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『三橋貴明の台湾報告①』三橋貴明 AJER2015.12.15
https://youtu.be/-sSCuFZnEfU
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 さて、政府がTPPの「経済効果」を、いきなり四倍に引き上げました


TPP経済効果14兆円 政府試算、当初の4倍に
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGF22H02_S5A221C1MM0000/
 政府が取りまとめた環太平洋経済連携協定(TPP)の発効に伴う経済効果の試算結果が22日分かった。輸出増加や企業の国境をまたいだ投資拡大で成長が加速し、国内総生産(GDP)を実質で14兆円弱(3%弱)押し上げる効果を見込む。24日に開くTPP対策本部で公表する。
 政府がTPP交渉参加前の2013年3月に示した試算ではGDPの押し上げ効果を3.2兆円と見込んでいた。』


 おはよう寺ちゃんでも語りましたが、試算効果以上に重要なのは「前提」です。上記の14兆円という試算は、一体、いかなる前提に基づいているのか。

 つまりは、「いつ」日本のGDPが14兆円増えるのでしょうか。

 というわけで、24日に上記記事の試算結果がリリースされたため、ご紹介。


【TPP協定の経済効果分析について(概要)】
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/kouka/pdf/151224/151224_tpp_keizaikoukabunnseki01.pdf
【TPP協定の経済効果分析】
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/kouka/pdf/151224/151224_tpp_keizaikoukabunnseki02.pdf


 上記の分析報告ですが、驚くなかれ、「時期」「期間」を全く示していません


 一応、TPP批准後に、「一定の期間」を経て、「これまでの成長経路」から「新たな成長経路」に移行することは明記していますので、「時間軸」を意識していることになります。とはいえ、TPPによって、「いつ」GDPが増えるのか。


 厳密に書くと、
いつ、新たな均衡状態(成長経路)に移行するのか?
 は、明記していないのです。


 新たな均衡状態とは、要するにTPPにより「潜在GDPの拡大」が終了した時点、という話になります。


 つまりは、今回の分析報告は、
「TPPを批准すると、生産性向上によって潜在GDPが拡大し、いつか成長経路が新たな均衡状態に移行し、GDPが14兆円弱増えるでしょう
 という報告書になっているのです。


 とりあえず突っ込んでおくと、日本のGDP拡大に最も好影響を与える日本製の自動車部品に課すアメリカの関税全廃が、協定発効から15年後となります。というわけで、上記の分析報告が正しいと仮定しても、我が国が「新たな均衡状態」に移行するのは、15年後以降という話になります。


 さらに、上記の分析でも、TPPによるGDP拡大効果は「一度だけ」です。無論、「新たな均衡状態に移行」するためには、長期の時間を必要とするのですが、それでも増加するGDPは「14兆円弱」のみとなります。何を言いたいかといえば、TPPは、
「一年目14兆円、二年目14兆円+14兆円、三年目14兆円+14兆円+14兆円」
 という形で、経済効果が積み上げられていくわけではないのです。


 そもそも、現在の日本はデフレという需要不足に苦しめられています。その状況で、相も変らぬ潜在GDP拡大政策というわけで、政府の政策が「セイの法則」を前提にしていることが分かります。


 その上、発表された試算は、
「批准から15年後以降のいつか、成長経路が新たな均衡状態に移行したとき、一度だけ、GDPを14兆円押し上げるよ」
 というものなのでございます。


 しかも、セイの法則を前提にしているため、そもそも現在の日本に適していないシミュレーションモデルとなっています。何しろ、

「潜在GDPを拡大すれば、絶対にGDPが増えるはずだ!」

 と、過去何度も裏切られてきたモデルが前提なのです。


 いずれにせよ、以前とは異なり、「新たな均衡状態」に移行する時期を明記していない分析報告書を受け、政府がTPP批准に向け露骨なプロパガンダを始めたと判断したわけでございます。


「日本の国の形を壊し、ナショナリズムを破壊するTPPに反対する!」に、ご賛同下さる方は、

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