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『ポストグローバリズム時代に一番有利な国①』三橋貴明 AJER2016.12.27
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今週日曜日、1月22日に、いよいよ三橋経済塾第六期が始まります。
http://members6.mitsuhashi-keizaijuku.jp/
第一回の対面講義にご参加されたい方は、金曜日お昼くらいまでにはご入塾くださいませ。それ以降になると、お手続きが間に合わなくなる可能性があるため、ご留意ください。
習近平が、ダボス会議で、
「諸問題の原因は経済のグローバル化ではない」
と、グローバリズムを擁護し、同じ日にイギリスのテリーザ・メイ首相が、
「EUからの移民流入を制限していくため、欧州の単一市場から脱退する」
と演説で方針を表明するという、歴史の分岐点となる可能性がある一日が終わりました。
ついでに、次期アメリカ大統領ドナルド・トランプが1月11日に、会見で「「ゼネラル・モーターズも(フォードやクライスラーの)、あとに続いてほしい」と発言したことを受けたのか、GMが部品工場の一部をメキシコからアメリカに移すことを表明。
イギリス、アメリカがグローバリズムを是正しようと動き始めた中、日本は外国人が最短一年で永住権を取得可能とする「日本版高度外国人材グリーンカード」を推進し、中国国家主席がダボス会議で保護主義を批判する。
もはや、何が何やら・・・・。
『英、EU単一市場から完全撤退 メイ首相が離脱方針表明
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM17HAR_X10C17A1MM8000/
英国のメイ首相は17日、ロンドン市内で演説し、欧州連合(EU)からの離脱に関する基本方針を示した。移民制限など英国の権限回復を実現するため「EU単一市場に残ることはできない」と述べ、域内で人やモノ、サービスの自由な移動や取引を認める単一市場から完全に撤退すると表明した。3月にも始まるEU離脱交渉の行方は世界経済にも影響を与える。
昨年6月の英国民投票で決まったEU離脱(Brexit、ブレグジット)に関し、メイ氏はこれまで「英国にとって最良の結果をめざす」と述べるにとどめ、具体的な方針を示してこなかった。世論を二分したEU離脱を巡り、英国内では決定後も単一市場に残留する道を探るべきだとの声が残っていたためだ。
メイ氏は演説で「単一市場に残れば、EUの影響を受け続ける。それではEU離脱ではない」と語った。移民制限や国境管理などの権限回復を優先し、EU離脱を選んだ国民の不満に応える。(後略)』
本日の「おはよう寺ちゃん活動中」でも解説しましたが、グローバリズムと一言で言っても、実際には「段階がある」点に注意しなければなりません。
ぬるいグローバリズムから、きついグローバリズムまで、個人的に段階をつけると、以下の通りとなります。
↑きつい 法制度の統一
労働者移動の自由化
資本移動の自由化
サービス制度の統一
↓ぬるい モノの移動の自由化(関税緩和、撤廃)
もちろん、「ぬるい」グローバリズムであるモノの移動の自由化にしても、例えば「農業」とそれ以外の製品を、一緒くたに考えるのは間違っています。
EUの場合、上記で言えば最もきつい「法制度の統一」についてまで踏み込んでいます(完全ではないですが)。すなわち、イギリス国民はブリュッセルのEU官僚たちが考案した、意味不明な法律も受け入れを強いられているのです。(イギリス国民のみではないですが)
メイ首相はEUから「完全撤退」すると表明しましたが、別に鎖国するわけではありません。上記のグローバリズムの段階において、「どこまで戻すか?」について、今後、検討、交渉していくことになるのです。
メイ首相が演説において、部分的にEUに残るような中後半端なことはしない。EU域内からの移民を制限すると断言しましたが、別にEU諸国と「国交断絶」するわけではなく、単に「新たな国際関係を模索しましょう」という話に過ぎないのです。
例えば、上記の段階で言えば、EUから抜けたとしても、投資協定やEPA(経済連携協定)をEU諸国と結びなおすことで、「資本移動の自由」までは互いに認めましょう、という妥協点はあります。
あるいは、より段階を引き下げ、「モノの移動の自由化については、これまで通りで」でも構わないのです。
そもそも、現在はEU諸国(ドイツなど)が対イギリス貿易黒字の状態であるため、英欧間の貿易が縮小すると、EU側も損をすることになります。というか、EU側の損の方が大きくなります。
だからと言って、イギリスの「穏やかな離脱」を認めてしまうと、今後、東欧諸国などで、EU離脱を推進する国が増えるかも知れません。
ハンガリーやポーランドは、「労働者の送り出し国」であるため、EUから離脱し、各国との間に労働VISAが復活すると、経済的なダメージを受けます。とはいえ、2015年の難民・移民問題を経験した後であるため、
「経済的に不利益を被る可能性はあるが、それでも主権を取り戻したい」
という流れになる可能性を否定できないのです。
いずれにせよ、グローバリズムやEUの問題は複合的であり、さらには段階的で、単純に「オールオアナッシング」で決められる問題ではないという話です。
「日本政府は日本国民や日本企業を保護するために、行き過ぎたグローバリズムを是正するべきだ」
と、わたくしが主張すると、「鎖国するのか!?」といった極論で反論されます。あるいは、されていました。
その手のナイーブ(幼稚という意味)かつ思考停止的な論調は、もうやめましょう。世界の歴史のレジームが変わり始めているのです。
行き過ぎたグローバリズムの是正は、それこそ「歴史の必然」だと個人的には思います。我が国にとって、適切な「保護主義」と「自由貿易」との間のバランスはどこなのか? 具体的かつ真剣に議論するべき時代が訪れたのです。
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