
株式会社経世論研究所 講演・執筆依頼等、お仕事のご依頼はこちらから
三橋貴明のツイッター
はこちら
人気ブログランキング
に参加しています。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『国民経済は繋がっている①』三橋貴明 AJER2017.1.31(3)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
一般参加可能な講演会のお知らせ!
3月11日「三橋貴明の日本経済が分かるための知識としてお金のことがよく分かるセミナー」(主催:ヒカルランド)
http://hikarulandpark.jp/shopdetail/000000001185/
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
明日は6時から文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」に出演します。
先月の下旬、ヤマト運輸の労組が、春闘における労使交渉において、賃上げに加えて「総量規制」を求めるという異例の事態になりました。ヤマト運輸の労組は、来年度の宅配便の取扱個数が「今年度を超えない」ことを求めたのです。
そして、ついに本日、ヤマト運輸が、「全面値上げ」に踏み切ることが報じられました。
『ヤマト、27年ぶり全面値上げ アマゾンと交渉入り 再配達の有料化に含み
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ06HVU_W7A300C1MM8000/
宅配便最大手のヤマト運輸が9月末までに宅配便の基本運賃を引き上げる方針を固めた。ヤマト運輸の長尾裕社長が日本経済新聞の取材で明らかにした。全面値上げは消費増税時を除くと27年ぶりで、アマゾンジャパン(東京・目黒)など大口顧客と交渉に入った。現在は無料の再配達については、荷主と共同で削減に取り組む一方で「協力を得られないなら運賃体系に反映しなければならない」として有料化に含みを持たせた。(後略)』
ヤマト運輸の長尾社長は、
「ネット通販の急成長と労働需給の逼迫で、事業の継続性に危機感を覚えるようになった」
と語り、コストに見合った料金に改める必要性を強調しました。
それで、良いのだと思います。といいますか、むしろ当たり前です。
ちなみに、わたくしはAmazonなどの「当日配送」等、高度なサービスを否定しているわけではありません。とはいえ、高度なサービスに対しては、より高額なフィー(費用)を請求し、生産者の所得に反映させるべきなのです。
国土交通省によると、過去二十年間で、宅配便の取扱個数は三倍にまで増加。2015年度の宅配便取扱個数は、何と37億4500万個という、途方もない数字にまで膨らみました内、ヤマト運輸だけで半分近くを占めています)。
宅配サービスで特に問題になっているのが、再配達です。
2015年の約37億個の宅配物の内、再配達となったのが二割。再配達のために必要なリソースは、年間で9万人、時間にして1億8千万時間が費やされているのです。
宅配サービスの再配達が「ゼロ」になった場合、9万人分の人手不足を解消することになります。
再配達を減らすためには、宅配ボックスの設置、特に集合住宅以外での宅配ボックスの設置が有効です。福井県のあわら市が宅配ボックスを市内の100世帯に設置する実証実験を行ったところ、再配達率が設置前の49%から8%へと激減したとのことです。
もちろん、集合住宅、特にタワーマンションの宅配ボックスを強化するという施策も必要です。
また、JR東日本は日本郵便とヤマト運輸と連携し、JRの駅で宅配物を受け取れるロッカーの設置を進めています。
国土交通省は、2017年にトラック運転手が14万人不足するとの予測を明らかにしています。このままでは、日本が誇る宅配便サービスは維持が困難になっていきます。
長尾社長の、
「事業の継続性に危機感を覚えるようになった」
という発言は、遅きに失した感がありますが、的を射ていると考えます。
ヤマト運輸が値上げをしたのは、消費税増税時を除くと、1990年にさかのぼります。当時は、人件費高騰を理由に平均8%の値上げを行いました。
まさに、バブル絶頂期並の人手不足に、日本は突入しつつあるのです。もっとも、今回の人手不足は需要拡大ではなく、少子高齢化による生産年齢人口比率の低下を受けたものですが。
いずれにせよ、人口構造が理由である以上、今回の人手不足は長期化します。バブルは崩壊したら終わりですが、生産年齢人口比率の低下は、最低でも二十年は続くのです。
今後、深刻化していく人手不足を乗り切るためには、生産性向上と同時に、藤井先生が提唱していらっしゃるように、
「過剰なサービスを消滅させる」
ことが必要です。
高く払う客には、十分なサービスを。高く払わない客には、最低限のサービスを、といった切り分けが必要なのです。
宅配便でいえば、再配達については「有料」にしても構わないと思います。その分、従業員の給料に反映させるのです。
日本の宅配便サービスは、文句なしで世界一です。しかも、安い。
この過剰に高度で安価なサービスは、デフレーションによる競争の激化が生み出した徒花と言えます。とはいえ、もはや企業は過剰サービスで競争する必要はありません。と言いますか、してはいけません。
今後の日本経済は、人手不足を主因として「料金が上がっていく」状況になるでしょう。デフレ脱却を目指しているわけですから、それでいいのです。
経営者は、今後の重要課題は「人手の確保」に移っていくことを明確に認識しなければなりません。人手を確保するためには、生産性向上と人件費の切り上げが必須です。
労働分配率を引き下げ、利益を拡大する企業、あるいは人件費を犠牲に過剰な価格競争を仕掛けるような企業は、今後は生き残れません。何しろ、従業員に見捨てられます。
時代は変わったという現実を、ヤマト運輸の27年ぶりの「値上げ」が、明確に示してくれています。
「過剰サービスの時代は終わった!」に、ご賛同下さる方は、↓このリンクをクリックを!
◆本ブログへのリンクは以下のバナーをお使いください。
◆関連ブログ
日本経済復活の会のホームページは↓こちらです。
◆三橋貴明関連情報
新世紀のビッグブラザーへ ホームページ はこちらです。
メルマガ「週刊三橋貴明~新世紀のビッグブラザーへ~」
は↓こちらです。