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『国土経済論(後編)①』三橋貴明 AJER2018.2.27
https://youtu.be/d1Wb6lbcE4I
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 さて、企業の内部留保が相変わらず増え続けています

 日本に相変わらず「経済」を「カネ」で考える人が少なくなく、
「日本にはカネがない!」
 などと、荒唐無稽かつ事実無根なことを信じている国民が多数派なのでしょうが、我が国は世界一の対外純資産国なのです。


 2016年末の対外純資産を見ると、日本が約349兆円で世界一。二位が中国(約210兆円)、三位がドイツ(約209兆円)。そして、世界で最も対外「純負債」が多い国はアメリカで、その額は約947兆円!


 おカネのあるなしで「経済力」が決まるならば、日本が世界最強の経済力で、アメリカが世界最弱になってしまいます。


 そんなはずがないでしょ!!


 経済力とは、おカネの量では決まりません。モノやサービスの生産能力こそが、経済力そのものなのです。


 そして、経済力を向上させるには、「設備投資」「公共投資」「人材投資」「技術投資」という四つの投資を拡大する必要があります


 我が国は世界最大の対外純資産国、すなわち「お金持ち国家」ではあるわけですが、長引くデフレで四投資をひたすら抑制し続けています。このままでは、我が国は「カネはあるけど、経済弱小国」という地位に落ちぶれることでしょう。と言いますか、すでに落ちぶれつつあります。


 投資を増やさない国に、未来はありません。


 さて、日本企業が設備投資を増やさず、人材投資(≒人件費)も抑制し、何をしているかと言えば、もちろん「内部留保」を貯め込んでいっているわけです


内部留保、過去最大の417兆円 賃上げ原資に回るかが持続成長のカギ
http://www.sankei.com/economy/news/180301/ecn1803010051-n1.html
 平成29年10~12月の法人企業統計調査によると、企業の内部留保にあたる利益剰余金が前年同期比11.2%増の417兆円で、四半期ベースで過去最高となった。経済の持続成長に不可欠な個人消費の拡大に向け、政府は内部留保を設備投資や社員の賃上げに振り向けるよう求めている。しかし、内部留保は積み上がる一方で、企業側は慎重姿勢を崩していない。
 経済の成長を押し上げるには、実質国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費の拡大が重要課題で、そのための賃上げは不可欠。ただ、企業の収益がどれだけ労働者に配分されたかを示す「労働分配率」では、10~12月の大企業の分配率は43%台と、低水準を抜け出せていない。労働力不足にもかかわらず、企業側の賃上げ意識は低い。(後略)』


                                        


 内部留保、ではやや抽象的になってしまいますので、より厳密な値として一般企業(非金融法人企業)の「現預金」の額を見てみましょう。


【日本の非金融法人企業の現預金の推移】

http://mtdata.jp/data_59.html#Genyokin


 図の通り、一般企業の現預金は、むしろ第二次安倍政権発足後に膨張を始めました

 野田政権期(2012年)までは200兆円程度で推移していた企業の現預金は、2017年9月末時点で271兆円を突破。


 およそ五年間で、実に52兆円も積みあがったのです。


 つまりは、一年間に平均10兆円強の現預金を貯め込んだのが、過去五年間の日本企業なのです。


 もし、現預金総額が野田政権期と同じ水準で推移していた場合、毎年、10兆円強のおカネが何らかの支出に回ったわけで、我が国の経済成長率は少なくとも各年2%は押し上げられたはずです(実際には、乗数効果があるため、それ以上でしょう)。


 2013年以降、安倍政権が金融政策で円安をもたらし、特に大手輸出企業などを中心に利益率は改善したものの、反対側で緊縮財政を強行したものですから、相変わらずのデフレ


 企業は大々的な設備投資に踏み切ることもなく、人口構造の変化を受け、人手不足は進むものの、需要の「安定的な拡大」を信じることができないため、労働分配率も引き上げない


 企業は汲々と「カネを貯め込む」ことに専念し、預金は積みあがるものの「経済力の強化」は起きていない。これが、日本の現実なのです。


 政府が財政拡大という正しいデフレ対策に乗り出さない限り、我が国は経済力が弱体化し、国民が貧困化すると同時に、企業の現預金が増え続ける形で、資本主義が破壊されていくでしょう。


 経済力はおカネの量ではない。この基本的な認識を国民が理解しない限り、
「カネ、カネ、カネ」
 と、日本政府はカネをケチることを続け、我々は経済弱小国日本を将来世代に引き継ぐことになってしまいます


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