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『経済成長するにはどうしたら良いか?①』三橋貴明 AJER2015.11.10
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本日、徳間書店から対策「2016年 中国・ユーロ同時破綻で瓦解する世界経済 勝ち抜ける日本
」が刊行になりました。
11月初旬の夕刊フジの連載「断末魔の中韓経済」最終回で、わたくしは中国が極端な供給能力過剰でデフレ化しつつある状況で「構造改革路線」を進もうとしており、国内メディアが中国の構造改革を「後押し」する論調を掲げていることを受け、
「中国共産党には、ぜひとも読売新聞の提言に従い、「デフレ下の構造改革路線」を進んでほしい。デフレが深刻化し、中長期的に国力が落ちていくことは確実である。
中国の国力が落ちれば、わが日本の安全保障は間違いなく強化の方向に向かう。というわけで、日本の各紙にはぜひとも「中国は構造改革すべきだ! この道しかない!」とあおり立て、中国共産党が構造改革路線へ突き進む後押しをしてほしいのだ。」
と、書きました。
【断末魔の中韓経済】正しいデフレ対策に背を向け、構造改革路線を進もうとしている中国
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20151102/frn1511021140001-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20151102/frn1511021140001-n2.htm
興味深いことに、トルコのG20において、安倍総理などが中国に「構造改革」を求めたという報道が流れています。
『安倍首相「中国経済は改革努力を」 G20首脳会議
http://www.asahi.com/articles/ASHCJ22N4HCJULFA001.html
安倍晋三首相は15日、トルコ南西部アンタルヤで開かれている主要20カ国・地域(G20)首脳会議で、「中国には過剰生産設備の解消を始め、構造的な課題に向けた改革努力が求められている」と述べ、世界経済全体の減速を食い止めるためにも、中国経済の改革が必要だと指摘した。
安倍首相はG20初日に開かれた、世界経済や成長戦略などを話し合うセッションで発言。今夏に世界の金融市場で同時株安を招くなど懸念が高まっているのは、中国の実体経済に問題の根があるとの認識を示した。
中国は急成長を見込んでつくってきた工場などの生産能力が過剰となって借金がふくれあがる一方、余った製品を国外に安く輸出することで世界の産業に悪影響を与えていることが指摘されている。同席した麻生太郎財務相によると、国際通貨基金(IMF)やインドなどからも中国の構造改革を求める声が相次いだという。(後略)』
総理の発言の通り、中国は「極端な過剰生産設備」という問題を抱えています。すなわち、デフレギャップです。
デフレギャップを解消する「正しい経済政策」は、当然ながら政府による需要創出です。他には、ありません。
とはいえ、昨今の世界、そして日本では、
「デフレギャップを解消するための、構造改革」
という奇妙なレトリックが蔓延しています。何しろ、構造改革とは「競争を激化し、企業の生産性を高め、供給能力を拡大する」という政策なのです。すなわち、インフレギャップを埋めるための政策であり、デフレギャップ解消の政策ではありません。
もちろん、安倍総理が上記の認識に基づき、中国に対し「過剰な生産設備解消のために、構造改革を」と発言したのかどうかは分かりません。実際に中国が定義通りの構造改革、すなわち各種の規制を緩和し、競争を激化させ、生産性向上を目指せば、デフレギャップは間違いなく拡大します。国内では企業倒産や失業が相次ぎ、さらなる需要の不足を招くことになるでしょう。
というわけで、わたくしは夕刊フジの連載で「中国は構造改革すべきだ!」と書いたわけです。結果的に、中国の経済力(国力)が落ちれば、日本の国益になります。
総理はわたくしと同じ認識に立ち、つまりは「中国の国力を弱体化させるため」に構造改革という言葉を使ったのでしょうか。あるいは、構造改革の定義が、「規制緩和と競争激化による生産性向上」以外の意味を持つという認識で、中国に構造改革を求めたのでしょうか。
恐らく正解は、上記の「論理」をきちんと認識せず、本気で、
「生産能力解消のためには、構造改革で競争を激化し、過剰な生産能力を潰すべき」
と確信した上で、上記の発言に至ったのではないかと「推測」しています。
いずれにせよ、緊縮財政や構造改革について、「インフレギャップ」「デフレギャップ」という環境の違いを無視した論調が蔓延しており、率直に言えば「混乱」しているように思えます。総理が本気で、
「構造改革や緊縮財政をすれば、デフレギャップ(需要不足)が解消する」
と信じているとすれば、現在の日本経済の低迷の「真因」が理解できるわけでございます。
ちなみに、「2016年 」でも書きましたが、緊縮財政や構造改革という「インフレ対策(物価抑制政策)」は、なぜかグローバリストを利する構造になっています。逆に、「デフレ対策(総需要拡大策)」は多数派の国民を利するのですが、グローバリストに不利益をもたらします。
というわけで、日本の経済政策の混乱の「真因」を理解してもらうためにも、わたくしは「2016年
」を上梓し、現在の日本にとって最も適切な経済政策は何なのか。そして、安倍政権が「なぜ、間違えたのか」を世に知らしめたいと考えたわけでございます。
日本はもちろん、世界をも苦しめている経済政策の混乱の真因を、是非とも知って下さい。
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