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『グローバル化疲れ(前編)①』三橋貴明 AJER2018.1.23

https://youtu.be/dL7ZulvsKoY
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 問題を正しく認識しているにも関わらず、解決策が「解決の真逆」になる人間には、よくあるパターンと言えます。

 なぜ、まともな解決策を生み出せないのか。もちろん、問題の種類に関わらず、初めから「結論」を決めているためです。いかなる状況であろうとも、結論だけは決して変わらないのです。


 というわけで、「現状」と「決められた結論」の間を結び付けるべく、面白狂気なレトリックが次々に生み出されてきたのは、過去の「財政破綻論」にみられる通り。


 労働問題、実質賃金の問題も同じです。


『日本の賃金、世界に見劣り 国際競争力を左右(賃金再考) 
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25960110R20C18A1MM8000/
 世界の賃上げに日本が取り残されている。大企業の賃上げ率は4年連続で2%を超えるが、主要7カ国で日本だけが2000年の賃金水準を下回る。多くの人が賃上げの実感に乏しく、このままではデフレ脱却の足取りも弱くなる。年功序列や終身雇用など「日本株式会社」の慣行にとらわれない賃金のあり方が求められている。
 ロボットが接客し、荷物の搬送や清掃も担う――。エイチ・アイ・エス(HIS)がグループで展開する「変なホテル」は、同規模のホテルの4分の1にあたる7人で運営する。「世界的に低い生産性を高める」(沢田秀雄会長兼社長)ことで、類似施設の2倍以上の利益率が可能となった。
 人手不足が続くなか、省人化投資による生産性向上の取り組みが相次いでいる。経済学のセオリーでは、従業員一人ひとりの生産性が上がれば、企業の収益力が高まり、対価としての賃金も上がる。だが、この生産性と賃上げの関係に異変が生じている。
 日銀によると、この5年で日本の労働生産性は9%伸びた一方で、物価変動の影響を除いた実質賃金の上昇率は2%にとどまる。
 世界を見渡すと、日本の賃金が取り残されている。経済協力開発機構(OECD)の調べでは物価の影響を除いた実質賃金(各国通貨ベース)は日、米、独など主要7カ国のうち、日本だけが00年よりも低い水準だ。過去20年、デフレが続くなか、多くの日本企業が「人件費が増えると国際競争力が落ちる」(素材大手首脳)と考え、賃上げを渋ってきた。(後略)』


  
               

 日本企業の賃金が、世界各国と比べて上がっていない。


 ホワイトカラーの賃金水準は、すでに中国東南アジアに追い抜かれている有様です。工場のワーカーにしても、もはやタイやインドネシアで起業するよりも、山陰地方に工場を建設した方が単位労働コストは下がるでしょう


 それほどまでに、過去二十年間、日本国民は相対的に貧乏になってしまったのです。


 記事にもある通り、実質賃金が2000年を下まわっているおバカな国など、先進七か国(もはや日本を「先進国」と呼んでいいのかどうか、疑問ですが)の中で、日本だけです。


 実質賃金の下落について、日経は「国際競争力」だ何だと説明をしていますが、マクロ的に実質賃金は生産性向上と労働分配率上昇によってしか上がりません。


● 実質賃金 = 労働生産性 x 労働分配率



 過去五年間、日本の労働生産性は9%伸びています。労働分配率が一定と仮定すると、実質賃金も9%上昇しなければなりません。


 ところが、企業の労働分配率が下がっているため、実質賃金は低迷。相変わらずの貧困化が続いています。


 ポイントは二つ。


 そもそも、五年間で9%の労働生産性上昇という数字自体が、惨めなほど低い
 さらに、企業が労働分配率を引き上げないのはなぜなのか


 要するに、政府の財政出動です。デフレ下で唯一、主導的にリスクをとることができる政府が「長期安定の需要」を財政出動によりコミットメント(この言葉も陳腐化しましたが)するのです。


 そうすることで、企業は安心して労働分配率を引き上げ、「人手不足」の解消として正規雇用を「高い給与」で雇用し始めます。また、政府の需要創出で名目GDPが増えれば、当然ながら労働生産性も高まります。


 労働生産性は、要するに「=GDP÷労働者数」であるため、GDPが堅調に成長すれば、人口が増えていない我が国では労働生産性は高まっていきます


 回答は明らかであるにも関わらず、日経の結論は、
政府は労働規制の緩和などで企業の背中を押さなければならない
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 過去二十年間、日本国民を貧困化に突き落とした「労働規制の緩和」という改革を、貧困化の解決策として提言する。


 率直に言って、頭がおかしいです。


 この手の頭がおかしい言説が淘汰されない限り、我が国の国民の実質賃金が着実に上昇していく局面は訪れそうにありません。


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