出しのみではデフレ脱却に十分なマネーストック増加はなく、
「若い世代の実質的な所得を増やすには、国債を発行して、その国債を買った銀行から日銀が国債を買い、お金を彼らに流すしかない。増税ではないので民間からお金が吸い上げられず、必ず民間に流れていく」
と、これまた実に正しいことを主張。
また、昨日のわたくしのエントリーにもある、「日銀の量的緩和の抑制」についても触れ、日銀がMBを増やしていないにも関わらず、金利が「超」低迷していることを受け、
「予想インフレ率が低いからだ」
と説明。それはまあ、銀行が「将来もインフレにはならない」と予想している以上、金利は上がりません。つまりは、日本は未だにデフレなのです。
「14年度の消費増税の結果は、マンデル・フレミング・モデルが通用しなかったことを示している」
「金融政策と財政政策とが協力して財政資金を回すという本来のリフレ派の考え方に沿って、マネーストックを増やすべき時だ」
「今の政策はすでに財政ファイナンス。これ以外にデフレから脱却できる方法はない」
「ハイパーインフレになる心配は、まったくない」
「これ以上、金利を下げたら銀行がバタバタとつぶれてしまう」
「日銀だけが一生懸命やっているが、財政は逆噴射しているのが実情であり、今は日銀の金融超緩和政策と積極財政の協調が不可欠」
はい、全てその通りでございます。
ちなみに、マンデルフレミングモデルとは、2013年の時点からわたくし共が批判を繰り返していましたが、国債発行が金利を引き上げ、円高になり、輸出が減るため、財政出動によるGDP増加分を相殺してしまうという、新古典派経済学の「机上の理論」です。
国債発行が金利を引き上げ、民間投資が減るという「クラウディングアウト理論」と裏表になっているわけですが、MFだろうがクラウディングアウトだろうが、デフレで資金需要が乏しい時期には成立しないと、わたくし共が主張し、当時は散々に批判されたわけですが(経済学の教科書を読め、とか(爆笑www))、どちらが正しかったのか、もはや誰の目にも明らかでしょ。
ところで、別に岩田教授の正しい転向にケチをつけたいわけではないですが、重要な点を指摘しておきたいと思います。
それは、MB(マネタリーベース)はもちろん、MS(マネーストック)の増加ですら、GDP(需要)拡大に結び付くとは限らない、という点です。
【日本のマネタリーベースとマネーストック(左軸、億円)と貨幣乗数(右軸、倍)】
http://mtdata.jp/data_62.html#kaheijousuu
上記の通り、MBを増やす量的緩和は、MSを十分には増やさず、貨幣乗数が2倍という歴史的な低水準に落ち込んでしまっています。
とはいえ、マネーストックが「増えた」のは確かなのです。金額でいえば、13年3月から19年1月まで約383兆円増えています。
それでも、需要は拡大していない。
理由は簡単で、民間の銀行からの借入や、政府の国債発行は、間違いなく「MS」を増やしますが、需要=GDPになるとは限らない、ためです。
政府が国債発行で資金調達し、例えば一人10万円の給付金として国民に配ったとします(借り入れた日銀当座預金は、そのままでは支出できませんが、本日は細かいおカネの動きは省略)。
10万円の銀行振り込みを受けた国民が、
● そのまま預金し、消費に回さなかった
場合は、GDP拡大効果は限定になります。
商品券でもダメです。10万円の商品券を配り、
● 国民が商品券を全て消費に使ったが、その分、稼ぐ所得が浮いたので、10万円の預金を増やした(厳密には所得を使わなかった)
ケースでも、GDP拡大は限定的です。
要は、財政ファイナンスで政府が資金を調達するのはいいとして、確実に「需要」になるように支出しなければならない、という話です。
別に、公共事業だけやれとは言いません。防災インフラ、交通インフラの建設はもちろん、医療・介護サービスの充実、防衛費増強、科学技術投資の拡大、教育サービスの充実、食料安全保障強化など、「仕事」が生まれる形で政府が支出をすれば、その分、確実にGDPが増えます。(さらには、仕事の所得が増えた人が消費を増やし、乗数効果が発生)
加えて、日本国民が「仕事」をすることで、散々に破壊された供給能力(経済学用語でいう「潜在GDP」)を高め、日本の経済力を強化することが可能になるのです。
経済力とは、おカネの量ではありません。モノやサービスを生産する力(供給能力)の合計こそが、国家の経済力なのです。
公共投資を拡大したところで、土木・建設の供給能力が毀損し、人手不足が深刻化するだけだ。供給制約ガーッ、って、アホか! 供給能力が散々に傷んだからこそ、政府は「仕事」を安定的に増やしていき、中長期的な供給能力の拡大を目指さなければならないのです。
まあ、細かい話は色々とありますが、とりあえずわたくしは「コミットメント理論」「MFモデル」を否定し、「財政ファイナンス」「積極財政」「消費増税の撤回」を主張され、正しく転向された岩田教授を評価します。
ちなみに、MSや貨幣乗数といったややこしい話は、いまいちブログ向きではないので、主に「メルマガ 週刊三橋」
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