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『安倍政権は財政拡大に舵を切るか?(その2)①』三橋貴明 AJER2016.7.26
https://youtu.be/XIjo7tLLIzQ
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明日は6時から文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」に出演いたします。
講演で全国を回っていると、
「昨年よりも若い働き手を確保しにくくなっている」
という声を頻繁に聞きます。その場合、わたくしの解答は、
「来年はもっと採用しにくくなり、再来年はさらに採用しにくくなりますよ」
というものになります。
何しろ、日本は少子高齢化により生産年齢人口比率が下がりつづけています。直近のデータによると、日本の生産年齢人口比率は60.2%。六割を割り込む寸前に至っています。
生産年齢人口とは、15歳-64歳までの人口のことです。無論、65歳を過ぎても働いて頂いて大いに結構なのですが、とりあえず統計的な定義として、15歳-64歳を生産年齢人口と設定しています。
世界各国が若年層の失業率上昇に苦しむ中、我が国は直近のデータ(16年6月)で5.2%。(全体は3.1%)この数値は、極端に低い値になります。
無論、安倍政権の経済政策の成果でも何でもなく、人口構造の変化により、我が国は「若者の仕事がある」という、世界的に見ると例外的な状況になりつつあるのです。
わたくしが、日本の「経済」について必ずしも「絶望」はしないのは、まさに少子高齢化により生産年齢人口比率が低下し、人手不足が始まっているためです。人手不足、別名「インフレギャップ」の状況において生産性向上のための投資が行われたとき、その国の経済は成長します。
そして、外国人労働者の受け入れが、
「人手不足(インフレギャップ)⇒生産性向上⇒実質賃金上昇⇒需要拡大⇒人手不足(インフレギャップ)」
という経済成長の循環を潰すからこそ、猛烈に反対しているのです。
それはともかく、人手不足が進行していることを受け、企業サイドで「投資」による生産性向上を目指す動きが始まっています。生産性向上のためには、設備投資、人材投資、公共投資、そして技術開発投資の四投資以外に手段がありません。
産業革命後の経済では、資本主義の基本である「資本」「労働」「技術」の三つを強化することこそが、生産性向上と国民の豊かさをもたらすのです。
本日は、生産性向上のための四投資のうち、「人材投資」に関するニュースです。
『鹿島が建設工事会社 人手不足に対応、多能工養成
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO05840640Z00C16A8TJC000/
鹿島は建築分野の工事会社を設け、グループで複数の施工技術を持つ多能工を養成する。建設業は高齢化や厳しい作業現場を避ける若者の影響で人手不足が顕在化している。施工能力を維持するには下請けの技能労働者だけに依存せず、自社グループで工事の一部を請け負える人材と技術力が必要と判断した。3年後に関東で受注する工事の2割程度を施工できるようにする。(後略)』
過去の建設産業は、プロジェクトについて全体の工程や品質を管理する「元請け」と、細分化された工事を担当する各「下請け」で役割を分担してきました。とはいえ、高齢化により現場の技能労働者の人手不足が進むことは明らかで、ゼネコン自身が現場の技能工(それも「多能工」)を養成する「人材投資」が始まっているのです。
鹿島建設は、子会社の大興物産と共同で「鹿島フィット」を立ち上げ、「未経験者」を対象に採用活動を開始。2~3年後には50人ほどの人材を育成し、鹿島が関東で受注するプロジェクトに投入していくとのことです。
長年の「土建叩き」や「公共投資叩き」により、2025年の我が国では、技能労働者が90万人不足するとの予測もあります。この手の人手不足の領域で「生産性向上」を達成することで、国民が豊かになる、より具体的には実質賃金が継続的に上昇する「経済成長」
が牽引されるのです。
無論、人材投資を推進しているのは鹿島に限らず、例えば清水建設は技能労働者を多能工化するため、下請け企業の社員であっても、資格取得の支援を開始することを検討しているとのことです。
我が国は、世界屈指の自然災害大国です。自然災害大国である以上、土木・建設産業の供給能力については維持、強化していく必要があります。さもなければ、我々日本国民はこの「災害列島」で生きられないのです。
少子高齢化による人手不足顕在化を受け、企業側で「生産性向上」による土木・建設産業の供給能力強化の動きが始まっています。政府はこの種の動きをサポートするという意味でも、
「中長期的で安定的な需要」
を企業サイドに見せていく必要があるのです。
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