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『緊縮財政派と規制緩和派の不毛な争い①』三橋貴明 AJER2019.1.22                     

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村田雅志のトークルーム

財務省が日本を亡ぼす~統計の嘘の本質を探る~

2019年1月29日 20:00~21:00

講師:村田 雅志氏(元外資系・通貨ストラテジスト/個人投資家、CFA)

ゲスト:三橋 貴明氏(経世論研究所 所長)

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三橋TV第45回 【日本経済に明るい4つのニュース】

https://youtu.be/7GK9EeW-M_c



 元日銀副総裁の岩田規久男氏、あるいは浜田 宏一氏ら、いわゆるリフレ派の「罪」は、2012年末から2013年にかけ、
「デフレは貨幣現象」
 なる、抽象的で、かつ妙な思い込み(=おカネを発行すればデフレ脱却できる)を想起させるレトリックを、総理の頭の中にインプットしてしまったことです。


 結果的に、安倍総理が2013年2月国会で、
「デフレは貨幣現象でございますから」
 と、答弁するに至り、わたくしはその光景をテレビで見ていて、「あ~あ・・・」と思ったわけです


 竹中平蔵氏は、別にデフレ脱却は望んでいないでしょう。だからこそ、講演などで、
「デフレの原因は人口減少でも需給ギャップ(=デフレギャップ)でもなく、マネーの量が少ないということ」
 と、発言を繰り返し、いわゆるリフレ派の「デフレ=おカネが足りない」理論を後押ししました。

 彼らの言う「貨幣」や「マネー」が何を意味するのか、今でも分かりません。硬貨なのか、現金紙幣なのか、日銀当座預金なのか、銀行預金なのか、M3なのか、あるいは「支出として使われるおカネ」なのか。


 最後の定義が「貨幣あるいはマネーだ」というならば、デフレとは消費、投資としての支出の不足、つまりは「総需要の不足」ということで、我々と言っていることが変わらないという話になります。


 何度か書いていますが、わたくしは2012年に岩田教授から直接、
「デフレはマネタリーベース(硬貨、現金紙幣、日銀当座預金の合計)を増やせば解消できます」
 と、言われ、聞き違いかと思い、
「マネタリーベースですか? マネーストックではなく?」
 と確認したところ、
「マネタリーベースです」
 と、断言された経験を持ちます。

 というわけで、岩田教授が日銀副総裁に就任し、インフレ目標、期待インフレ率、コミットメントによる量的緩和政策が始まりました。


 結果は・・・・・。


    


【日本のマネタリーベースとインフレ率の推移】

http://mtdata.jp/data_62.html#MBCPI


 黒田東彦元財務官が日銀総裁に就任して以降、すでに日銀は370兆円(!)ものマネタリーベースを拡大したにも関わらず、インフレ率はコアコアで+0.1%。

 370兆円も「貨幣(ほぼ日銀当座預金)」を増やしたにも関わらず、インフレ率はほぼゼロ。デフレは貨幣現象派の皆さま、いかなる感想をお持ちでしょうか。


 もっとも、日銀が国債を買い取り、日銀当座預金を増やす反対側で、政府が緊縮財政で消費、投資を縮小する政策を採った以上、当たり前です。


 そもそも、どれだけおカネを発行したところで、モノやサービスが買われない限り、インフレになるはずがありません。日銀が買っているのは国債であり、モノでもサービスでもありません。

 銀行の日銀当座預金残高が増えたところで、民間の借り手に「需要」がなく、おカネを借りる気がない。さらに、政府が緊縮財政を強行するわけですから、デフレ脱却を果たせるはずがありません。


 と、六年前から主張していたわけですが、当時は散々に叩かれましたが、さて、誰が正しかったのか、それすら理解できないほどに頭が悪い人は、さすがにいませんよね。


『黒田総裁にいよいよ試練…「願望」すら示せなくなった日銀の行き先
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59591
◇日銀への正常化期待は雲散霧消
 1月22~23日の金融政策決定会合で、日銀は現行の長短金利操作付き量的・質的緩和の枠組みを継続することを7対2の賛成多数で決定した(片岡・原田両審議委員が反対)。
 「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」は予測期間全般にわたって、消費者物価指数(除く生鮮食品、消費税率引き上げ・教育無償化の影響、以下単にコアCPI)の見通しが引き下げられており、2019年度については遂に1%を割り込んだ。
 展望レポートでは「リスクバランスをみると、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きい」とはっきりリスクバランスの下方シフトが強調されている。この点、まだリスクバランスの均衡を主張しているFRBやECBとの大きな違いとも言える。
 こうした展望レポートと平仄が合うように、黒田日銀総裁は決定会合後の記者会見で「リスクが高まってきている。十分注意する必要がある」と述べており、昨年来、盛り上がっていた日銀への正常化期待は公式に一蹴されたと考えるべきであろう。
◇「願望」すらできない環境に
 ほぼ無風の結果に終わった今会合だが、展望レポートで示された物価見通しの弱さには着目したい。
 2018~2020年度のコアCPI見通しは前回10月の「+0.9%/+1.4%/+1.5%」から「+0.8%/+0.9%/+1.4%」へと広範に下方修正された。2019年度に見られる▲0.5%ポイントという大幅下方修正はあくまで「原油価格の下落を主因」とした現象というのが展望レポートの解説である。
 だが、より注目すべきは2020年度の物価見通しまで引き下げられた点である。(後略)』


 もはや、誰も数字を信じる人はいないでしょうが、 日銀がインフレ予想を引き下げました。


 政府が緊縮路線を続ける限り、日本のデフレ脱却を「日銀の政策」で実現するなど不可能ごとです。そういう意味で、わたくしは日銀に同情しています。


 本来であれば、日銀は「政府が財政拡大に転じない限り、金融政策のみでデフレ脱却は不可能」と主張するべきなのです。役割からはみ出してしまいますが、大切なのはルールを厳守することではなく、日本をデフレから脱却させ、国民を貧困化から救うことです


 それにしても、岩田教授らの「デフレは貨幣現象」は、見事なまでに財務省に利用されました。何しろ、デフレは「おカネを発行すれば解決する」という貨幣現象なのであれば、政府が緊縮をしようが、日銀が量的緩和をすれば脱却できるという話になってしまうのです。

 もちろん、岩田教授らのロジックはもっと緻密でしたが、政治家や国民の多くが、
「ああ、デフレは日銀がおカネを発行すれば脱却できるのね」
 と、誤解したのは確かです。そして、財務省は政治家や国民の誤解を利用し、デフレ期の消費税増税を初めとする緊縮財政に成功しました


 いやあ、鮮やかなものです。

 問題は、六年間で失敗が明らかになったにも関わらず、しかも安倍政権が「デフレ脱却」を掲げているにも関わらず、相変わらず「緊縮財政を継続する限り、デフレ脱却は果たせない」という声が大きくならない点です。


 これもまた、ポストトゥルースでございますな。


 というわけで、日本国民は「デフレとは消費、投資という総需要の不足である」「おカネを発行するだけではデフレ脱却できない」といった、過去六年の日本の社会実験で証明された真実を理解し、政治に訴えていく必要があるのです。

 今更、「いわゆるリフレ派」に責任を取れとは言いませんよ。取ってもいいけど、どうせ取らないだろうし。


 ならば、せめて「事実」を国民が共有することに貢献するべきです。デフレとは総需要の不足であり、貨幣現象では「なかった」のです。


 そして、「デフレは貨幣現象」という曖昧もしくは嘘のレトリックが、日本国内における緊縮財政を正当化してしまったのです。

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