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『2016年第一四半期を振り返る(後篇)①』三橋貴明 AJER2016.4.26(9)

https://youtu.be/zOAOYTdAZyY
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 今回の熊本・大分地震では、特に橋梁や道路などのインフラストラクチャーの被害が目立ちました。個人的には、生まれ故郷から阿蘇山に向かう際に必ず通る、あの巨大な阿蘇大橋(全長200メートル)が落ちてしまったのが、ショックです。


 阿蘇大橋を一度でも見たことがあれば、あの巨大な橋が「自然災害ごとき」で崩落するなど、想像できないと思うのです。とはいえ、阿蘇大橋は今回の地震で発生した土砂崩れで呆気なく落ちました。自然災害は、人智を超えます


 阿蘇大橋以外にも、熊本が被害を受けたインフラは、何と3500箇所。被害総額は、これから確定作業に入りますが、1700億円に及びます。


橋や道路、熊本被害1700億円…3500か所
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160503-OYT1T50090.html
 熊本地震による橋梁きょうりょうや道路、河川など公共土木施設の被害額が、熊本県内で少なくとも約1700億円に上る見通しであることが県と熊本市の中間集計で分かった。
 被害は約3500か所に及び、県は今月中旬に災害復旧事業として国土交通省に申請する。同省は4日から災害査定官を現地に派遣する。
 被害が最も大きいのは、橋梁関連で498億円。南阿蘇村にある全長約200メートルの阿蘇大橋が土砂崩れで崩落したほか、橋の土台部分や橋桁がずれるなどの被害が377か所に上った。
 公園関連は356億円に上った。国指定重要文化財の13建造物全てが損傷した熊本城を管理する熊本市は、330億円を見積もった。
 道路関連の被害額は354億円で、西原村と南阿蘇村を結ぶ全長約2キロの「俵山トンネル」は出入り口付近で大規模な崩落が起き、内壁も一部はがれ落ちるなどして、通行止めが続いている。』


 災害査定官とは、地震や台風、豪雨などの自然災害で道路や河川が被災した際に、国交省から送られる査定官です。主に、復旧事業費の見積もりを行います。


 もちろん、災害査定官が査定を行うまで、復旧作業ができないという話ではありません。今回の地震では、河川の一部で堤防に亀裂が確認され、応急工事は始まっています(当たり前です)。
 また、熊本県災害対策本部は、一連の地震により損壊した県内住宅が5万棟を超えたと発表。まだ調査途上なので、今後も被害は拡大することになるでしょう。


 環境省は、全半壊した住宅を市町村が解体した場合、費用の9割を補助します。とはいえ、あくまで助成されるのは解体費用のみで、住宅の立て直しは対象外です。


 個人的に気になるのは、一見、被害を受けていないように思える住宅であっても、繰り返し大きな揺れを受けた結果、耐震性が弱体化した住宅が少なくないのではないかという問題です。1981年に耐震化基準が強化されましたが、これほどまでに繰り返し地震に見舞われるケースは想定していません。


 本来であれば、政府が助成してでも、被災地の住宅を全て点検し、必要があれば補修することで耐震性を回復するべきです。


 ところで、今回、熊本県だけで3500箇所、大分県は159箇所のインフラが被害を受けたのですが、問題は「大地震で被害を受けること」ではありません。もちろん、震度7級の大地震が来たとしても、インフラが利用可能であり続けるというのが理想ですが、先にも書いた通り「自然災害は、人智を超える」のです。


 結局のところ、世界屈指の自然災害大国「日本国」に暮らす我々ができることは、自然災害に対する備えを怠らないと同時に、被害を受けた後の復旧・復興を迅速化するしかないわけです。


 インフラ崩落時に、いかにして復旧・復興するのか。ここで問題にしたいのは技術的な話ではなく、「供給能力」です。すなわち、土木・建設を中心としたサービスや製品(建材等)の供給能力が問われることになるのです。


 震災から速やかに復旧する土木・建設の供給能力を維持、拡大するには、どうしたらいいでしょうか。今さら、我が国で「土建屋を減らせ~っ!」などと言ってのける人は、頭が超悪いか、想像力が欠如したバカのいずれかでしょうが、我が国が土木・建設の供給能力を維持するためには、当たり前ですが「仕事をしてもらう」以外にはありません


 あらゆる職業がそうですが、熟練した人材になるためには、仕事の経験を「蓄積」するしかないのです。


 とはいえ、平時には復旧や復興の仕事がありません。だからと言って、土木・建設業を放置し、片端から倒産廃業するに任せますか? あるいは、所得だけ補償し、とりあえずの存続を図りますか?


 両方、ダメでしょう。


 土木・建設業の倒産・廃業が相次ぐのも問題ですし、同時に「仕事がない」状況で土木・建設サービスの供給能力が毀損していくのも問題です。絶対的な原則なので、強調しておきたいのですが、仕事ができる人材は、仕事をした経験が厚いはずです。厳密には、「仕事を続けてきた人」こそが、仕事ができる人材に育つのです。


 そう考えたとき、我が国がインフラや公共建築物の耐震化工事を行い、生産性向上のためのインフラ・技術へ支出する公共投資が、実は「非常時に国民を助ける」ことになる事実が理解できるはずです。厳密には、非常時に国民を助ける供給能力を維持することができるという話なのですが、公共投資について、
「土建屋を儲けさせるだけだ! 無駄だ!」
 などと言ってのける人は、少なくとも我が国においては、大震災などの非常事態発生時に、自分や家族を救援してもらうことを期待してはいけません。自分と家族の生命を諦めて下さい。


 震災大国日本に置いて、平時に公共投資を継続することは、非常時の救援、復旧、復興するための「供給能力」を保有することなのです。それが無駄だというならば、少なくとも日本国に暮らしてはならないという冷徹な真実を、理解してほしいのです。
 

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