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『2016年の日本経済①』三橋貴明 AJER2016.2.2
https://youtu.be/bqBIntYA3K0
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 2月20日(土)の三橋経済塾第五期第二回講義のお申し込み受付が開始となりました。http://members5.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=1412

 第二回のゲスト講師は、評論家の中野剛志先生です。

 講義出席には、事前に三橋経済塾入塾が必要です。入塾の受付はこちら から。


 一般参加可能な講演会のお知らせです。


2月6日(土) 14時開演(13時半開場)
【経世済民のため『亡国の新帝国主義(グローバリズム)』を解体する!セミナー 講師:三橋貴明】
http://hikarulandpark.jp/shopdetail/000000000684/


 「SAPIO(サピオ) 2016年 03 月号 [雑誌] 」に、「日本人観光客激減、中国人客激増で、韓国の高級ホテルが泣いている」を寄稿しました


 ニュージーランドでTPPの署名が行われました。


TPP 12か国が協定署名 各国が国内手続き急ぐ
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160204/k10010396771000.html
 日本やアメリカなど12か国が参加したTPP=環太平洋パートナーシップ協定の署名式がニュージーランドで行われました。各国は、早期発効に向けて議会の承認を求めるなど国内手続きを急ぐことにしています。
 TPP=環太平洋パートナーシップ協定の署名式は、日本時間の4日朝、
協定文書の取りまとめ役を務めたニュージーランドのオークランドで行われました。日本の高鳥内閣府副大臣をはじめ閣僚らは、ニュージーランドのキー首相の立ち会いのもと文書に署名し、12人全員の署名が終わると同席した交渉担当者らから拍手と歓声が上がりました。(後略)』


 ちなみに、高鳥修一副大臣は、2011年5月11日のご自身のブログ「TPPについて(平成の売国)において、
私はTPPについて国家主権の放棄であり、平成の「開国」どころか平成の「売国」だと考えている。政治家の中にもいろんな考えや判断があるけれど、TPP問題は日本を守る断固とした決意のある「保守政治家」か否かのリトマス試験紙みたいなものだ」
 と書いていらっしゃいます。リトマス試験紙は、高取議員を「日本を守る断固とした決意のある保守政治家」ではないと、判断したようですね
 
 さて、TPPの関税問題(物品の市場アクセス)に対する他国の姿勢ですが、最も典型的な「工業製品」について書いておきます。


 2015年10月20に内閣官房から公開された「TPP関税交渉の結果」によると、工業製品に関する各国の関税「即時」撤廃率は以下の通りとなっています。(単位は%)


 日本 99.1
 アメリカ 67.4
 カナダ 68.4
 ニュージーランド 98.0
 オーストラリア 94.2
 ブルネイ 96.4
 チリ 98.9
 マレーシア 77.3
 メキシコ 94.6
 ペルー 98.2
 シンガポール 100
 ベトナム 72.1


 吃驚する方が多いでしょうが、実は工業製品の関税即時撤廃率が最も低いのが「アメリカ」なのです。逆に、日本の即時撤廃率はシンガポールに次いで高くなっていますが、我が国はそもそも工業製品についてほとんど関税をかけていません。即時撤廃率とはいっても、TPP発効後に日本が関税を改めて撤廃する分野は、工業用アルコールや繊維製品など、極一部に限られています。


 また、同じく2015年10月に経済産業が公表した「TPP協定における工業製品関税(経済産業省関連分)に関する大筋合意結果」によると、アメリカは日本からの輸入が多い自動車分野において、乗用車(現行2.5%の関税率)は15年目に削減開始、25年目で撤廃。バス(同2%)は10年目に撤廃。トラック(同25%)は29年間、関税を維持した上で、30年目に撤廃。キャブシャシ(同4%)は15年目に削減開始、25年目に撤廃となっています。 


 アメリカが自国の自動車市場について、競合である日本製品から「保護する」姿勢を見せているのは明らかです。


 ご存じ、アメリカはUAW(全米自動車労組)が大きな政治力を持っている以上、当然でしょう。特に、アメリカ政府は利幅が大きいSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)を「なぜか」含むトラックの関税について、可能な限り高く、長期間維持しようとするわけです。SUVはビッグスリーの命綱であるため、簡単に関税が撤廃されるはずがないと予想していたわけですが、やはりそうなりました。


 また、自動車部品については、ギアボックス(同2.5%)などについては即時関税が撤廃されるものの、車体(同2.5~4%)は6年目、タイヤ(同3.4~4%)は10年目。電気自動車用リチウムイオン電池(同3.4%)については、15年目に撤廃となっています。


 日本の対米輸出を財別にみると「自動車」が26%(2014年)を占め、財別シェアでトップです。そもそも、関税率25%トラックを除き、アメリカの自動車関連の関税率は総じて低いのです。「低い関税」の撤廃時期が、乗用車は15年目以降、関税率が高いトラックは30年目以降となっていることになります。


【TPP参加予定国に対する日本の輸出(2014年)】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_52.html#TPP


 図の通り、TPP参加予定国に対する日本の輸出を国別にみると、約60%がアメリカであり、圧倒的なシェアを占めています。TPPが発効したとしても、日本の対米輸出が短期で増えるなどということはあり得ません。


 逆に、我が国は医療、金融、公共調達、知的財産権等の構造改革を強制され、聖域だったはずの農産品についても、七年後に「関税撤廃へ向けた再協議」という話になってしまったわけです。一体全体、何のための「TPP」なのですか。我が国の各種安全保障の弱体化と引き換えに、アメリカを中心(日本も含みます)とするグローバル投資家、グローバル企業の「利益を最大化する」こと以外に、何か目的があるとでも言うのでしょうか。


 日本にとって、最大のメリットは(無理矢理探すと)、アメリカのトラック(SUV含む)の関税撤廃ですが、30年後のことです。それまで、25%の関税はガッチリと維持されます。30年後には、日本の構造改革は完了していることでしょう。


 今後、TPP「批准」に向けた国会議論が本格化するのでしょうが、この手の具体論に基づき、議論が交わされることを切に願います。


 明日は、最も深刻な「投資」について書きます。


「主権喪失であるTPPに反対する!」に、ご賛同下さる方は、↓このリンクをクリックを! 
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