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『高圧経済①』三橋貴明 AJER2017.12.26

https://youtu.be/HeaDZQ8hpTg
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 本日は三橋経済塾第七期第一回講義開催日です。塾生の皆様、よろしくお願いいたします。


 さて、企業収益が上がっている割に、国民の賃金が増えないという現象は、日本に限らず世界共通になっています。


 トマ・ピケティの言う「 r > g 」が世界中で成立してしまっており、「1% 対 99%」の争いや、反グローバリズム勢力の勃興に結び付いているのです。


 その理由を「スーパースター企業」に求める東洋経済の記事が面白かったので、ご紹介。


『「スーパースター企業」が世界の賃金を抑圧 米国で注目の新理論を日本でも試してみる
http://toyokeizai.net/articles/-/204524
 米マセチューセッツ工科大学のデービッド・オーター教授らの「労働分配率の低下とスーパースター企業の興隆」という論文が注目されている。彼らによれば、特定企業の市場シェアが拡大して独占や寡占が進んでいる業種ほど、労働分配率の低下が著しいという。この要因が、米国の労働分配率が1982年から2012年の30年間で趨勢的に低下したことに寄与したと分析した。IT産業などに多いとみられる、少ない人員で大きな収益を上げる、たとえばグーグル、フェースブック、アマゾンといった「スーパースター企業」が、マクロでの労働分配率低下の要因だというのだ。
 さらに、このようなスーパースター企業のシェアの高まりは多くの国で生じており、それはスーパースター企業が独り勝ちするような技術革新の結果だと著者らは分析している。これが労働分配率を低下させ、高めの経済成長率の割に賃金上昇率が伸びないという各国経済に共通する問題の原因だ、という見方が有力視されている。(後略)』


 企業が生み出す付加価値(おおよそ粗利益)に人件費が占める割合、労働分配率は、日本の場合2011年をピークに下落が続いています。


 無論、労働分配率の下落とは人件費の圧縮に限らず、
企業の利益は増えているにも関わらず、人件費が相対的に伸びない
 場合も発生します。第二次安倍政権下の労働分配率低下は、上記の理由によるものでしょう。


 11年から15年にかけ、EBITDAで見た付加価値は1.5倍に拡大しました。それに対し、人件費は何と「わずか」2%の増加。


 こんな有様では、労働分配率が下がるのは当然です。
   


  東洋経済の記事では、労働分配率低下の一因として、少数人数で巨額の付加価値を稼ぐ「スーパースター企業」の存在を挙げているわけです。つまりは、技術革新によりマーケットシェアを高める企業は、成長する割に人件費は増やさないため、労働分配率が下がる、と。


 分析によると、日本の場合、製造業は特定企業のマーケットシェアが高ければ高いほど、労働分配率は下がります。
 ところが、非製造業の場合、相関関係はありませんでした


 というよりも、非製造業はマーケットシェアと関係なく、総じて労働分配率が下がっています。非製造業の市場は「グローバル」ではなく、国内です。内需が低迷している以上、スーパースター企業云々と関係なく、労働分配率を引き上げるというのは難しいという話です。


 記事は、
「内需低迷への対処が日本経済にとって最大の課題となるだろう。」
 という、そりゃそうでしょう、という結論で結ばれていますが、要するに、内需最大の需要である「民間最終消費支出」が盛り上がらなければ、非製造業の労働分配率は上がらないのです。


 とはいえ、労働分配率が上がらないとは、従業員に十分な給与を支払うことができていないという意味になり、当然ながら個人消費は盛り上がりません。


 まさに、鶏が先か、卵が先かという話なのですが、結局のところ、利益と無関係な「政府」が主体的に国民の実質賃金や実質消費を高める財政出動に踏み出さない限り、内需低迷、労働分配率低下、賃金低迷、内需低迷という悪循環が終わらないことが分かります。

「政府は実質賃金・実質消費を引き上げる政策を!」に、ご賛同下さる方は、

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