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『移民政策のトリレンマ(後編)①』三橋貴明 AJER2017.3.28

https://youtu.be/KebYl0oUkzA                  

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 フィナンシャルタイムズ紙(日経新聞)が、驚くほどまともな社説を載せていたので、取り上げます。「社説」なので、FT紙の意見ということになります。


ビジネス手法で偉大な政府は生まれない(社説) 
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM29H16_Z20C17A3000000/?n_cid=DF150220104320
 政府の力は偉大だ。ピラミッドを造り、ナチスを打ち破った。それでも、経営不振の企業の立て直しに政府の官僚を招き入れようとは誰も思わない。政府が企業に関与すると、たいてい悪い結果になる。そして、それに驚く人はいない。理由は明白だ。政府と企業は、それぞれ得意とする仕事が違うのだ。
 この論理がありながら、なぜか政府を「企業のように運営」するよう求める声は絶えない。(中略)
 世界で最も賢明な人々の一部はビジネス界にいる。そして実際に、官僚的組織を理解して見事に動かしている人たちもいる。そうした人材が政府に入れば、大きな貢献を果たしうる。だが、それでもクシュナー氏は間違っている。政府は偉大な企業のように運営されるべきではない。偉大な民主主義のように運営されるべきなのであり、そのほうがはるかに難しい。』


 そもそも、政府と企業は目的が違います。政府の目的は経世済民であり、企業は利益です。

 企業経営者やビジネスマンが、自らの利益のために働くのは当然です。何しろ、企業は利益のために存在しています


 問題なのは、個別の利益拡大が、全体の利益につながらないケースが多々あることです。

 例えば、我が社が他社からの仕入れ価格を、交渉で引き下げさせたとしましょう(実際の経世論研究所には、仕入れ業務はほとんどないのですが)。その場合、我が社の利益は、粗利益段階で確かに大きくなるでしょう。その分、仕入れ先の利益は減ります


 何しろ、仕入れ先は「これまでと同じ製品やサービス」を、これまでよりも安く販売したことになるのです。販売数量が変わらず、単価が下がれば、もちろん粗利益は減ります


 ちなみに、企業の損益計算書の粗利益は、大雑把には「所得」であり、同時に企業が生産した「付加価値」と考えて構いません。


 日本には、未だに「所得」についての理解が浸透せず、
政府の支出削減
 の意味を取り違えている人が大勢いるわけです。


 かの「大阪市解体構想」(※大阪都構想)を思い出してください。当時、大阪市解体推進派は、
二重行政のムダをなくす。豊かな大阪をつくる。
 というスローガンを掲げていました。


 「豊かな大阪」の定義は、普通に考えれば、大阪のGDP(所得=付加価値)を増やすことでございましょう。


 これまで、大阪市と大阪府が、同じ地域で「図書館」を運営していました。これを「二重行政だ! 無駄だ!」と批判し、大阪府側が図書館を閉鎖したとしましょう。


 すなわち、予算をカットしたわけです。


 そうなると、当たり前ですが大阪府側の図書館で働いていた方々の所得が消滅し、図書館関連のビジネスを受注していた企業の売上も減ります


 中央政府だろうが、地方自治体だろうが、政府がお金を使うのをやめると、「国民の誰か」の所得が減るのです。


 そして、所得の合計こそがGDPです。というわけで、
「二重行政の無駄をなくし、大阪のGDPを増やす」
 ことは、魔法を使ったとしても実現できないということになります。


 だからこそ、都構想派のスローガンは「二重行政のムダをなくし、豊かな大阪をつくる」ではなく、「二重行政のムダをなくす。豊かな大阪をつくる」と、間に「。」がついているのかも知れません。


 いずれにせよ、普通の人は、
誰かの所得は、誰かが支出しないと生まれない
 ことすら理解せず、さらに「企業(ビジネス)の論理」を政府に当てはめ、政府の支出削減(=自分たちの所得縮小)を、むしろ歓迎するような有様になっています。


 とはいえ、そもそも政府と企業は目的が違うのです。加えて、FT紙の社説にもある通り、政府と企業は「制約」も違います


 まずは政府と企業は、目的も制約も異なるという「基本」を、国民や政治家が理解しないことには、日本国が「まともな方向」を向くことはないように思えてなりません。


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