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『三橋貴明の台湾報告①』三橋貴明 AJER2015.12.15
https://youtu.be/-sSCuFZnEfU
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 わたくしは日経平均についてはあまり書きませんが、何しろ外国人投資家の取引の割合が71%で、さらに日本銀行やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がETFや株式(直接買っているわけではないですが)を買うことで下支えされている市場など、「経済(厳密には実体経済)」の指標にはならないためです。


 安倍総理が株価を「指標」に経済政策を決める日経平均至上主義に陥っているのは明らかで、
「総理、重視すべきは株価ではなく経済成長率や実質賃金でしょ? 国民を豊かにするための政治をやっているのではないのですか? 豊かになるとはミクロ的には実質賃金ベースの所得が増えることであり、マクロ的には経済成長(GDPが増える)ことで、株価の上昇のことではないですよ」
 といった主旨のことを何度も書いてきました。とはいえ、すでに総理は外国人投資家が取引の七割を占める株式市場という「黄金の拘束服」を着せられてしまっているようにしか見えず、路線変更は困難でしょうが。


 もっとも、黄金の拘束服を着せられているのは、別に安倍総理に限りません。日本国民も着せられているのです


 施先生が以前、講演でお話下さり、
「なるほど・・・」
 と、背筋が寒くなったのですが、国民の年金を運用するGPIFの資金が株式市場で運用されることによって、我々も黄金の拘束服を着こんでしまっているのです。


GPIF、株式への直接投資が可能に-今春にも法案提出へ
http://jp.wsj.com/articles/SB11810945248234553346004581485880222600832
 日本政府は、約135兆円の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に株式の直接売買を認める法案をまとめている。この動きは、市場におけるGPIFの役割に関する議論を引き起こしている。
 GPIFは現在、株式運用を外部機関に委託している。厚生労働省は今春にも、株式直接投資を解禁する法案を国会提出する方針だが、政府関係者らによれば、法案
の通過は今年の遅い時期になる可能性がある。
 株式直接投資が解禁されれば、保守的な投資家であるGPIFは他国の年金基金や政府系ファンドのような機関に向け、改革を一歩進めることになる。安倍晋三首相は、国内金融市場の再活性化とコーポレートガバナンス(企業統治)の改善に向け、改革に意欲を見せてきた。
 GPIFの水野弘道・最高投資責任者(CIO)はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し「GPIFは運用会社だけでなく企業と建設的に関わることにより、日本経済に一層貢献できる」と述べた。「日本最大の資産保有者として、われわれは企業・投資家間においてガバナンス改善という前向きな連鎖反応を生み出すことができる」とも語った。

 ただ、一部の企業幹部や政治家は、GPIFの直接株式投資について、個別銘柄の選別を通じて市場にゆがみをもたらしたり、政治家が企業への影響力を行使する手段として用いられたりする恐れがあるとして、法案に懸念を示している。(後略)』


【GPIF運用資産別構成割合(15年9月末時点)】

出典;年金積立金管理運用独立行政法人


 すでにして、GPIFの運用は国内株式が21.35%、外国株式が21.64%に達しています。そもそも、長期の安定的な運用が求められているGPIFについて、株式のポートフォリオを増やすという発想自体が異常なのですが、着々と進んでいっています。


 ちなみに、アメリカには全国民を対象とした最低保障年金積立金があります。日本の厚生年金や国民年金のようなものですね。


 アメリカの最低保障年金は、100%が国債で運用されているのです。基礎年金について、リスク資産で運用しないというのはグローバルスタンダード以前に「人間の常識」なのですが、日本は真逆の方向に突っ走っています。


 さらに、GPIFが直接株式を購入することには、問題があります。「なぜ、その会社の株を、幾ら買ったのか?」を絶対に説明することができないという点です。先日、TOKYO MXのモーニングCROSSでも話しましたが、あれですかね? 例えば、
「自民党に沢山献金した企業の株を買う」
 といった話になるのでしょうか。GPIFが買った企業の株価は必ず上がりますが、「なぜ、その会社の株を、幾ら買ったのか?」についての説明はできません。政治的に株価が決まるのでは、中国共産党も吃驚!でございますよ


 いずれにせよ、GPIFの株式依存が深まれば深まるほど、我々もまた株価に一喜一憂する傾向が強まります。何しろ、我々の年金が株式市場で運用されるわけです。そうなると、グローバル投資家が望む株価引き上げ策(法人税減税、労働規制の緩和など)を安倍政権が推進しようとしたとき、自分たちが痛みを受けるにも関わらず、日本国民がむしろ喝采するという奇妙な状況になってしまうわけです。

 ちなみに、件のアメリカ最低保障年金積立金について、クリントン政権時代に一部を株式に投資するべきという話が出ました。そのとき、グリーンスパンFRB議長(当時)が猛烈に反対しました。理由は、年金積立金を株式に投じると、「資本市場や経済効率」がリスクにさらされ、さらに積立金を政治的圧力から遮断できるか疑問であるため、とのことでした。


 まさに、現在の日本はGPIFを株式市場に投じ、市場をゆがめ、さらに株式市場に「政治」を持ち込もうとしているのです。


 日本国民の年金を守り、株式市場の健全性を維持するためにも、GPIFの株式ポートフォリオ拡大や直接購入を許してはならないのです。


「GPIFの株式ポートフォリオ拡大や直接購入に反対する!」に、ご賛同下さる方は、

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